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目利き力の養い方

バイヤーという職種柄、日頃から数多くの商品を見ている。

日々発売される各社の新商品や、自らが仕入れた商品、店舗で取り扱っている商品など、仕事の半分以上は、商品を見ることと言っても過言ではない。

またバイヤーと名乗ったときに、小売以外の方からは、商品をヒットさせてブームを作り出したり、誰も知らない商品を発掘して世に広めたりといった、カリスマバイヤーのようなイメージを持たれることもある。

小売に携わる人の中にも、上のような部分に憧れてバイヤーを目指す人もいる。
少なくとも商品が好きで小売を志した訳であり、
それはそれで素晴らしいことである。

バイヤー業務には、華やかな側面もあるが、それはバイヤーの本質ではない。
現実はもっと地道で泥くさい。

良いバイヤーに必要な能力として、商品の目利き力が挙げられる。

これは正解ではあるが、正確ではない。

正しくは「店舗の顧客にマッチした」商品の目利き力である。

そしてこの目利き力は、後天的に養うことが可能である。


目利き力を高めるには、まずバイヤーの役割を考える必要がある。

バイイングの目的は、一言でいえば、顧客に代わって買い物を行うことである。

世の中には無数に商品がある。
多忙な現代人にとって、商品をひとつずつ見ている時間はない。

忙しい顧客に代わって、あらゆる商品を比較検討し、店舗の顧客にとって最適なものを選択・提案するのが、バイヤーの役目である。

バイヤーの役割は、つまるところ、顧客の生活を豊かにする買い物代行なのである。
間違っても、自身の気に入った商品を買うわけではない。

バイヤーは、自分と顧客を切り離して考えなくてはならない。

商品を見て何か感じた時、これは自分がいいと思ったのか、顧客にとっていいと思ったのか、いったん立ち止まって、冷静に考える必要がある。

これは経験を積んだバイヤーでも犯してしまいがちなミスである。
意識的になり過ぎて、なり過ぎることはない。

そして、この目的を踏まえた上ですべきことは、顧客になりきってバイイングをすることである。

自店の顧客が主婦であれば主婦になりきって、ビジネスマンであればビジネスマンになりきってバイイングを行うことが、重要である。

主婦の場合は、子供はいるのかいないのか、兼業なのか専業なのか、などペルソナと呼ばれる仮想ターゲットのライフスタイルの傾向を、具体的に描いておく必要がある。

注意点として、ペルソナの情報は常に新しいものにアップデートしなくてはならない。くれぐれもステレオタイプな印象で進めてはいけない。

また、顧客になりきることで、その顧客が自分でも気づいていない潜在的に求めていたニーズに気がつくことができる。
その潜在的ニーズに、商品をもって応えられるのも、バイヤーの醍醐味なのである。


どんなカリスマも、知識とトライアンドエラーの蓄積の上に成り立っている。

カリスマバイヤーになるには、とにかくたくさんの商品を見て、顧客になりきって、自らの頭を使うしか方法はない。
トライアンドエラーを繰り返した知識の積み重ねこそが、目利き力に他ならない。

逆にこの習慣を身につければ、まだ生まれていないヒットの匂いを、経験的に嗅ぎ取ることもできる。直感は経験の積み重ねなのである。

愚直に商品をたくさん見て、顧客になりきり、尚且つ自分の頭で考えることで、カリスマを作り出すことも可能になるのである。

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