【大撃沈】チャレンジ富士五湖ウルトラマラソン(4 Lakes)その③
着地衝撃
いよいよ残り半分。もう半分しかないと考えるか、まだ半分もあると考えるか。その時の気分はどう頑張っても後者だった。次のエイドは50.8キロの大石公園だったが、バナナと梅干し(笑)をサッと取って、一気食いしてすぐ再開。脚の痛みはどんどんと主張を強めているが、まだこの辺は湖岸沿いでまっ平だから大丈夫だ。
痛みに耐えながらツラツラと考えた。この太ももの痛みは、湘南国際のときもそうだったし、先日の板橋もそうだったが、どうもある程度のアップダウンを走ると極端に悪化、もしくは早期に顕在化するような気がする。東京チャレンジみたいに完全にまっ平らだとフルまで持った。
これはやはり普段トレミでしか練習してない副作用なのではないか・・・一応傾斜は3%つけてはいるものの、着地衝撃と言う面では本当にマイルドだ。故障しにくい(実際、トレミメインになってから故障は激減)イコール衝撃耐性が付かないことの裏がえしということだ。これはジレンマだな・・・
西湖への激坂
そうこうしてるうちに平和な河口湖は終わり、西湖へ向けて一気に100メートルほど登らなければならない。ちょうど坂が始まるあたりにエイド13(56km 足和田出張所)があるが、その先の激坂が「見えてしまっている」。これはもちろん、大会側の配慮で「この坂を攻略する前に一息ついてください」ということだと思った。
コーラとクエン酸ドリンクをしっかり飲んで、被り水を浴び、太ももをしばしマッサージして「シャー!」と気合いを入れて再スタート。みんなほとんど歩いてるが、遅くてもいいからなんとしても走るぞ!(反省の色なし)
ここでなんと「青ゼッケン」をつけたランナーが対向を下って来た!「えっウソやろ」118キロのトップランナーだ。もう、本栖湖を回って来たのか・・・Gou…そりゃ彼らは30分早くスタートしてるとは言え・・・なんなんだこの差は。まぁいい。今は自分に集中して走るだけだ。
7分台・8分台に落ちたがトボトボと走り続け、どうにか峠のトンネルに到達。ああ平坦はなんて楽なんや〜、としばらくペースが回復したのも束の間、この登りで完全に脚にトドメを刺してしまったらしく、58キロを超えたあたりで本日何度目かの「終了感」が襲って来た。
せっかく西湖ぞいの平らな道に出たのに、7分半に落ちたペースはもはや回復させることが不可能だった。それでも60キロ通過。あと40キロ、あとフル一本分もないんだ、ないんだ・・・な、、、メッチャあるわ!!(怒)
エイド14(60.2km 旅館樹海荘)に到達。もうエイドの度にしっかり飲んで食って脚を冷やして揉んで、とやらないといけない。でも絶対に「のんびり休む」ことだけはしない。意識していたわけではないが、この辺で寸暇を惜しんでおいたことが後に少しだけ救いになる。
そこから西湖の北岸、湖北ビューラインは登り基調になる。もはやペースは8分台に落ち、完全に戦意喪失。むしろ「いつリタイヤしようか」という思考が頭をもたげてきた。いや、せめて次のエイドまで。
うどんエイド(往路)
ちゃんとチェックしてなかったが、次のエイド15(62.6km 西湖野鳥の森公園)こそが通称「うどんエイド」、吉田うどんの給食だ!これだこれを食いに来たんだ・・・さっそく一杯いただく。ダシの旨味が沁みる・・・ヨシ!もうちょっと頑張って、いけるところまで行くか!
しかしここからまたゆるやかながら上り基調。歩幅はチビチビとなり、8分もきれないありさま。それでもまだこの頃は気力が残っていたので、止まらずに走り続けていた。T字路にぶつかり、本栖湖ライドで何度も通った139号線に出る。この道は、知っている・・・ここからグッと上ったあと、精進湖へ向けてでかい陸橋をガーッと下っていくことを・・・あれを、登り返すのか?マジか・・・
次のエイド16(65.7km 赤池大橋先待避所)は直線路の脇にトラックを停めただけの簡易エイドだった。水とポカリのみ供給。今はなんでもいい。ちょっと休んで、ボトルに水を汲んで、脚を冷やせれば・・・
青木ヶ原大橋
例の左へガーッと曲がりながら下っていく「青木ヶ原大橋」が見えて来た。この、ものすごく先の方まで見通せる景色というのも残酷なものだ。下り始めて思い出した。上りも大概だが、下りの方が着地衝撃がキツいことを・・・下りだからペースが上げられるのではなく、脚が痛すぎて逆にペースは落ちた。ギリギリと歯を食いしばりながら進む。
やっとやっと下り終えて「四湖目」精進湖に到達した。よし、よくやったぞ俺。もう十分がんばったやないか。曲がりなりにも四つの湖を走ったことになる。次のエイドでリタイヤするか。いや、70キロまでは行くか?でもリタイヤするつもりなんて全然なかったからどうしたらいいか考えてなかったなぁ・・・
精進湖
精進湖は手前側が干からびたみたいになってて、他の四湖にくらべだいぶ小さい。さっき橋を下る手前で後ろ向いた距離標識に「4Lakes 75km」とあったから、あそこから精進湖往復は10キロしかないということだ。しかし、その10キロは想像を絶する長さだった。
精進湖ぞいのエイド17(68.2km 精進湖畔駐車場)。ここにはエクレアがあったらしい。が、行った時にはもう干し芋しかなかった。まぁ、うどんとおにぎり以外どこに何があるかとかあんまり気にしてなかったし、腹に入れば何でもいい。幸い、ロングトラで鍛えているおかげか、内臓に関しては最後までなんの問題もなかった。
精進湖の裏(?)を走っていくと、また景色が開けて散りかけの桜を手前に、雄大な富士山を遠くに望む素晴らしい景色が現れた。さすがにここに至ってiPhoneを持ってこなかったことを後悔したが、まぁいい、ここで写真撮った人があとでブログなりに上げまくるだろうからそれを見れば良い。
まだ、この辺りではキロ8とはいえ、走っていた。そしてついに70キロに到達。やっぱりまだ走っていた。せめて、次のエイドまで・・・
死の予兆
エイド18(71.1km 精進湖139号前待避所)の前後だったか、ガーミンがなんの脈絡もないところでピロッと鳴った。何かアラートが出ている。「バッテリー残量低下:残り15%」えっ・・・あっ!思い出した、ランカウイでスイムの軌跡がガタガタだったのが「ウルトラトラックモード(省電力モード)」のせいだとわかったので、それを切ってあったのだ。しまった・・・
走行中にウルトラトラックモードに切り替えられないか、設定を見ようとしたが、アクティビティの途中でそんなことできそうにないし、下手にイジって計測が停止したらかえって面倒臭い。これまた「なってしまったものは仕方がない」モード発動だ。記録できるところまで記録する。あとは運を天に任せるしかない。
それまでエイド以外では走り続けて来たが、この件でついに気力の残りが潰えた気がした。139号に戻るわずかな上りで、ついに歩いた。もう、ダメだ。どうせこの先の青木ヶ原大橋を登り返す時に走り続けられるとは思えない。しかし気付いたことがあった。「歩いたら、メッチャ楽」禁断の甘い蜜のようだ・・・怖い。
エクストラコース
さて次は139号を左折して橋に戻るのか、と思ったらさにあらず。係員がこっちこっちと直進方向を示している。えっ?こんなコースあったっけ?
コース図ではエイドマークで隠れていたのだが、実は第五関門がメインの道路からちょっと外れた小学校跡地に設けられていたのだ。しかしこれでようやくあと30キロ、切った・・・!!・・・ま、まだ、30キロ・・・!!
とりあえず、あの橋のたもとまでは走ろう。橋は、歩こう。そう決めて進んだ。75キロ過ぎに掛けてが長い長い橋だった。なんとかキロ10分くらいで歩こうとしても、辛すぎて思うように進まない。そんな中でも時間差で出て来た対向の選手がいろいろと声を掛けてくれたりする。
JETT宣伝効果
すれ違いざまにこっちを指差して「あっJETT!Zwiftですね!」と言ってくれた人がいた。やはりこのジャージはZwift界隈ではかなり有名なようで、見覚えのある人も多いようだ。「ハァーイ、ありがとね〜」と「声だけは」元気に返事をしておく。でも実際、元気をもらった。声を出すと不思議としばらく楽になるのは事実だ。
この後の直線で、もう一人女性がやはり指差して「あっJETT!」と言ってくれた。たった二人だけとはいえ、自分が何者か(JETTer)をわかってくれる人に会えたのは嬉しかった。
平坦に戻ったが、歩いたり走ったり。あまりに脚が痛くて、とても続けては走れない。「ウルトラには終盤、奇跡の復活がある」とよく聞いていたが、この後復活することがあるとは、この時はとても信じられなかった。エイド24(74.3km 往路のエイド16)に戻って来た。ボトルに給水してまたなんとか走り出す。
うどんエイド(復路)
そこからまた歩いたり走ったりしながらエイド25(77.4km うどんエイド)へ。まだ往路を走っているランナー(この人たちは間に合うんだろうか?いや、人の心配は良い)と入り混じって大盛況、カップうどんは大商いである。また一杯いただいてコーラやらなんやら一杯補給して再度英気を養う。
周囲は、テーブル席に座ってうどんを貪り食う人、「戦友」たちと楽しそうに苦しみを分け合っている人、路肩に座り込んでうなだれて微動だにしない人・・・みんなよく頑張ってるよなぁ・・・おかしな人たちだなぁ・・・しかし座り込むわけにはいかない(立ち上がれなくなるに決まっている)。「ウオーッ!」と気合いを入れて、また走り出した。
大撃沈の瞬間
しかし頑張りもここまでだった。西湖の南岸へ向けてT字路を曲がって少し入ったあたりの下りで、フッと生気が抜けるような感覚があって、パタリと脚が止まった(正確には、歩き)。「今度こそ、終わった」もはや脚の激痛は一歩進むごとにナイフをザクザクと突き立てられるような感じ。無理だ。もう、走れない・・・80キロのセンサーシートを「歩いて」通過した。
これが今回の「大撃沈」の瞬間だった。
つづく(終わらんかった・・・)