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嫌だったらいいんだけど、ご飯いかん?

週3回の言語の授業、そのうち木曜日だけは彼の隣の席だった。ネイティブの先生が高速で放つ第二外国語にあたふたする私に、そっと耳打ちして答えを教えてくれる。ありがとう、というと優しく笑う。最近に関しては頼りすぎている気がする。すぐ右を向いて笑う癖が抜けない。


週1の、この時間だけは、精一杯の笑顔をしようと決めている。私は一重で、はっきりとした顔立ちではないけれど、全体的に丸みを帯びた私の顔のパーツは、くしゃっと笑顔に向いているようで、それを信じ、そんな笑顔を連発している。

彼に対する、いつもありがとうの気持ちと、ほんの少しの好意を表現するために。




月曜1限は、とてつもなくしんどい。高校生の時は9時に学校にいるのは当然だったが、信じられないくらい体が重い。起こしてくれる人やご飯を作って先に起きてくれている人がいないからかもしれない、まだまだ子供である。


だが、教室には彼がいる。私よりうんと遠い実家から通っているのに、変わらず余裕で彼は座っている。1人を挟んで隣に座る彼は、木曜日ほど私を見ない。話さないから当然である。


彼は、クラスメイトのボケを何1つ逃さない、優しい人だ。関西弁にしては柔らかいツッコミ。私は、そんな彼が好きだ。あと、なんちゃって無印コーデも好き。



話したい、と思った。木曜日だけじゃなくて、見ているだけじゃなくて。もっと君を知りたい。


だから、君を誘いました。今日は楽しい時間をありがとう。じゃあね、


と言うつもり。

多分彼は私のことを好きじゃない。こんなかわいい誘いになびかないでくれ。私とおいしいご飯を食べて、私のいいところや可愛いところに気がついて、それから好きになってください。


だから、私は甘えるとかじゃなくて、真っ直ぐ立って、対等に話すんだ。何が好きなの、とか新年は何するの、とか。決して、彼の好みは聞かないんだ。落胆しつつも、どんどん寄せていってしまう私がいると思うから。


そういえば、先週の月曜日、文学部の女の子ってなんかいいよね、という話題に頷いていた君を見たっけ。


私は文学部ではないけど、同じ学部棟にいる私も、なんかいいよねって、なるんじゃないかな。なってくれよ。

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