ベンチャー企業の成長過程(再)
ベンチャー企業(スタートアップ)の場合、創業/シードからアーリー、ミドル、レイターとステージが進みIPO直前になるにつれ、何度もVCなどからの出資を仰いで成長していきます。
と、株式/株主が複雑なのでしっかり管理/理解するためにもCap Tableが役に立つのです。
とはいえ、Cap Table把握のための情報は、ほぼ公開されていないのが現状です。
このような秘匿情報がかなり詳しく公開されるタイミングが唯一あります。
そう、それが
なのです。
目論見書で株主構成の何がわかるの?
はい、ではまず最初に、私が作ってみたCap Tableをお見せします。
どの株主がいつ何株株式を取得したかがわかります。
上から下に、時系列で株式の増減を載せています。
横軸は株式の種類(普通株、A種種類株、B種種類株……)です。
バリュエーションもわかっちゃう?
IPO前のバリュエーション
そうなんです。
バリュエーション(会社全体の価値=時価総額とも言います)がわかるんです。
もちろん、登記簿情報(ピンク部)も必要で、また推察(灰色部分:ここは間違っている可能性あります、ごめんなさい)もありますが……
(1) 各時点での発行株式数が判明
(2)同じくその時点での発行済み総数も判明
(3) 資本金(およびその増減)も判明
(4) 資本準備金の増減を推察できれば、各時点で誰が総額いくら出資したか推察可
(5) (4)÷(1)でその時点での発行価格/株(=株価)がわかる
このバリュエーション推移を理解することがCap Tableの大きな意義の一つとなるんです(^^♪
note株式会社はIPO直前の最後の資金調達で301億円までバリュエーションが上がりました。
IPOで公開された後のバリュエーション
前回の記事で、今回のIPOでは最大401,800株式が発行され、それ以外は既存株式計14,617,900株であり、合計約15百万株となることがわかってます。
これに想定株価320円でかけると、IPO後の想定時価総額がわかります。
計算すると……
バリュエーション推移
時系列でグラフ化してみると……
これは既存株主は、たまったものではないでしょう。
よくこれだけのダウンラウンドを既存株主が認めたものです。なぜ?
ということで、誰が得して誰が損するのか見てみましょう。
株主構成(ここからは半分趣味です♫)
IPO前
Cap Tableのおかげで、誰がいくらで出資したかが大体わかりました。
今の仮発行価格(平均320円)でIPOできたとすれば、それ以下で出資した出資者は得をしますが、それ以上の出資者は損をしちゃいます。
その他の早いタイミングでもっと安い価格で出資した株主たちはファンド期限切れという問題もあるのでしょうね。
なんとか他の株主を説得してIPOにこぎつけたんだろうなと推察します。
(IPO時に売り出すのも利益確定できそうなアーリー出資者ばかりですね)
IPO後
既存株主はIPOで一部売出せるものの、残った株式は株式公開後にすぐに市場で売れるわけではありません。
まとめ
まさかの大幅ダウンラウンド(84%ダウン)が判明し衝撃を受けました💦
最終出資者に17億円もの評価ダウンの影響を与えつつもなんとか交渉を重ねてIPOに持ち込んだというのが実情だと思います。
では、今からブックビルディングに参加しようか迷っている投資家はどう考えるべきでしょうか?
さて、次回はついに業績面の分析です。
業績評価は本来一番最初にやるべきことかもしれませんが、今回はIPO関係の分析と紹介が目的だったので、後出しになっちゃいました。
でも、投資判断では欠かせない内容になると思います♪
みんなの大好きなキャッシュフロー、そして(ざっくり?)財務モデリングが出てきますよ!
では、次回もよろしくです🎵