パンタグリュエリヨン草と悪夢
夜、僕たちはパンタグリュエリヨン草を
手に入れるために暁の沼底へ向かう。
昏い深淵に元気のないダイヴィング、
僕に残された時間はあと少し。
十一月の大学構内で
僕らはただの壊れものの子ども。
*
まるで僕たちは中空に浮かんだ凧で
細い糸が今にもほつれ千切れそうだ。
僕は僕自身の現実へと還るために
錆びれたカッターナイフで片腕に苦痛を印す。
ズブロッカで酔いどれた僕らは
十九歳の壊れものの子ども!
*
明け方、僕たちの片腕に巻きついている
安時計の下には絆創膏が一枚、
その裏側に古びた夢の骸が流した赫い血が
栄光のように滲む。
そこに僕たちはパンタグリュエリヨン草を
挟みこんだような気分で生きてゆく。
十一月の大学構内で
僕らはただの壊れものの子ども。
ズブロウカで酔い潰れた僕らは
十九歳の壊れものの子ども!
(1995年1月)