スイーツメモリー(桃の薔薇ムース)
缶詰の桃を薄くスライスして花びらのように一枚、一枚並べて薔薇の花のようにしてみた。
薔薇の花が好きで、庭に三本植えてあるが、なかなかうまく咲かない。それでも深紅のビロードのような薔薇が一輪でも咲くと庭が明るくなる。「バラが咲いた~ バラが咲いた~♪」
高校から歩いていける距離に、大きな公園があった。春と秋、季節になると、見事な数の薔薇が咲く。薔薇の中を散策していたある日、唐突に(私の前世は白い薔薇だった)と思った。「そうだ、私は白い薔薇だったにちがいない。だって、白い薔薇がとても他人とは思えないから」と、友人に言ったりした。「はい、はい」と聞き流す友人。
公園には公会堂もあり、その頃は、ロックコンサートもよく開催されていた。私達は高校の帰りに、制服のままで、よくコンサートに行った。
祖母に言わせると、昔は社交場で、宝塚劇団のショーを観に行ったそうだ。正面玄関前へは黒いハイヤーが何台も連なり、つぎつぎ着飾った人たちが、降りていくのだそうだ。確かに、公会堂はよく見ると、堂々とした立派な建物である。公園内にある、ローマ様式の噴水塔も、ルネサンス様式の奏楽堂も、普選記念壇も皆、素晴らしいデザインだ。
大人になって、公園に行ったら、奥の片隅にホームレスの小屋があった。木と木との間に、洗濯ロープを渡し、そこに白い買い物レジ袋が、きれいに洗って並べて干してあった。まるで、イカを干してスルメ作りをしているように。(ホームレスなのに、すごい几帳面なんだなぁ)とびっくりした。
公園は、明治43年にできたという。桜の季節の花見客でしかニュースに流れないけれど、本当は素晴らしい公園だと思う。特に、薔薇の季節には。
〇材料 … 黄桃(缶詰) ヨーグルト 生クリーム 砂糖 ゼラチン
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