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㊽ミャンマー情勢(Nスペ、ミャンマー軍 物資は?資金は?)

9月21日(土)の昨晩、ミャンマーがNHKスペシャルで取り上げられていました。

ウクライナ、中東の陰に隠れて忘れさられそうなミャンマーを取り上げていただいたのは、(世界から関心が失われて、見向きもされなくなり、無視されるのと比較すれば、)ミャンマー人にとって大変ありがたいのではないかと思います。


”忘れられた戦場”ミャンマー軍を支える巨大な闇に迫る

今回の番組は、以下の目的で作られています。

なぜ、欧米からの制裁があるなかで、ミャンマー国軍は未だにミャンマー国民を空爆などの手段で攻撃し続けられるか?というものです。


Youtube5分間まとめ

以下は、NHKによるYoutubeの5分まとめです。


番組内容の概要

さて、番組を簡単にまとめます。

民主派勢力(PDF)の健闘

ミャンマー国内の各地の拠点で、国軍と敵対する民主派勢力(PDF)が少数民族と共闘して、各地の軍の拠点を制圧しています。


国軍による空爆の継続

この民主派戦力の戦闘に対して、国軍は戦闘機で空爆を続けています。

国軍の民主派に対する空爆にはジェット燃料が必要なため、欧米はジェット燃料に対する制裁を加えていますが、実行力はありません。ジェット燃料の制裁以後も、空爆の数は増えています!!!

各基地毎に、どのような戦闘機があって、どのぐらい(回数)、飛行をしたかを示しています。タウングー空軍基地からは、ロシア製のMig-29、Mi-35P、中国製のK-8Wが飛行して、空爆しています。

ネピドー空軍基地からは、ロシア製のSu-30 SMEとYak-130です。

ナムサン空軍基地からは、中国製のFTC-2000Gです。


ジェット燃料の輸入元???

さて、欧米がジェット燃料の制裁をしているにも関わらず、なぜミャンマー国軍は、ジェット燃料を入手して、空爆を継続できるのでしょうか?

それは、欧米以外の国から、ジェット燃料を輸入できるためです。

中国所有のHuiTong78が何度も、ミャンマーのヤンゴンの港に停泊していることが判明しました。

この船は、タイ、中国、マレーシア、シンガポールから運航しています。

つまり、欧米が如何に制裁をしても、ASEANや中国は制裁に加担していないため、ジェット燃料をミャンマーに対して輸出できるのです。また、ロシアと中国は、ミャンマーに対して戦闘機を売ることができます。


ヤンゴン・マンダレー鉄道

ヤンゴンの港に到着したジェット燃料や武器はミャンマー国内でどのように輸送されるのでしょうか?

それは、ミャンマー国軍の鉄道が役割を果たしています。

クーデター以前は、塗装前の国軍のシンボルカラーの緑色の車両でしたが、クーデター以後には、塗装してカモフラージュしていていました。


日本のODA資金が国軍に流れているのではないか?

ヤンゴン市内にあるバゴー橋が取り上げられていました。2024年6月8日に完成式典が行われました。
その場には、ミャンマーの悪の権化である、バカ殿こと、ミン・アウン・フライン司令官が出席していました。

310億円のODAによって完成されました(有償ODAですので、あくまでも日本政府がミャンマー政府に貸付をしただけで、返済される予定です)。

橋には「ミャンマーと日本の協力により建設」というミャンマー語が示されています。

さて、この橋も問題点は、橋の建設を受注した「横河ブリッジ」という日本企業の下請けにMEC(Myanmar Economic Cooperation)という国軍系の企業が含まれていたことです。

実際に、そのMEC代表のニョー・ソー氏も、橋の完成式典に出席していて、バカ殿の後ろに控えていました。

MECの役割は、国軍の武器調達の下請けであり、司令官がニョー・ソーに対して、「スホイ30戦闘機の購入資金を調達しろ」と命じていたようです。

Human Rights WatchというNPOの調べでは、2022年7月から23年6月までに12回にわたり、合計6億5,000万円の支払いが行われていたとのことです。

元ミャンマー空軍の軍曹の証言でも、軍事費が足りなくなるとMECの収益が充てられるとのことです。


外務省の回答

バゴー橋の建設の際に、横河ブリッジからMECに支払いが行われていたことに対するNHKの質問に対する外務省の回答は、以下の通りです。

「仮に主契約企業がMECに対し契約に基づく支払を行わない場合は、契約違反となり、違約金等が生じる可能性があります。」

「使途が自由である違約金のような資金がミャンマー国軍に流れるおそれがあり、国軍への資金流入をできるだけ防ぐという観点から、適当ではないと考えています。」

以上が番組内容の概要です。

さて、以下はあくまでも、桐島個人の意見になります。

この番組を見た人の反応を予想しましょう!!!


番組を見た人の反応

私、桐島のもとに以下のコメントが寄せられました。

●日本政府はけしからん、国軍に資金が渡っているようなプロジェクトは、断固として辞めるべきだったのに、なぜ、辞めなかったのだ!
●ミャンマー人が可哀そうだ。
●日本も欧米同様に制裁を科すべきだ。


番組から得られる教訓

これに対して、番組から得られたのは以下の教訓です。

●日本企業(横河ブリッジ)は、MECと契約に基づいて橋を施工をしてもらった。発注企業と受注企業の契約関係であれば、契約が実施されなければ、違約金が発生する。違約金が発生してしまえば、余分な利益が発生してしまうため、受注の範囲内での支払いで抑えた方が良い。

欧米が経済制裁したところで、何の実行力もない。中国、ロシアが武器を売り、中国、タイ、シンガポール、ベトナムがジェット燃料を輸出することを止めることはできていない。効果が出ない制裁を実施して、やっている感を出したところで、何の変化にも結び付いていないなら自己満足ではないのか?

本当に悩ましい問題です。


なぜ、アメリカは経済制裁をできるのか?

ここで、そもそも論ですが、なぜ、アメリカやヨーロッパは経済制裁を科すことができるでしょうか?


それは、アメリカやヨーロッパが、ミャンマーに国益(national interest)や利権(stake)を有していないからです。

ミャンマーには、アメリカの企業やヨーロッパの企業は、ほとんどありません。アメリカ人、ヨーロッパ人もほとんどいません。

何の友好関係もない人間とは、絶交しやすいのです。

そして、一方的に絶交しやすい、というのが人間の性(さが)です。

しかし、残念ながら、日本は、ミャンマー民主化の開始以後の2013年頃から、多くの日本企業が進出し、日本人も滞在し始めました。

友好関係がある人間同士は、すぐに絶交できないのです。

(良くも悪くも)過去の友情やしがらみに囚われてしまいます。



日本の経済制裁を想像する

日本が欧米のように、ミャンマーに対して経済制裁をすることを想像しましょう。

現在のミャンマーは、国軍が支配する独裁政権です。
以下の記事触れたように、平気で日本人も拘束します。

このような状況下で、日本政府がミャンマー政府に経済制裁を科してしまえば、ミャンマー国内にいる日本人が全員拘束されて、日本企業がすべて国有化されても、何らおかしくはありません、、、( ゚Д゚)


つまり、アメリカとヨーロッパと一緒の構図です。


日本がミャンマーに経済制裁ができるのは、ミャンマー国内に日本人がいなくなり、日本企業がいなくなった後だけなのです。

そうすれば、日本政府は、気兼ねなく、バカ殿に嫌がらせをできるのです。

さもなくば、バカ殿から日本人と日本企業が嫌がらせを受けてしまいます。



ミャンマーに、もしアメリカの国益があったら?

そもそも、アメリカは、自分たちの国益(例:石油などの資源)がある国に独裁政権ができてしまい、自分たちの国益が略奪される(例:アメリカ系の石油企業が接収される)事態になれば、CIAを使って、国家を転覆させています。

これは、中南米、中東の歴史が示しています。

残念ながら、ミャンマーには、アメリカが興味を持つ資源もなければ、ビジネスの機会もありません

そのため、アメリカは驚くほど、ミャンマーに無関心です。

オバマ政権、ヒラリークリントン国務長官の時は、対中国の外交上の観点から、ミャンマーに興味を持ちましたが、実益は一切ありませんでした(*´Д`)



まとめ

以上をまとめると、以下です。

●NHKスペシャルの内容は、核心に迫る内容で、ミャンマー国軍が欧米の制裁を受けても、国民に対して空爆を継続できる理由を突き止めたもの。
●そして、日本のODAの資金の一部がミャンマー国軍に渡っている可能性があることを突き止めたもの。
●しかし、欧米が制裁を科すのは、自分たちの国益がミャンマーになく、自分たちにとっては、どうでも良い国(絶交しやすい関係)であるという事情がある。
●また、中国、ロシア、ASEANがミャンマーを制裁することはないため、現実に何ら変化はない。(武器や燃料は売られ続ける)
●日本のODAの一部が国軍に渡っている可能性があるというものだが、あくまでも工事をして貰った対価を支払という契約関係があったものであり、相手もそれなりの工事コストがかかっているため、対価がすべて国軍に流れるということではない。(中国、ロシア、ASEANが、いまでもジェット燃料をミャンマーに販売している問題とは意味づけが異なる)
日本政府は、日本人や日本企業がミャンマーから居なくなれば(完全撤退すれば)、ミャンマー政府を制裁ができるようになる可能性はある。
現時点で、独裁政権に対して制裁すれば(牙をむけば)、返り血を大量に浴びてしまう

劇作家のジョージ・バーナード・ショー氏の言葉にあるとおり、NHKが、ミャンマーに対する関心を払ってくれたことは、一縷の望みです。

ありがとうございました(._.)

The worst sin towards our fellow creatures is not to hate them, but to be indifferent to them: that's the essence of inhumanity. 

人間にとって最大の罪は他者への憎しみではなく、他者への無関心である。つまり無関心こそ、非人道的な行為の本質なのだ。

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