独りだけじゃない・時間の空き地
1月19日日曜日付の新聞朝刊で、読書に関する面白い記事に出会ったので記録。
まず日経新聞2面、俳優鈴木保奈美さんのインタビュー。「『読書は独り』だけじゃない」の見出しで、読書の孤独性と交流性、二つの側面を見つめている。
だけじゃない、の通り、鈴木さんは読書は孤独であり、孤独になれるからこその良さをまずとどめていらっしゃる。俳優活動でつらい時期に「読書はひとりで逃げ込める場所」だったという。その上で、「逃げ込むだけじゃもったいない」と語る。
同じ本なのに、他人と感想が違う。鈴木さんは「違いは物の見方が広がる楽しさでこそあれ、決してネガティブではない」と感じるそうだ。この違いの解釈は素敵。「最近は『どうして私はこの本が、どうしても好きになれないのだとう』と考えることも」という読み方にも、感心してしまいました。
もう一つの記事は、読売新聞文化面。2025年が昭和元年(1926年)から数えて100年ということで、「昭和百年百冊」という企画を始めるそうだ。そのプロローグにあたるこの記事では、政治学者刈部直さんと、美学者の伊藤亜沙さんの対談になっている。
刈部さんは、昭和100年の出版史を三つの時代に分ける。①戦前から1950年代、大衆消費型の出版モデルが誕生し、生き延びる②拡大期が続き、96年の推定販売金額2兆円超でピークに③現在までの下り坂。インターネットに押されつつ、最近は新書創刊といった動きがある。まさに、山あり谷あり。時代が見えやすくなる。
伊藤さんは、現代において読書の時間は「例外」になったと語ります。読書が生み出すものは「時間の空き地」だと。この表現が胸に残る。たしかに情報の奔流から距離をおき、じっくり考えるために、本が「碇(いかり)」になっている感覚はある。
そして本や書評の役割が「大衆の啓蒙」から「個人をエンパワーする(励ます)」ことに変わってきていると分析されている。なるほど、なるほど。たった一人の、しかもその人がよく生きるための手伝い。たしかに、本の大切な価値の一つだと感じました。
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