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冬の夜にちびちびと読むーミニ読書感想『冬の本』(夏葉社編)
◎夏葉社編『冬の本』(2012年12月20日初版発行)
「冬の本」というテーマで、さまざまな人が寄稿したエッセイがたくさん収録されている。どれも見開き2ページ。一篇読むのに5分もかからない。でもそれぞれ味わい深い。
寒い夜に飲むココアやミルクみたいに、年末年始にちびちびと読みました。そういう読み方がぴったりと合う。まさに冬に読みたい本。
たとえば片岡義男さん「ほかの季節に遊ぶ楽しさ」。歳時記をめくる楽しさが語られる。
ほどなくやって来るはずの春という次の季節の季語を、冬のさなかにひとつずつたどっては春を記憶のなかで先取りするのは、歳時記という一冊の本があってこそ可能になる想像上の楽しみだ。過ぎ去ったばかりの季節を、おなじく記憶のなかに懐かしく愛でるなら、秋の季語のあちこちを踏み迷えばそれでいい。
活字は遠い世界に連れ出してくれる。過ぎ去った季節にとべる。まだ見ぬ季節へ行ける。冬に春を思い、春の言葉に触れる喜びは、たしかに読書の醍醐味の一つ。
北村知之さん「小さな町にて」もよい。
本棚に並んだ一冊一冊が、長屋の住人のようにつながりをもっていく。そのたくさんの本のあつまりが、またあたらしい一冊をえらばせる。読書というおこないは、自分にしか手にすることのない、小さな町のような本を編んでいくことだとおもう。
「たくさんの本のあつまりが、またあたらしい一冊をえらばせる」。それは本書のアンソロジーとしての価値を表す言葉でもあります。
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