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どうか幸せになって、あなたを憎らしいと思わせて【ナラタージュ】

憎らしいと思わせて!分かった約束するよ。

【本の基本情報】
○ジャンル:小説・恋愛
○本の種類:文庫本
○著者名:島本 理生
○出版社:角川文庫

■「ナラタージュ」を読んで

本書は、島本理性さんの書き下ろし恋愛小説。
先生に恋した女子高生、生徒を愛した先生のストーリーです。

しかし、ただドキドキ、ワクワクの恋愛小説ではありません。
魅かれあう先生と生徒の関係、卒業してもなおその先生のことが忘れられない。
少女から大人へと変わっていく生徒、その関係は学生という束縛がなくなり、形を変えていきます。

あることをきっかけに、また先生と頻繁に会うようになります。
自分の気持ちが今どうなっているのかを探りながら、先生の気持ちも同時に少しずつ確かめるようになっていきます。

女は先生を愛し、先生も女を愛し、しかしなかなか結ばれない二人。
そこには結ばれることが許されない事実が隠されています。

その事実があることを知りながら、女に魅かれた男の本当の気持ちが徐々に明らかになっていきます。

■違う人を好きになろうと

先生の気持ちがなかなかはっきりと分からない。
そのまま、先生と女が結ばれることが出来ないという事実が発覚します。

そして女は、違う男性と付き合うことを決めます。
付き合った男性を一生懸命好きになろうと先生との距離をとり、付き合った男性との時間を大切にするようになります。

しかし、付き合った男性は、女の気持ちが自分にないのではないかという不安と自分に向かないイライラから、自分自身を見失ってしまいます。

やがて、女の気持ちはやはり先生にあるということを確信する出来事が起こります。
そこで女は覚悟を決めた決断をします。

■「ナラタージュ」を読んで!まとめ

ナラタージュを読んで、もちろん恋愛小説で、その内容は先生と生徒の恋愛ストーリー。
しかし、この恋愛は学生の恋愛というよりも、もっと深く難しい愛とは何かを考えさせられるものです。

女は二つの愛の形を知ります。
好きになってしまう人、好きになろうとする人。

ただその人がいるだけで好きという気持ちが溢れてくる。
そしてもう1つの愛は、一生懸命その人を好きになろうとして好きになる人。

この同じ愛でも、この2つには大きな差があると考えさせられました。
同じ言葉を言われたとしても、どちらの人に言われるかで、その言葉は大きく変化します。

好きになってしまう人、つまり好きになろうと努力しなくても魅かれてしまう。
その人に言われた言葉、行動、感覚は受け入れたくなくても体に入ってきてしまう。
受け入れを拒否することが出来ないという感覚です。

そこに愛の複雑さがあると思いました。
どんなに抗おうとしても、体が、感覚でその人を受け入れてしまう。
自分では拒否出来ないから、相手に拒否されたい!憎らしいと思わせて欲しい。

違う愛を選んでも、違う愛を実らせようと思っても、あの時、出会ったあの一瞬に引き戻されてしまう。
決して結ばれることはないと分かっていても、二人は出会ったあの日のままいつまでもその想いは変わらない。

そして最後に結ばれることはないと分かっている二人が、互いの欲情をぶつけあり、求めあう場面は大人のエロティックの中に純粋さもあり、やっとそうなれたという感情が溢れだす様子がリアルに伝わります。

本書は学生の頃の様な純粋さを持った恋愛が、その時のままの想いをもちながら大人の愛の切なさを表現する恋愛小説であると感じました。

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