頭で考えるほどバカになる。賢い人は〇〇する。
「頭の回転が速い人」
「頭がいい人」
「記憶力のいい人」
私たちは、こういった表現で「優秀な人」を表現することが多いですよね。
でも、ここで少し立ち止まって考えてみましょう。
本当に「頭の中で考える」ことは、賢い選択なのでしょうか?
人間の脳は「忘れる」ようにできている
認知科学の研究によれば、人間の脳は
3時間で40%の情報を忘却
24時間で70%の情報を忘却
1週間で90%の情報を忘却
するそうです。
みなさんの体感と比べてみてどうでしょうか?
3時間で40%忘れるということは、何かを忘れたことも忘れるということです。
つまり、あなたが「頭の中で考えた」素晴らしいアイデアの大半は、意識すらできないうちに消えていくのです。
なぜ「記憶する」より「忘れる」のか
実は、人間の脳は「忘れる」ことで、より効率的に機能するように設計されています。
例えば、あなたは
昨日の朝食の正確なメニュー
先週の火曜日の通勤電車の混み具合
先月読んだ記事の細かい内容
を覚えていますか?
おそらく、ほとんど覚えていないはずです。
それは脳が賢く働いている証拠なのです。
なぜなら、人間の脳は「生存に必要な情報」と「そうでない情報」を、自動的に選別しているからです。
もし私たちが日常の些細な出来事をすべて記憶し続けていたら、新しい情報を処理する余裕がなくなってしまいます。
これは、スマートフォンの容量管理と似ています。
重要なアプリは残す
使っていないアプリは削除する
新しいアプリをインストールする余地を確保する
つまり、「忘れる」という機能は、新しいアイデアを生み出すための準備なのです。
ただし、ここで大きな問題が生じます。
脳は「仕事に必要な情報」を「生存に必要な情報」ではないと区別しがちなのです。
「メモを取る」という知的作業
Google社の元CEOのエリック・シュミットは、
「優れたアイデアの99%は、議論の中で生まれ、記録されないまま消えていく」
と警鐘を鳴らしています。
では、どうすればいいのでしょうか?
答えは意外にもシンプルです。
「考えたことを、すぐにメモする」
これだけです。
メモが「知性」を作る理由
プリンストン大学の研究チーム(2014年)は、興味深い発見をしています。
手書きでメモを取る学生は、パソコンでメモを取る学生と比べて
テスト成績が23%高い
概念的な理解が31%深い
1週間後の記憶保持率が2.5倍高い
という結果が出ました。
その理由は3つあります。
「書く」という物理的な動作が脳を活性化
・手を動かすことで運動野が刺激される
・視覚的な記憶も同時に形成
・触覚からの情報も記憶を補強
「選択」という思考が働く
・すべては書ききれないので要点を絞る
・自分の言葉に置き換える必要がある
・優先順位をつける判断が求められる
「残る」という安心感がある
・脳のワーキングメモリが解放される
・次の思考に集中できる
・アイデアの連鎖が生まれやすい
すぐにできる「賢い記録」の始め方
明日から実践できる、具体的な方法を紹介します。
「道具」を決める
シンプルな無地のノート(A5サイズが携帯に便利)
キャップ式のボールペン(インクが切れるまで同じものを)
バッグの決まった場所に収納
なぜボールペンなのか?
消せない=安易な訂正ができない
インクが切れるまで同じ書き味
時間が経っても消えない
「書き方」を決める
必ず日付を入れる
余白を十分に取る
図や矢印を積極的に使う
「タイミング」を決める
アイデアを思いついた直後
会議や商談の終了直後
1日の終わりの振り返り時
なぜデジタルではなく紙なのか?
画面の制約を受けない自由な配置が可能
バッテリー切れの心配がない
検索機能に頼らず、振り返る習慣がつく
特に重要なのは、「書いたら二度と消さない」というルールです。
間違いや古くなった情報には取り消し線を引き、なぜ変更したのかもメモしておきましょう。
それが、あなたの思考の軌跡となり、後の「知性」を形成していきます。
記録が「未来の知性」を作る
頭の中で考えることは、確かに大切です。
でも、それを「記録に残す」ことで、初めて「使える知恵」に変わるのです。
多くの人が「頭がいい」と思っている状態は、実は「記録する習慣」から生まれています。
あなたも今日から、「考えたことをすぐメモする」という小さな習慣を始めてみませんか?
それは、きっと未来のあなたを、より賢く、より効率的に、そしてより創造的にしてくれるはずです。
参考文献
『発想法』川喜田二郎著
『メモの魔力』前田裕二著
『会社では教えてもらえない 仕事が速い人の手帳・メモのキホン』伊庭正康著
サポートいただけると、開発に割ける時間が増え(本業の時間を減らせ)、開発スピードが上がるかもしれません。