vol.13|テクノロジーの利用を「あたりまえ」にする
2023年6月12日公開記事の再掲となります。
学校でのICT活用に訪れたさまざまな変化を、Google との出会いを切り口に語る本シリーズ。
今回はGoogle for Education 認定イノベーターとしても活躍する、茨城県立並木中等教育学校の宮本 脩平先生にインタビューしました。
現在の学校には着任4年目となります。コロナ禍で異動ではあったのですが、ほぼ時間割通りのオンライン授業が実施できるなど、テクノロジーの導入に関しても積極的であり、SSHにも認定されていて、さまざまなことに挑戦する風土のある学校です。いまは中学1年生の副担任をしながら、PCシステム部の責任者として機器の管理などの仕事にも携わっています。
現在は中学生がひとり1台の Chromebook、高校生がBYODで端末を運用しています。
高校生の端末は Google Workspace for Education が利用できれば何でも良いとしています。
Google とわたし
宮本先生と Google との出会いは何がきっかけだったのでしょうか?
2016年、教員2年目(24歳)の時です。お世話になっている先生から「 Chromebook を10台借りることができるのだけど、使ってみない?」と声をかけられたことがキッカケでした。
何から使って良いのか全く分からなかったので、とりあえず使ったことのある「文書作成」「表計算」「プレゼンテーション作成」のソフトから手を出そうと「ドキュメント」「スプレッドシート」「スライド」から取り組みました。
使いはじめてしばらくすると「共有」ができることを知りました。当時はこの「共有」に非常に驚き、授業での利用にインパクトを与えられるのではないかとワクワクしました。
はじめての Google ツールを用いた授業
実際の利活用はどのようなことからはじめたのですか?
当時は進路選択なども含めてさまざまな生徒が在籍している学校でした。そもそも英語が好きで学びたいという生徒の方が少ない。もしかしたら誰もいないという状況だったかもしれません。
自分の実施する授業の目的の一つが「寝させない」になってしまう。そのような状況で Chromebook を使った授業に挑戦してみました。
すると、生徒たちが少しずつ自ら動き出しました。スライドを作成したり、話し合ったりと今までにない可能性、手応えを感じました。生徒たちもそんな授業の様子にいい印象を持つようになりました。
これは、今まで授業では「受け取る」ばかりの生徒たちが、テクノロジーを手にしたことをキッカケに「つくる側・与える側」になったことが大きいと思います。Chromebook はその一歩目を踏み出しやすくしてくれたのだと感じました。
宮本先生にも何か変化はありましたか?
英語教育も「4技能」「オールイングリッシュ」などが話題になっていた時期でもあり「自分が受けてきたノートに書いて訳してという授業はなくなる」と感じてはいました。そんな時に Chromebook を用いた授業に手応えを感じ、思い切って生徒たちに委ねる授業にシフトチェンジをした結果、改めて「自分の授業とは」「自分らしい授業とは」を考えるようになりました。
学校としても授業研究に力を入れているので、より教科指導にテクノロジーをどのように有効に活用できるかについて試行錯誤を続けたいと考えています。
学びの道具としての Chromebook
いまの生徒たちのリテラシーについて
いまの中学生は Chromebook を持つことで凄い力を発揮すると感じています。ただ、学校の Chromebook でしか、 Google Classroom を開くことができないと考えているような生徒もいる。
生徒によってのリテラシーに大きな差がついているようにも感じます。
コロナ禍で保護者も子供の端末をどうコントロール(管理)するかに向かった時間が長いように思います。上手に対話しながらルールを決めて運用していた家庭と、単純に管理・制限のみで運用していた家庭との間には子供のリテラシーに大きな差があるように感じています。
学校では生徒たちが生徒を楽しませること(entertain)を意識して利活用をすることで、使い方を学んで欲しいと考えています。
Chromebook は iPad などのタブレットとは異なり、生徒達にとっては最初は不慣れな端末かもしれません。しかし、慣れすぎている端末だとあまりにも遊びと学びがシームレスに繋がりすぎて、中学生段階では遊びとの切り替えが難しい場合もあるという話も聞きます。普段使っているスマホとは少し異なる。しかし、使いづらいわけではない端末。そんな Chromebook は学びの道具の選択として良いのかもしれません。
Google for Education 認定イノベーターとして
なぜ申込をしようと思ったのですか?
いままでお話ししたように、授業を思い切り変えたことに手応えがありました。しかし、少し時間が経過すると、すぐに大きな壁が立ちはだかり、そこを超えることができずにいました。その壁をなんとか越えたかったのが大きな理由です。
2019年のアカデミーで学んだことは「これからあたりまえになること」でした。結果的にコロナはありましたが、このとき感じた「これからのあたりまえ」がいまの「あたりまえ」になっています。やっぱり、これがスタンダードになるんだ。と改めて確信しました。
まだまだ自分の授業では壁の先へは届いていませんが、進むべき方向は間違ってない気がしています。
あたりまえになった現在、感じていることはありますか?
実はまだ端末導入についてはようやく整ったところなのではないかと感じています。学年ごとの年次移行など含めた移行期間をようやく終えて、全学年が端末を持っている段階にやっとなった。結果として、端末の利活用がようやく全員の先生の「自分ごと」になった。
生徒も先生も少し使えるようになった2023年。もしかしたら、端末があることを前提にした授業デザインを中長期的にようやく計画できる段階にきたのかもしれないと感じています。
先生も、生徒も、みんなで使う。より自主的に主体的に Google ツールを使って学んで欲しい。そのキッカケを自分の授業でも与えたい。
テクノロジーの利活用が「選択肢のひとつ」となりはじめた。自分も学校も、次のステージに踏み出したなと感じています。
宮本 脩平
茨城県立並木中等教育学校・英語科教諭
Google for Education 認定イノベーター(JPN19)
2015年から教鞭をとり、2020年より現任校に赴任。2018年にGEG Kamakuraに参加したことをきっかけに、Google for Education を利活用する授業を実践する。2019年に Google for Education 認定イノベーターとなり、全国から選ばれた35名の仲間とともに「学び」のあり方を見つめなおした。今年度からはキャリアで初めて中学生を担当することとなり、テクノロジーの利活用を通じて生徒と世界をつなぐ授業づくりを模索中。