記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

守りたいその日常

自分の記事で欠けている要素とは一体なんだろう。そんな事をぼんやり考えたところで中々分からない。分からないからこそ書けていないのであるが、「平凡ななんでもない日常」「日曜の朝」「ポエム」「仄かな幸せ」、悪く言うと「お花畑」となってしまうのだろうか。noteの他の投稿者さんを眺めてみると色々勉強になるのは間違いない。勉強になるとか言っている時点で既に道を踏み外してしまっているのであるが、ある意味仕方ないだろう。僕は何処かで毒を一服盛られてしまったらしい。

そこで本日紹介したいのは「ドラゴンクエスト6〜幻の大地〜」だ。最近テレビゲームの記事ばかり書いているが、これもある意味仕方がないだろう。そういう人生を送ってきたという事だ。
自虐や反省は今日の雰囲気に全く相応しくないのでここまでとする。そのようなネガティブは、「お花畑」にそぐわないし、僕も元々好きではない。「あなたの記事はネガティブなものが多いよ?」の声が聴こえてきそうだ。しかし本当はそうではないのである。出来るなら格好良く積極的ニヒリズムとでも呼んで頂きたい。開き直りとは少し違う。兎に角前向き肯定的なんだ。

なんだか精神論みたいで詰まらないのでさっさと行く。dq6の発売は1995年、スーパーファミコンが最後の輝きを放っていた頃だろう。ここで当時ゲームに対して抱いた印象を書けると良いのだが、どうも思い出せない。ff7に対してはオープニングで即感動したのを覚えているのだが…。無理もないだろう。ドット絵の割にあのゲームは、物語的にもゲーム難易度的にも小学生のレベルを超えていると思うのだ。

敵の原子力発電所(みたいなもの)を爆破する為、ツンツン金髪頭のイケメンお兄さんが列車上に無賃乗車し、宙返りで飛び降りる場面からff7の話は始まるのだが、対してこちらは山奥で焚火をした後やわら行きますかといった調子でドラゴンに乗り、いつの間にか魔王の城へと侵入するのである。しかも主人公は喋らない。自我がないのである。現代に生きる自分達からしてみればなんとも異様な世界ではないか。

城に乗り込んだはいいが、魔王は強大であっさり爆発させられてしまった。物語はもうお終いかと思いきや、実は主人公、ベッドの上だったという展開。側には可愛い妹がいて、部屋から一歩踏み出すと綺麗な青空、のどかな田舎の風景。ピクニックにでも行く様なワクワク感を音楽が後押ししてくれる。

家から出た瞬間、太陽の光が差し込む

村長の家に行くと、お使いを頼まれていよいよドラクエっぽくなってきたなと感じるのだが、戻ってくるとお祭りが始まっており、この機に乗じて妹に結婚を言い寄る輩が…。しかし結局は
「私 本当にわからないの。“この世界”のことも 私自身も…」
と言って立ち去る辺りが意味深。

振られた男と一連を覗き見る主人公

物語序盤ともあって制作スタッフ気合が入ってるなと。自我を求めて彷徨う人と“家”に帰ろうと諌める人、テーマは被るが、常に現代からの視点で描いているff7と比べるとdq6にこの点軍配が上がるか。

話が前後してしまうが、お使いに出かけた際主人公は地面にぽっかり空いた大穴へと落ちてしまっていた。それから無事帰ってお祭りに参加出来たのであったが、そこにはもう一つの“世界”があって、人々もちゃんと暮らしていたのである。

ここでネタバレといこう。最初に見た夢は夢なんかではなく現実だったのだ。反対に、現実だと思っていた日常こそが夢だったのである。主人公は田舎のいち村人ではなく、とある城の王子だったのだ。王子として魔王討伐に出かけた結果、敢え無く敗れて夢の世界へと飛ばされてしまったのである。ここでお気付きだろうか。魔王はいたずら心を発揮したのだ。あっさり命を奪ってしまえばいいものを、夢の世界、しかも自分が望む世界(幼くして亡くなってしまった妹が存在する世界)で何時までも心安らかに仲良く暮らせよと言ってくれているのである。これを「ありがたい」と感じるか「それでいいのか」と感じるかは人それぞれであろうが…。

お祭りの最中、突如「立ち上がりなさい」との神によるシンプルなお告げがあって「はい分かりました!」とは言わないまでもお使いを遂行するかの如く黙々と出発する様子は、ドラクエらしくて微笑ましい。途中、ペラペラうるさいもう一人の自分を見つけた際は、「王子に戻りたくない」と言って一度は合体を拒んだのであったが、結局妹のピンチを救う為に屈伏したので、その時は少々複雑な思いがしたのを覚えている。
そのまま失踪していた王子が城に帰還すると王、王女(両親)から「あなた、雰囲気が以前とは変わったわね」としきりに指摘されてしまう。無理もないだろう。前と違って随分無口になって帰ってきたというのはあくまで笑い話だが、わがまま主人公から抜け出した意識が世間を彷徨っている最中、既に様々なものを見てきたのだから。それでも「まあいいわ。帰ってきたのだから」と流される辺りがくすりとくるポイントだ。

また、道中魔法の得意な女の子が仲間に加わるのであったが、魔王を倒したと同時に“幻の大地”もろとも彼女が消えてしまったのは寂しかった。魔法使いの人達が暮らしていた街は遠い昔に魔王によって滅ぼされてしまったらしいと現実世界では囁かれていたが…。どうやら嘗ての住人だったらしい。これが怨念というものだろうか。

dq6の記事を書いているとなんだかしみじみとした気持ちになってしまった。ドット絵やコミュ障主人公といった一見ハンデと思えなくもないものを抱えながらもある種の感情を呼び起こせるのは、日常を愛する日本人の心情を作品が突いているからこそなんだろう。


いいなと思ったら応援しよう!