PMSからのSATC、AJLT
PMSの一瞬の判断ミスで、懐かしの海外ドラマ『Sex and the city (SATC)』をファーストシーズンから一気見するという愚行に手を染めてしまった。きっついな。
タイムリーで観ていた頃は、私は20代のバカ娘であった。自分より10歳も年上のお姉さま達が、そのさらに年上のおじさま達と「やったやられた」を繰り返してボロボロに傷付いてゆく様子が気持ち悪すぎて、当時は(アメリカに住んでいたくせに)世間のSATC熱には全くついていけなかった。
あれから20年、大概の出演者達より年上になった今では(ビッグでさえ40代前半の若造だものな!)、独身や既婚や子あり子なしにかかわらず理不尽な男性社会で翻弄される女性達にどうしようもなく共感し、1話ごとにボロボロと涙をこぼしている。しんどい。
「愛してるのにどうしてこんなに苦しいの?」
ーー謎だよねぇ。私もキャリーと同じような失敗を何度も繰り返した。どんな努力をしても、何をしても、何もしなくても、女が傷付くようにこの世は作られている、としか思えない。
セカンドシーズンでは、元カレのビッグが出会ったばかりの20代の娘とあっさり結婚してしまうのを見て、キャリーは思う。
「きっと彼のほうが、私を飼い慣らせなくてつらかったのだ」とーー。
キャリーのことを愛していながら、自分の思い通りにならない女であることに恐れをなし、ビッグはそそくさと「聞き分けのいい女」に逃げたのだ。
男が女を統治することで成り立たせてきた男性社会において、愛する女を傷付けてでも、自分のプライドのために「従順な女を所有する」こと、それが当時の男に課されたバカバカしくも悲しい使命である。(そんな不誠実な関係に未だ終止符を打てていないカップルは山ほどいることだろう)
私は永らく、自分の価値を疑ってきた。こんなに生きづらいのは、自分がダメだからだろうと思い込まされてきた。だが違った。私は立派な暴れ馬だったのだ。ーー鞍を装着されるのを嫌がって暴れる馬、飼い主に噛みつく犬、なつかない猫、勇気を出して正しいことを主張する者、男に乱暴を許さない女、他人をだまさないこと、自分をごまかさないこと、世間に飼い慣らされないことーー。
私が苦しいのはそういうことだったのだ。私もキャリーも、誰にも飼い慣らされることはない。
どちらが手綱を握るかではなく、自由に並走できる仲間と出会いたいものである。
ちなみにSATCの最新作、『And then just like that (AJLT) 』では、コロナ禍を経て再び、私より10歳年上のお姉さま達が、閉経後、そして夫が死んだ後の生活を見せてくれる。
セックスをテーマにしている作品であるだけに相変わらず気持ち悪さは感じるが、今の私はもう現実から目をそらしたがるような20代のバカ娘ではない。10年以内には必ず自分の身にも訪れる変化をちゃんと受け止められるよう、お姉さま達を見て学んでおかなくてはね。