秋の散文
この季節の何が嫌かと言うと、夜明けが遅いことだ。夏には4時に起き出して朝陽の中を散歩するのが日課であるが、秋冬はそうはいかない。
真っ暗闇の早朝散歩をあきらめて、代わりに部屋で2時間ほど作業をしようかとも思うのだけれど、やはり朝いちばんに陽の光を浴びなくてはどうにも目覚めが悪い。それで結局、6時まで寝てしまったりする。毎晩ベッドに入る時間は夜8時と決まっているから、だいたい10時間睡眠ということになる。夏は8時間、冬は10時間、これが私の睡眠リズムだーー。
ちなみに大谷サンも10時間くらい寝るらしいね。私も彼も10時間睡眠となれば、両者ともに残り時間は等しく14時間であるはずなのだが、大谷サンが超人的な活躍を見せる一方で、私はというと、どれだけ寝ようがいっこうに闘志がみなぎらないまま、今朝もボケ~っとしているのである。やれやれ。
のんびりと朝食を食べ、登校や出勤の騒ぎが静まった頃でようやく散歩に出る。新調した秋らしいスニーカーがとてもかわいい。ーーが、音がおかしい。ペタペタと、二人分の足音がする。振り向いても誰もいない。ペタペタペタペタ。数メートル後ろを誰かにつけられている気がする。ついつい何度も振り返る。もちろん誰もいない。試着の時点では気付かないけれど、靴というのは案外、不思議な音を出すものなのだ。
公園までのほんの数キロの景色が、毎日ものすごいスピードで変化してゆく。あっちでもこっちでも重機が行き交い、容赦なく田畑が潰されてゆく。まるで臭い物に蓋でもするみたいにセメントが流し込まれ、駐車場やバスケットコートやスケボー広場などが新設されると、かつてそこに黄金の稲穂が頭を垂れ秋風に揺れていたことなど、誰も思い出せる者はいない。
「農地を勝手に潰して建物を建てたりしてはいけない」みたいなこと、教科書に書いてなかったっけな? 昨今の破壊っぷりから察するに、おそらく勝手には出来ないけれど簡単な手続きで出来ちゃうってことだろうね。見渡す限りアスファルトですよ。田んぼなんてひとつも残っちゃいない。田舎の景色がこれなのだから、日本人はもう米は作らなくなるということだろうね。将来的には100%輸入米になるんでしょう。
(ちなみに私はとっくに日本の米市場には見切りを付け、今では主食はほとんど芋である。ポテトチップスも食べたいだけ食べる、芋掘りならぬ、大の芋推しである)
どこからか甘い綿菓子の匂いが漂ってくる。何年も前、それが桂の葉が発するものであると知るまでは、私は本気で「近くで秋祭りの夜店でも出てるのかな」と思っていた。すっかり秋も深まった。
ふと、まだ車のタイヤ交換をしていないことに気付く。いつもならとっくに終えているのだが、今年はまだ雪の便りが届いていないーー。