Teams運用Tips ー生きたコミュニティを作るにはー
はじめに
新型コロナの蔓延により自宅待機、完全テレワークに移行された方も多いことと思います。そして急遽Microsoftの社内SNS「Teams」を導入された会社も多いと思います。利用者(DAU)は1日当たり4400万人を突破、Zoomのセキュリティ不安を背景にさらに利用者が増えてMSは笑いが止まらない状況と思います。
弊社ではコロナ前よりテスト的に小チームでTeamsの導入と試験運用を行い割とうまくいっていたことから今回全社的にTeamsを利用する運びになりました。これまで小チームで運用していたTeamsも部内(総数30名程度)で共同運用することとなったのですが、小チームではうまくいっていたものの大チームになった瞬間、ある管理職の失策でコミュニティが開始直後に死亡した、という悲劇が発生。その反省を踏まえ、Teams運用をうまく回すためのポイント、逆にコミュニティを殺すバッドポイントをそれぞれまとめてみました。
Teams運用の成功ポイント1:チーム、チャンネルを分散させない
Teamsにはチームと呼ばれるグループ(会話の大きなまとまり、例えばXXの開発チームとかXXプロジェクトとかの大きなまとまり)、チームの中に作られるチャンネル(チーム内の議題別のまとまり、例えば全体計画とか今年度活動共有とか)、チャンネル内ではトピックス(議題の中の細かいアイテム)の3つの枠で構成されているのは利用者ならご存じかと思います。
概念で言うとこんな感じ
で、このチャンネルを似たような内容で複数作成する、例えばテレワーク中の就業状況や困りごとを共有するために「就業状況共有」を作り、その後「テレワークのポイント共有」といったようにかなり近い内容のチャンネルを作ってしまうと、利用者は「どっちに書けばいいのかわからない」と言う迷いが発生し、その結果どちらにも投稿しない、もしくは会話や議論が2つのチャンネルに跨って行われる、と言う事態が発生します。
アクティビティの高いチャンネル運用を行うためには明確にチャンネルの内容を切り分けることが推奨されます。
例えば上記のチャンネル切り分けであれば就業状況共有に一本化することが推奨されます。もし同じチャンネルの中で若干切り口が異なる話をしたい場合はチャンネルの中のトピックスで切り分けを行うと上手く会話が発生していきます。
利用者も迷いがなくなり利便性が上がる、後から見たときの検索性も高くなるなど運用上のメリットを享受することができます。その際トピックスにタイトルづけしておくと検索性がさらに上がり尚良いです。
ポイント:チーム・チャンネルをあまり分散させない、会話内容を分けたい場合はトピックスで分ける!
Teams運用の成功ポイント2:あまりに限定的な内容のチャンネルを作らない
あまりに限定的な目的のチャンネル、例えばテレワーク中に勤務開始のあいさつ(合図)をするためだけのチャンネルを作ると、開始報告をするためだけにそのチャンネルを開く→あいさつを投稿する→状況共有のために別のチャンネルを開く・・・といった非常に生産性の低い行為を強いられることとなり、コミュニティ参加者のモチベーションを一気に下げることとなります。
そのためこういった目的のチームは作らない、例えば情報共有も兼ねたチャンネルを作成し、勤務開始連絡と合わせて近況の共有も行うなどアクティビティの上がりやすい(投稿がされやすい)チャンネルづくりを行うと良いです。
ポイント:あまりに限定的な目的のチャンネルを作らない、他のチャンネルに目的の機能を内包させるチャンネル作りをしよう!
Teams運用の成功ポイント3:管理のためのチャンネルとしない
これ、多分大きな会社ほど陥ると思います。ともすると管理職、特に職位が上がれば上がるほど完全テレワーク状況になると「各メンバーがちゃんと仕事しているか不安だから見える形で管理したい」と思うのではないでしょうか。これを端的にやろうとすると例えばTeamsの会議機能で映像垂れ流し、といった暴挙に出ようとするもの。しかしそれは端末の処理能力的にも厳しいので妥協案として先ほどのポイント2で書いたような「あいさつチャンネル」みたいな不毛なチャンネルを作り出し、管理を行おうとし始めます。
これ、ポイント2でも書いた通り運用上の手間、全く生産性の無い行為を行うこと自体で大幅にモチベーションが下がりますし、それ以上に管理職は部下を信用していない、と言うコミュニティ維持の大前提である相互の信頼感を著しく毀損することになり、さらにチーム全体のモチベーション低下を招くことになります。
こうなるともう修復不能で、このコミュニティは完全に「死ぬ」ことになります。もうそのチームに義務以外で投稿されることはないでしょう。
そうしたコミュニティ運用上の「最悪の事態」を避けるためにも、管理のみを目的としたチャンネルは作らない。もし管理をどうしてもしたいのであれば別の投稿者にメリットがあるチャンネル(例えば近況紹介など)を利用して毎日一度は状況を投稿する、といったルール作りや意識づけを行い、その中で就業状況の把握を行っていくなど工夫をするべきと思います。
ポイント:管理を目的としたチャンネルを作らない。管理をする場合は有益な情報共有の中で行う
Teams運用の成功ポイント4:上位下達を避け、フラットな関係での利用を促す雰囲気を育成する
先のポイントでもあった通り、管理目的を前提にチャンネルづくりをするとコミュニティが死にます。コミュニティを育成していくのに重要なのは自発的な行動(この場合は投稿)が可能な環境を作り、コミュニティメンバーの自発的な行動が為され、それが参加者相互に行われていくことです。
その為に必要となるのは間違いなくコミュニケーションで、上司も部下もなく会社、コミュニティの一員としてコミュニケーションをとり、自発的な投稿が発生した場合にはそこに対し意見や自分の考えを付加して議論を活性化させると言う意識、行動がポイントとなります。
会社の中のシステムのためどうしても利用開始直後は緊張感があり発言に躊躇するメンバーも生じてきます。その中でフラットな雰囲気を作り、誰もが発言しやすくする環境を作っていくことが大事です。
例えば管理の中心となっているメンバーが積極的に情報を発信したり考えを投稿することで発言の手本(ここまでいっても大丈夫と言うガイドライン)を示す、それに対し上位の管理職も会話に参加する、興味を持っていることを姿で示すことが重要かと思います。小チーム運用を行っていた際はこれがうまく回っており、アクティビティも非常に高い状態を維持できていました。
ポイント:上位下達の発言を避け、フラットな雰囲気で議論ができる環境をコミュニケーションの中で示していく。インフルエンサー的にコミュニティの中心になれる人を置き、積極的な発信を行うことで手本を示すとよい。
Teams運用の成功ポイント5:情報の発信はチームのためであると同時に自分のためでもあると言う文化を育てる
ともすると特定の人ばかりが発言することとなり「独り言ばっかりだ」と不安、不満になってしまうことが発生してくるかと思います。
確かに特定の人ばかりが発信するとその人は不満に思うかと思いますが、逆に考えれば自身の発信を多くすることで発信を受けたその他メンバーに自分の考えを伝えることができると同時にフィードバックをうける機会を人より多く得ることができます。これは発信を行わない人に対し知識量、そして会社からの評価としても大きなアドバンテージとなります。
また発信者自身も積極的に発言をTeams上に残すことで自身の考えを整理することができ、またそれらの発言、投稿自体が自身の思考のマイルストーンとなり、後から考えた経緯を振り返りやすくなります。
Teamsは確かにコミュニケーションを主目的として作られたツールではありますが発信を多く残すことで自身の思考の外部記憶装置としても利用できます。ぜひ積極的な発信をしてみてください。
ポイント:情報の発信はチームのためだけでなく自身の為にも役に立つ。Teamsを外部記憶装置として活用しよう。
Teams運用の成功ポイント6:チームの運用人数は最大でも6〜7名程度が望ましい
これはTeamsなどSNSの運用だけでなく実社会のコミュニティ内での議論、会話でも同様ですが、やはり会話の参加者が多くなりすぎると議論が成立しにくくなり、また人が増えるほどフリーライダー(情報を自身から発信せずタダ乗りして情報のみを取っていく人)が増えていき、議論が深まらないと言う事態が発生してきます。
またSNS特有の特性として議論に時間差が出てくる為、あまりに人が増えすぎると会話が前後し議論がしにくくなる、と言う問題も生じてきます。その為チームの人数はあまり多くなりすぎない方が望ましいです。
またSNSのいいところとして議論がテキストとして時系列で残ることから、チームの外部から途中からでも議論に参加できる、と言う点が挙げられます。ですのでいきなりチームメンバーを増やすのではなく、適時参加し、適時離脱していく、と言うSNSだからこそできる柔軟な運用を心がけると良いでしょう。その為にもチームはできるだけオープン化し、外部からの参加者が参加しやすい環境を作っておくのが望ましいです。
ポイント:各チームは主には10名以下で構成し、その他メンバーには必要に応じて議論に参加してもらう形をとる。
失敗事例
これまで書いた通り、Teamsも通常のチームやグループでの会話と相違なく、その差というのは口頭か文章かと言う違いしかありません。その為チームのメンバーをむやみやたらに増やしたりする、管理で縛りつけるといった行動をとると参加者の自発性が失われ、コミュニティは死を迎えることとなります。
失敗事例で挙げるのは冒頭にも書いた通り、弊社の事例となります。先のポイントでも挙げた通り、弊社の失敗事例として以下が挙げられます。
・チャンネル参加人数を一気に増やしてしまった(6名→30名)
・大多数はSNS経験に乏しい中、なんの事前インプットも無しに利用を開始させてしまった
・管理者が管理のために勤務開始ー終了の挨拶(合図)をするためだけのチャンネルを作ってしまった
・複数の管理者が管理ルールを作るための会話を雑談用チャンネルで始めてしまった
・コミュニティの自発的な活動ではなく、管理者の意向でチームづくりを行ってしまった
・管理者はコミュニケーションの場さえ与えれば勝手にコミュニケーションを行うものだと思い込んでしまった
・同一チームに目的が近似したチャンネルを複数作ってしまった
これらが行われた結果、この部内チームはあいさつのみを行うだけのチームになってしまい、コミュニティとしては完全に「死んで」しまいました。
また雑談が管理用チャンネルと雑談用チャンネルの複数に渡って行われる、チャンネルを問わず管理ルールづくりの議論がされてしまう、雑談チャンネルで業務連絡をする、といったチャンネルの目的に添わない運用が横行し、またスレッドに返信する、と言う基本操作を理解せずに利用を開始してしまった結果、チャンネル内にスレッドが乱立し判読が困難になるなど開始1日にして混乱をきたしてしまいました。
今回の事例はコロナウィルス蔓延による緊急的なTeamsの本格運用開始が引き金となりこのような問題が生じました。是非これから運用を本格化させようとされている方々には上記失敗例、そして円滑運用のポイントを抑えた上で運用をスタートさせていただければと思います。
Teamsは円滑運用のポイントを抑えれば非常に利便性の高い素晴らしいツールです。個人的にはメールはもういらないのでは?とすら思っています。本記事と弊社の失敗事例が御社、貴組織のTeams運用の参考になれば幸いです。