◎手帖P7「土づくり~おいしいの始まり」
2020/01/08、01/15OA
おいしい人気の焼き芋やさん「蜜香屋」が、自分たちの畑で芋掘りをするというので、お邪魔してきました。箕面にある畑では今15種類くらい作ってみているとのことで、いろんな色形の立派なサツマイモが、たくさん掘り出されていました。自分たちも食べたことのない種類のものも作ってみているんですって。でも、この畑から収穫する芋は、販売用ではなく、みんなで勉強するためにやっているんですって。いつも自分たちが販売しているサツマイモがどんな風に育てられているのか、体験し何かを感じるためにやっているそうです。
蜜香屋の石山さんは、そもそも畑の土に携わる仕事についていたそう。滋賀で土にまつわる仕事をしているうちに、大阪の暮らしの中での「食」についての感覚を変わったんだとか。もうちょっとシンプルで、もうちょっと美味しい、みたいな食が良く感じだした…そこで収穫したお米に、そこで収穫した大豆から出来た豆腐を乗せて醤油をかけたらもう旨い!というように。シンプルになっていくんですね。
そんな価値観を伝えたくても、なかなか土の話って聞いてもらえない、土の大事さを説いても「ヘェ〜」で終わっちゃう。やっぱり「食べて美味しい!」が説得力があるし、話を聞いてもらえる。そんなとき、初めて食べた安納芋の美味しさに石山さんは閃きました。焼いただけなのに、和菓子やケーキのような甘い美味しさ!このサツマイモを美味しく味わってもらえたら、土が味のポイントになるということを聞いてもらえるのでは?!蜜香屋が、美味しさから人気の焼き芋屋さんになった今、ちょっとずつだけど、みんなが話を聞いてくれるようになってきたそうです。
蜜香屋で販売している芋は、石山さんの土に対する思いに共感してくれる農家さんたちが作ってくれたもの。薬を減らしたい、無農薬で頑張りたい、という、自分たちと同じ方向性でやっている農家さん。土によって美味しいお芋が出来てるんだと言う思い。食べ物というのは、そもそもそういうものだろう、土が大切だろうという考え方に、共感してくれる農家さんたち。一番古い契約農家さんは、種子島に行って、取引をしてもらえないか、話してお願いをして、少しづつ信頼してもらえるようになった農家さんたちなんですって。
さて、美味しいお芋、野菜、食べ物が生まれる土って、どんな土なんでしょう?それは、農業の方向性によって違ってくるそうですが、石山さんの土の師匠の話では「山の土」が理想。人が手入れしない、勝手に草木が枯れて、自然に次の新しい生命が生まれる循環がある土。その循環は畑にした瞬間から止まってしまうから、そのシステムをリスペクトしながら、そこに原理があるから大事にしながら、じゃぁ畑の土に何を与えようか考えることが必要なんですって。難しい!お芋掘りをした石山さんたちの畑は、このあと掃除して、有機物を足して寝かして、4月下旬から梅雨までの間くらいに次のサツマイモを植えるそうです。畑のこれからが木になるので、時々見学させてもらうことになりました!
これから先、蜜香屋に関わるもの・・・建物、器、ユニフォームなど、いろんなものが土から根ざしたものになっていけばいいなと言います。今、自分たちは芋で土を表現しているけど、例えば、陶器も土、泥ぞめも土、コットン、、、、身の回りのものが、土からあまり離れないものであれば、その場所から醸し出せれる「空気感」は「いい感じ」になるはずで、その空気を作りたい。蜜香屋ならではの、美味しくってほんわかする「なんかいい空間」。「なんかいい」「なんかちょっと違う」その「なんかちょっと」時間がゆっくりしたり、人の心が開いたり、意識が開いたりしたら、お客さんたちに何か感じてもらえるものがあるはず。そのきっかけを作りたい。
石山さん曰く、お芋を食べようかなと蜜香屋を選んでくれる人、食べにきてくれる人って、なんかちょっといいんですって。例えば、まだ焼けてなくても、そしたら焼いといて〜って散歩に行ってくれて、その間に自分たちが焼いたり。とがらずほっこりしてるんですって。蜜香屋で働いている人たちもいい感じの人ばかり。ほっこりしてる。蜜香屋の芋を食べてくれる人が増えることで、そういう人が増えて、みんながちょっと芋っぽくなっていったら、生きやすいなぁ、と石山さん。大阪を芋っぽくするのが目標!芋っぽいって今まで褒め言葉じゃなかったけど、褒め言葉になるかもしれませんね。コマキ手帖も芋っぽいコーナーにしていこうと思います。