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ここまでわかった犬たちの内なる世界#25 犬の攻撃性①〜 本物か偽物か〈前編〉

文字数 約5000字

なぜ私の犬は、一部の犬に対して攻撃的で、

他の犬に対しては攻撃的ではないのですか?

これは興味深い質問ですが、答えるのが最も難しい質問です。 

まず、あなたと暮らす犬がどこから来たのか? あなたのライフスタイルはどんなものか? あなたはあなたと暮らす犬にどのくらい愛着を持っているのか?
これらのことを分解して、明らかにする必要があります。

他のイヌになぜ、攻撃的な態度をとるのか?
ほとんどの場合、 散歩中のイヌの行動か、ドッグランでの行動について考えていることでしょう。 また、家庭での多頭飼いにも当てはまります。

この興味深い質問については、 コラムの後半で、皆さんと一緒に考察します。

※今回のコラムは、『犬は「しつけ」で 育てるな!』(築地書館)の記述と一部重複するところがあることを予め断っておきます。


犬の攻撃性の議論の糸口として、

” 体の芯まで冷えきった” 筆者の体験からお話しましょう

12月のある日の早朝。
十数頭のゴールデンレトリバーを、一斉に屋外に誘い出しました。

朝焼けの八ヶ岳を背景に、雪原を駆け回るイヌたちの幸せな姿を撮ろうと思った私が、ドアを開け放つと、イヌたちは一瞬たじろいだ様子を見せました。

風景が激変していたのです。
前夜のドカ雪のおかげで、積雪は70センチを超えています。まもなく、かれらはラッセルを始めました。次第に雪の感触の虜となり、ずんずん前進していきます。

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異変が起きました!

数頭の雄がうめき声をあげると、取っ組み合いが始まりました。イヌたちの小競り合いは、珍しくはありません。

(そうだ。この際、けんかの場面を撮影しておこう。イヌの生態記録の貴重な1枚になるはずだ)私は、事態を甘く見ていたのです。

1頭の雄犬が6頭に襲われた!

事態は、あっという間に、のっぴきならない方向に傾いていきました。

発端は、 デビーとマロンです。
デビーは、まだ3歳でしたが、その頃、1つの大きな群れのリーダー的な存在にのし上がろうとしていました。 けんかにはめっぽう強いイヌです。
 マロンは、4歳で、 デビーの所属する群れと交流はあるものの、距離を置くところがありました。 兄弟犬3頭で行動を共にすることも少なくありません。

がぶり!
デビーの先制攻撃です。 マロンの頭に咬み付きました
前足を使って完全な抑え込みにかかります。

「 やめろ、やめるんだ!」
私は、強い口調で制しました。 しかし、デビーはマロンの頭をくわえたまま、引きずり出しにかかりました。

新雪が降り積もった牧草地。 写真は、 別の日の、一斉にボールを追いかける場面。 前から2番目がマロン

まわりのイヌたちは、この動きに同調し、激しい勢いでマロンの身体に咬み付いていきます。 6頭が8、9頭と膨らんでいきます。 驚いたことに、5カ月齢のロンドまで”参戦”しています。すべて雄イヌです。


  惨憺 さんたんたるマロン…

皆さんは、リカオンの狩りをご存知でしょうか?
かれらのような野生犬は、獲物を倒す際、相手の脚や鼻面、 尻尾に咬み付き、互いに引っ張りあいます。

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