長夜の長兵衛 芹乃栄(せりすなわちさかう)
寒芹
たらふく食うて寝たのであるが、粥はとっくにこなれてしもうた。
いつもの朝より一つ余計に餅を焼く。大家の金兵衛が、店子にと振る舞ってくれたものが、これで終いになる。
ぷううと膨れた餅の脇に、七草の残りをたいたものを刻み、醤油をたらす。粥のときより、ひときわ力強い香りに、長兵衛は大きく息を吸い込む。
長兵衛さんあのな、ことづてを預かってきたよ。銅十郎が駆けこんできてつむじ風のように出ていった。そのあとに何やらとてもいいにおいがする。
長兵衛は銀兵衛に声をかけ