映画雑感まとめ④

ぼくと魔法の言葉たち

有名作でもないはずだし、あらすじを持ってこよう。

サスカインド家の次男オーウェンは、自閉症により2歳から言葉を失い、6歳まで誰ともコミュニケーションを取れなくなってしまった。失意に暮れながら過ごす父と母は、ある日、オーウェンが発する意味をなさないモゴモゴとした言葉が、彼が毎日擦り切れるほど観ていたディズニー・アニメーション『リトル・マーメイド』に登場するセリフであることに気づく。意を決した父が、オーウェンが大好きなディズニーキャラクターの“オウムのイアーゴ”になりきって語りかけると、まるで魔法のように、オーウェンが言葉を返した!数年ぶりの息子の言葉にこみ上げる涙をこらえながら、イアーゴとしての会話を続ける父。こうして、父と母、そして兄による、ディズニー・アニメーションを通じた「オーウェンを取り戻す」ための作戦が始まった!

Amazonプライム上で表示される概要

自分にとって印象的だったのは3点。

①まずはオーウェン自身がディズニーを観る回の主催者となり、人気者になれたことが喜ばしかった。「色々なことが苦手でサポートを受ける必要のある人間」という扱いではなく、得意なこと・表現したいことがある1人の人間なのだ。

②オーウェンには3年来の恋人がいて、彼の失恋まで扱われたこと。描写はされていないが、相手も支援を受けている女性で、本当に大切そうにしていた。しかし、ケースワーカーたちが同席したうえでもう終わったということを告げられたそうだ。

オーウェンにとって失恋のショックというのはとても大きいものだった。彼は母に尋ねる。「なんで世界はつらいことや悲しいことばかりなの」母親は答える「世界はそういうものなの。でも、乗り越えれば未来が開けているのよ」といった回答をする。

③オーウェンの「自立」までを描こうとしていること。両親はどんどん老いていくし、オーウェンは23歳という年齢に達する。親元を離れて一人暮らしを始めるし、映画館での職を得る。そこで本人と両親が抱える不安と希望がじっくり描写される。

自分の勉強の範囲では障害をもつ主人公の話って「学校の中で居場所を見つけた」とか、一歩踏み出したというレベルでハッピーエンドとして扱うものが多かったと思う。その中で23歳の自立というステージまで扱っているのは新鮮だったし、本質的だったと思う。

七人の侍

言わずと知れた超名作。圧巻だった。

・志村喬演じる勘兵衛が本当にカッコいい。
・侍たちが農民を守る話なのだが、農民の描かれ方が凄い。弱弱しい守られるべき存在かと思いきや、臆病で、利己的で、狡猾な存在として描かれている。
・菊千代は侍のふりをしていたが農民の出で、しかも親無し子だった。そんな彼が躍動することで物語を一段深くしている。
・後半は壮絶。臨場感ある映像は黒澤明の絶対的な権力と8台のカメラ、編集の妙技によるものだとか。

落ち武者を撃退し、見事勝利した後の光景もまた印象的だった。農家は生き生きと田植えをしているが、侍たちはまた生き残ってしまったという感じ。

ナイト・アンド・デイ

トム・クルーズとキャメロン・ディアスによるスパイアクション。活劇としての楽しさ、主演の二人の華、小粋なハッピーエンド。まさにハリウッド映画という感じだった。

ただ、自分はこの作品を物足りなく感じた。
自分が思う映画の魅力は、概ね以下の3つになる

①アクションや映像美などの視覚的快感があること
②人間という存在を深く描いていること
③未来の人間社会だったり、過去や現在の社会問題などをえぐっていること

ごく主観的なポイント

自分はどうやら②や③をかなり重視しているようだ。

そして、いかにもハリウッドな本作は①ばかりが際立って、②と③は薄っぺらかったのである。

燃えよドラゴン

言わずと知れたブルースリーの有名作。ホアー。
ハンの歓迎会で見世物として相撲エキシビジョンが行われてたの斬新で笑ってしまった。

序盤のリーはわりと悟ったようなキャラである。自分のカンフーはと問われ「無のカンフーだ」と答えるし、若者の稽古をつけるときには「don't think, feel」などと抽象的な発言を連発する。

船旅で腕自慢に絡まれたときも、「あちらの島でケリをつけよう」と小舟に乗るのを促しておいて、その小舟を海に放ってあしらってしまう。だからこの時点では、リーは無手勝流のようなところがあるのかなと思っていた。

しかし島に潜入するとひたすらにバイオレンスだった。KOされて横たわる相手にストンピング等で、容赦なくトドメをさしていく。エグい。

ストーリーとしては単純で、ハンという悪いやつがいてカンフーでやっつけるというものだ。リー以外の格闘家としてローパーやウィリアムズもいるのだが、彼らの境遇やモチベーションの描写は浅かったように思う。

クライマックスでは、悪役のハンが、最強の部下であるボロをドヤ顔で出し、ローパーと戦わせる。このボロが負けたとたんに大混乱になだれ込んでいくのだが、ボロに全幅の信頼をおきすぎじゃね?と思わされた。それ以外の場面では慎重で狡猾だったのに。

ストーリーとしてはあまり完成度は高くなく、カンフーの達人という題材がやっぱり強いのだろう。アクション映えがすごいし、謎のロマンもある。

生きる

これまた圧巻だった。黒澤明作品、ひょっとして全部見るべきなのか?

七人の侍でカッコよかった志村喬が、ここでは枯れた公務員を見事に演じている。凄い…

公務員としてお役所仕事ばかりをしていた渡辺が、胃がんにかかっていることを知って、本当の意味で生きようとあがくのだが、本当にいろいろな示唆に富んでいる。

お役所仕事批判、メメントモリ、生きる実感を得る方法。誰かのために何かを作ること。

葬式の場面で、同僚の公務員たちは会話を通じて渡辺の生き様に気づき、「自分たちも彼のように生きよう!」と盛り上がる。だが翌日には、また面倒な案件をたらいまわしにしている。そこには痛烈なお役所批判があり、また人間の弱さもえぐられている。

自分はしっかり生きたいものだ。

この記事が参加している募集