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第3話| 仏と神はどうちがう
じゃあ、仏法の「法」は?
その前に、仏法の「仏」が先だ。
仏なら知ってるよ。
じゃあ聞くけど、仏と神はどうちがう?
どうちがうって... えーっと...
知らないの? ボーっと生きてんじゃねーよ!
チコちゃんのセリフ、パクるんじゃねーよ! ダザイは知ってるの?
知ってるよ。
教えてよ。
いつか教える。
まーた今じゃないんだ。ほんとに知ってんのか?
問題には、一言で答えられるのと答えられないのがある。
ふーん、神と仏のちがいは一言では答えられないか... ま、それはそうかもね。
今、答えられることだけ言っとこう。
聞いとこう。
「仏」はブッダ= buddha の訳語なんだ。
ブッダは知ってる。
意味は?
意味?人の名前でしょ。
ちがう。目覚めた者のこと。
ボーっとしてない者のことか。語根の bdh が〝目覚める〟?
そのとおり。
じゃ、だれでも毎朝一回ブッダになるね。
それをずーっとブッダでいられるようにしたい。
寝ないの?
寝ないと覚められない。
そうだよね。じゃあ「仏法」って、〝覚めた眼で見る物事〟か。
だいたい合ってる。覚めた眼で見る物事と、その眼を得るための方法の全体。それが仏法だ。
わかった。そうすると最初の「諸法の仏法なる時節」って、〝いろんな物事を覚めた眼で見ようとする時〟?
そんなところだ。次いこう。
諸法の仏法なる時節、すなはち迷悟あり、修行あり、生あり、死あり、諸仏あり、衆生あり。
たぶん「すなはち」はスナワチだよね。迷いと悟りがある。修行があり、人は生まれ、人は死に、仏たちがいて、衆生(しゅじょう)がいる。衆生って?
「衆生」は文字通りには〝衆(おお)くの生きているものたち〟だ。もちろんトンボやミミズだって「生きているもの」だけど、ここでは一応、人間のことを指していると考えていい。
「修行」って、勉強みたいなこと?
勉強だけじゃない。
なんかがんばること?
がんばることもあるかもしれない。
がんばらなくても修行ってできる?
がんばるかどうかじゃない。
じゃなに?
オシム、知ってる?
ずっと前、日本代表の監督だったでしょ?
「わたしは常に選手から学んでいる」って言った。修行してる人の言葉だ。
(つづく)
画・富澤大勇