火の家 水の家

短歌研究新人賞に応募した作品です。

この世にはもう開かない虹がありねこの心で眠っていたい

心理的瑕疵物件が燃えていて(ごめんなさい)それは私の首かもしれず

手花火はつめたく光り〇▲□※と幼い記憶に食い込んでいく

ずっときれいな心でいたかっただけなの月にくだいたキットカット

洗濯の服からみあい離れないそのことだけが奇跡の秋だ

新しい言語で話す冬の朝 二度と会えない金色の犬

もし君が人間なら好きだっただろうさつまいものツナマヨサラダ

話しつつだんだん泣き出すその声に意識を沈めて天国回帰

この箱に二人の想いを詰めましょうお家は時に要塞となる

生きるため愛を注いでくれる手にあげるね真冬のパイの実二つ

時間って溶けるものだとわからずに過ごした日々は極彩色だ

おかえりなさい てのひらにそっとおさまれば聖なるツリーは具現の幸福

皆それぞれいろいろあるということのすべてが海だ青すぎるほどの

忘れつつ思い出すのは君の声 嬉しい時にぐーぐー鳴る鼻

そのやがて産み落とされる子どもたち火の産道をもがきながらの

年の瀬は押し寄せてくる限りなく透明に近い青いなにかが

悪いことをした日も水はおいしくて おいしいと思う ことが悲しい

傷つけてしまった分だけ傷つけば何かが返ってくればいいのに  川

まだいないけれども二人の間には確かにいるね無性の子どもが

遠景は青い生涯 どのくらい知れるのだろうあなたのことを

厨には火を絶やさない 寒くなったあなたが帰ってくるこの家の

もっともっと家族になりたい手をつなぎ二人で小さな川を渡った

命なき鶏卵二つを無駄にして焼いたベーコンエッグ  焼死体

悲しめる心が愛しい 大根もきゅうりもにんじんも千切りに

何もかも嘘で本当、本当で嘘。ジーンズはいつも逆さづり

あの日みた滝はいつでもきらめいてあなたと食べる金色のパン

君といる過去の時間が光りだすiPhoneは時空を超えるタイムマシーン

生きているのに死んでいる死んでいるのに生きている 紅葉が散った

百年の日の暮れを思う いつだって懐かしいのだあなたの匂いは

この家もあの家も燃えていることの悲しみ喜びすべてが濡れ火


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