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飲食店の息子に生まれて #上州屋 (釣具屋ではありません)

僕の実家はそば屋だ。

唐突ではあるものの、生意気にも飲食店の経営において重要なことはなんだろうか、とか考える。

出す料理の味はもちろん大事。

提供するまでの時間も大事。

接客だって大事。

お店の雰囲気も大切。

それにあれやこれも…

そんな風に考えると、始末がつけられなくなるぐらいに沢山考えなきゃならないことが出てくるし、ついつい考えたくなる。

別に飲食店の経営だけではなくて、他の何かしらの経営やら運営なんかも大変なのは、そうやって考え出したら止まらなくなるから、始末がつけられなくなるぐらいに大変だ。

僕の実家は新潟県燕市でそば屋を営んでいるのだけれど、小さな頃から特に土日祝日は物凄く忙しそうにしている両親を見てきた。

父親をはじめとした大人たちは店を切り盛りする中で、GWやお盆などの世間でいう大型連休は稼ぎどきで、忙しさの塊みたいなものをドンっと放り投げられるのだけど、それを受けて立っていたような印象。

幼い子どもごころにも、なんで忙しいのかが分かったのか。

簡単だ。

お店の前に停めてある車の量を見れば、それは一目瞭然で、休日ともなれば、お昼時は常に車が溢れんばかりに駐車してあり、それを見て実感していたのだから、理解できないわけがない。

忙しければ忙しいほどに、僕と4歳離れた弟に提供される昼食も時間が遅くなる。肉体的な体験としてもきっちりと叩き込まれている。

小さな頃には「お腹が空いた」とか「腹減った」などと文句を言いながら厨房へ顔を出しては「待ってろ!」などとどやされては押し返されていた。

小学生ぐらいになると、なんだかものすごく悲しい気持ちになって、夕飯を食べながら泣いた記憶すらある。

だが、年齢が増えてくればくるほどに、諦めをつけられるようになればなるほどに、自分の食欲が満たされないことや、自分の感情を前面に出す機会は減ったし、駐車場や厨房から見える客先にドシドシと押し寄せてくるお客さんたちの姿を見ては、そんな風に考えるのをやめられるようになった。

それがいいのか悪いのかは分からないけど。

父親も、母親も、従業員も、パートタイマーやアルバイトも、みんな懸命にお客さんに接してたし、真面目に、コツコツと仕事をするのが当然だとする態度を目の当たりにしてきた。

時代がITを駆使し始めても、飲食店には関係がないのだと思っていたし、当人たちはそんなことを考えている暇などないほどに必死なのは知っているし、時代の先端ややり方などに飛びつかなくても、自分たちが不自由なく生活できるぐらいの稼ぎを出せるのだと証明してきた。

それでも、年寄る波には逆らえないわけで、高齢化の波は僕の実家であるそば屋に対しても、もれなくやってきている中で、肉体的な面での制約をどんどん自分たちで外している。

営業時間を変更するのを始め、出前をやっていたが、徐々に電話で注文を受けて取りに来てもらうスタイルに変更したり、と自分たちの時間をどうやって効率的に負担を少なくやりくりしようかと考えながら経営していて、なんだか「さすがだな」と思ってしまった。

僕は長男で、世間的にはいわゆる「後継」的に見られて幼少時代を過ごして来たし、なんなら成人を迎えてしばらくも、そのように周りからは散々言われて来た記憶がある。

跡を継ぐとか継がないとかって話を、まったく責任も持てなない周囲がガヤガヤというのは非常に失礼な話なのだと思うのだけれど、僕の住んでいた田舎には思ったら口にしたがる人が多かった。

それが嫌で嫌で仕方なかったのもあるし、幼少時より父親からは「継がなくていい」と言われて来た。

「自分が勝手に始めたんだから」

二言目にはそう言って、話を打ち切って来た。

僕自身、その言葉を胸に秘め、周りからの雑音をその二言でシャットダウンしてくれようと気を使ってくれていたのには感謝しているし、父親なりに気を使ってくれていたのだろうと理解している。

色々と、曲がりなりにも生きて来た中で、最近考えるのは、ちょっとでも貢献できることってなんだろう。

求められているとは思えないし、やらせてくれと言ったところで「よく分からん」と返されるのは目に見えている。

だけど、僕なり弟が経験して来たことは、父親や母親が経験して来たこととは趣の異なる内容で、だからこそ活かせる内容があるようにも感じている。

少しずつ、ちょっとずつ。

また、書きます。


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#スポみら (元 #スポーツの未来に僕たちができること )オーガナイザー。 第一弾、新潟経営大学イベントの資金調達を目的に行ったクラウドファンディングは3サイトで募集し、すべて目標達成(総合達成率140%)#新潟 を #許容度の高い エリアにすべく活動中。現在は会社員をしているものの...


今回の文章に関連するオススメしたい本

これを読んで、いわゆる「後継者」ってのはだいたい窮地に立たされてるのかもなぁ、なんて感じました。経営状況が悪いとか内部組織が瓦解してるとか、そういうんじゃなくて、誰かの後にやるってのはなんでもそうだと思いますけど、決して楽なものじゃないよなぁ、と。


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ゑんどう ≒ 遠藤 涼介
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