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【六】一人の天使
それからは天使だけを生きがいに仕事をしていた。
当時は新人のまわりに見るもの全てが額縁の飾りに見えるくらいきれいだった。
そんな面影はもう皆無で、本当の恋人は思い出を残してくれるが思い出もあまり残っていない。
天使だと期待していたがそうでもなっかた。
悪魔たちからは「新人がトロい」「あのこはダメだ」なんてことを毎回聞かされる。
以前よりも空気が重く陰湿なものになっていた。
新人の見方をする訳ではないが、曖昧な言葉で前向きな言葉を返した。
その瞬間、悪魔たちは猫が水を嫌うような反応を見せた。
ポジティブが大嫌いなのだろう。
新人は周囲の空気に敏感なだけあって、陰口を言われていることに感づいた様子で、目が虚ろになっていた。
悪魔たちはそんな様子を惜しげもなく楽しんでいる様子で、煙たがられていることも気付けていなかった。
というのも、上の人と言い合いをして誇らしげに語ってくるのだ。
読書をしているのにも関わらず語ってくるので、半分聞き流していたら機嫌を悪くしてどこかへ行ってしまう。
そんなことも気付かず、他人の批判をするものだから悪魔と呼ばれるのだろう。
そんな輩が数名いるのは勘弁してほしい。
数日経って、新人が神妙な面持ちで天使と話している姿が見えた。