田中富広会長 - 文化庁が裁判所への請求に踏み切った場合は「とことん裁判に臨む。引くことはない。」- 旧統一教会・単独インタビュー(共同通信・2023年3月29日)
月初に(地方新聞各紙にも)掲載された田中富弘(旧統一教会)会長の単独インタビュー(共同通信)の詳報版が先週金曜日と土曜日に地方新聞各紙に連載されました。地方新聞には目を通していらっしゃらない方も多いと思いますので、念のため、末尾に引用します。
宗教法人としての認可取り消し(解散命令請求)のための準備作業の進捗状況は不明ですが、ゴールデンウイーク明けに韓国で行われる合同結婚式には日本からも大勢が参加するようです。銃撃事件の発生から9ヶ月が経ちましたが、泰山鳴動して鼠一匹といった結果に落ち着くのでしょうか...
安倍元首相銃撃事件後初の個別インタビュー、教団トップが語ったこと
2023/04/14 11:30
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の田中富広会長が3月下旬、共同通信の単独インタビューに応じた。昨年7月の安倍晋三元首相銃撃事件で教団がクローズアップされて以降、記者会見を2回開いたものの、個別の取材に応じたのは初めてだ。このタイミングで取材を受けた意味は。そして問題と指摘された高額献金や自民党との関わりについて何を語ったのか。約2時間に及んだインタビュー内容と、有識者らの受け止めを2回に分けて報告する。(共同通信=帯向琢磨、川嶋大介、深江友樹)
▽「改革の方向性見えてきた」
東京・渋谷の教団本部。「答えられることはお答えします」。簡単なあいさつの後、事前に伝えた質問項目に沿ってインタビューが始まった。取材を受けることにした理由は「これまでは教団改革を優先してきたが、改革の方向性が見えてきたため」だという。
田中会長の言う教団改革とは(1)高額献金問題への対応、(2)正体隠しと指摘される伝道の在り方、(3)親が信者の宗教2世への環境整備、の3点に集約されるといい、インタビューではこのうち、高額献金問題について集中的に尋ねた。
▽「事実であれば申し訳ない」
田中会長は「献金はノルマではなく信者の自由意思だ」と従来通りの考え方を述べた上で、不安や恐怖をあおり献金させているとの指摘については「事実だとすれば申し訳ないことだと思うし、徹底して改革していかなければならない」と話した。
また、過度な献金になっていたかどうかは「しっかり精査しなければならない」とし、「家庭に対する配慮が足りていない部分もあったと思う」と一部責任を認める発言をした。こうしたことへの対応として、10万円以上の献金には借金ではないことを確認するため「献金確認書」の提出を求め、トラブルを防ぐための「献金受領証」を発行するなどガイドラインを作成したと主張。昨年12月に改革委員会のスタッフが全国の教会を回って教育したという。
▽韓国への送金再開は6月に判断
この間、元信者らから返金依頼があった場合には「適切に対応している」とし、100人以上の返金に応じたとした。一方、全国統一教会被害対策弁護団から求められている集団交渉には「一人一人精査しているのでそれには応えられない」とし、押し問答となって時間がかかるので、返金を求める本人にとって不利益になっているのでは、との認識を示した。
国内で集めた献金を韓国に送金していることについて「金額は言えないが、現在は送金を止めている」という。改革の浸透具合などを見ながら6月ごろに再開の可否を判断すると表明した。
▽山上被告の母親は今も信仰
きっかけとなった銃撃事件の山上徹也被告に対してはどのように受け止めているのか。
田中会長は「教団に対する恨みによって犯罪に至ったということはちょっと距離感を感じている」と、事件直後の記者会見で語ったのと同様の見解を述べる一方、「そこまで至った状況を抱えた家庭にしっかり向き合いきれていなかった」とも話した。
山上被告の母親からは1億円の献金を受けたが、その後約10年かけて約5千万円返金したと説明。現在の状況については「相当心を痛めていると聞いている。まだ信仰を持ちつつ、教団の方と関わっている」と述べた。
▽実質的に「ノルマ」、異議相次ぐ
【有識者の見方】こうした献金を巡る受け止めや主張について、ジャーナリストの鈴木エイト氏は「教団は上意下達の組織で、献金の目標は実質的な『ノルマ』だ。2009年のコンプライアンス宣言以降も正体隠しの伝道があり、教団側の『改革』という言葉は表層的なものだ」と指摘する。
【有識者の見方】教団が返金交渉に応じていることについて、全国霊感商法対策弁護士連絡会の渡辺博弁護士は「今回の事件や報道によるもので、自主的に救済を図っているわけではない。集団交渉には応じていないのは、問題が表沙汰になり、解散命令請求の材料となってしまうことを恐れているのだろう」と分析した。
▽断絶方針「信者の迫害に」
インタビューのテーマが、自民党による関係断絶方針に及ぶと、田中会長は「言いたいことがたくさんある」と述べた上で「遺憾の思い」「非常に衝撃的な出来事」との言葉を並べた。
田中会長によると、教会として借りている建物の大家から「政府が関係断絶と言っているんだからおたくとは関係を持てない」と言われて契約解除を迫られたり、式典で使うお供え物の果物を売ってくれなくなったりした。
また、会社を辞めざるを得なくなったり、離婚を迫られたりするなど、信者にとって「信仰の迫害」が起きているとし、「教団が受けた被害はあまりにも大きいと感じている」という。
▽支持表明「迷惑でしょう」
そもそも政治とのつながりについてはどうか。最初は「何回も言っているように、友好団体が推進していることなので回答を差し控える」と話していたが、質問を重ねると徐々に口を開いた。「私たちのビジョンと一致している議員を応援するのが基本で、自分たちの主義・思想と一致する考えを持った人を応援するのは当たり前のこと」と強調。「自民党を何とかしようとか、政府に食い入ろうとかそういう発想で動いているわけではない」と述べた。
統一地方選では「教団として何かする、応援することはない」と明言。一般的に宗教団体が政党や個人を応援することは問題ないとした上で「今は(支持を)表明されても迷惑でしょう」と自虐的に語った。
▽「今後も政治家とつながる」と懸念
【有識者の見方】こうした政治とのつながりに対する主張について、渡辺弁護士は「元々政治家の支援は表だってやっていない。今後も陰に隠れていくらでもあり得る」と懸念を示した。鈴木氏は「統一地方選を機にインタビューに応じ、教団への批判を封じ込めるよう政治家をけん制する意図もあるのではないか」といぶかしんだ。
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後編では、文化庁による質問権行使や昨年成立した不当寄付勧誘防止法への受け止めなどを紹介する。
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2023/04/15 11:30
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の田中富広会長は共同通信のインタビューで、解散命令請求には徹底抗戦すると表明し、昨年成立した不当寄付勧誘防止法を巡り「強烈な偏見だ」と反発した場面もあった。インタビューは宗教2世に対する見解や記者会見中のファクス問題、自身の進退についても及んだ。(共同通信=帯向琢磨、川嶋大介、深江友樹)
▽「引くことはない」
文化庁は昨年11月以降、宗教法人法に基づく質問権を5回行使し、解散命令請求を視野に入れた調査を進めている。田中会長は調査に「誠実に対応している」としつつ、同庁が裁判所への請求に踏み切った場合は「とことん裁判に臨む。引くことはない」と宣言した。
教団としては質問権行使そのものを「違法」と認識していることから、田中会長は「質問に完全に答えない道もあった」と説明。「しかし無視するのもどうかということで、答えている」と不満をにじませた。
一方、解散命令請求に至れば教団の存続にかかるだけに「そうならないことがベスト。良い情報があれば早く知りたい」と本音も漏れた。
▽長期戦の可能性も
田中会長が徹底抗戦の構えを見せる背景には、調査から4カ月が過ぎても解散命令請求の可否を判断できていない文化庁の苦戦ぶりがある。ある関係者は「絶対に勝てる確信を得られるまでは請求に踏み切れない。長期戦になるかもしれない」との考えを示している。
一方で文化庁内には「献金などに関してこれだけ多数の被害の訴えがあるのは旧統一教会くらいだ。証拠が積み上がれば請求は可能で、裁判に勝つことも不可能ではない」との声も。請求が実現するか、その場合裁判所はどう判断するのか、状況は予断を許さない。
▽マインドコントロールに怒り心頭
不当寄付勧誘防止法は教団による被害を念頭に政府が急ごしらえで提出し、スピード成立した。田中会長は、同法は教団が進めてきた改革に一致するとして「私たちの献金に対する取り組みが障害を受けることはないと思っている。しっかり向き合って対応していく」と述べた。
しかし、「懸念がある」と切り出すと、立法過程でマインドコントロールという言葉が議論の的となったことへの見解を一気にまくし立てた。「学術的に評価されているものではなく、(宗教や信仰を)理解できない心を整理するためにマインドコントロールという言葉を使う」。強い口調で「宗教に対する強烈な偏見だ。この考え方が(法律の)裏に潜んでいる」と訴えた。
「まだ裁判で認められていない」「非常に危ない言語」と批判を重ねた上で、「これを読んで」と記者に一冊の本を差し出した。タイトルは「間違いだらけの『マインド・コントロール』論」。教団の友好団体幹部が書いたものだった。
▽新法の実効性に「疑義」
【有識者の見方】上越教育大の塚田穂高准教授(宗教社会学)は「障害にならない」との発言について、「同法の実効性に疑義があることを教団側からも示す形となった」と指摘。田中会長の「マインドコントロール」への反論については、「そう指摘されるような実態があったことこそが重要で、学術的な評価に論点をずらしている」と批判した。
▽養子縁組や虐待対応については
インタビューは他の項目にも及んだ。
教団が「美しい伝統」と表現した養子縁組に関しては「報道され、厚生労働省と向き合う中でいろいろ考えさせられた」とする一方、「教団が示唆し主導しているわけではなく、お互いが養子縁組したいという気持ちであれば止める立場でもない」と従来通りの見解を繰り返した。
厚労省は昨年末、宗教を背景とした児童虐待への対応方針をまとめた文書を公表。田中会長は「厚労省が全国にちゃんと通達しておくことは必要なこと」と受け止めつつ、「親の信仰に基づいて教育する権利は国際的には認められている。そこにまでメスが入ると大変なことだ。宗教家の視点も聞くべきで、今回の新法(不当寄付勧誘防止法)にも言えること」とけん制した。
▽ファクスで「相当叩かれた」
親が信者の「宗教2世」は5万人を超えており、ここ数年で2世の状況把握を進めていたところに今回の問題が起きたという。苦しい思いをしている2世がいるとの指摘を受け、一定の教育を受けた「認定相談員」を全国の教会に設け、「ずいぶん2世たちの心は安定してきた」と述べた。
教団側は昨年10月、両親が信者である小川さゆりさん(仮名)が日本外国特派員協会で開いた記者会見当日、中止を求めるファクスを送付した。小川さんは会見中にファクスの事実を把握し、会見の続行と教団の解散を涙ながらに訴え、教団側は批判を浴びた。
田中会長はファクスを「事前には知らなかった」と釈明し、協会側に怒りの矛先を向けた。「(事前に届いていたのに)いかにも今分かったかのように、記者会見中に持ってきた。だから、わが教団はひどい教団になった。私もびっくりした。相当叩かれた」
協会側が本人と話し合う時間は十分にあったとして、「ファクスを送ったことは問題ないと思っている」と主張した。
▽「責任は会長が取るべき」と2世批判
【当事者の見方】小川さんは「教団活動に参加していない2世も多い。第三者を入れずに内部だけで相談に乗りますよというのは、ずれている」と疑問視し、2世ら被害者への謝罪と返金を優先すべきだとした。ファクスについての発言については「あまりに非常識で信用できない。記者会見を止めようとした責任は、トップである会長が取るべきではないか」と非難した。
▽自身の進退、教団の今後は?
5月7日には韓国で合同結婚式が予定されている。開催規模や方法、献金を求めることはこれまで通りとの見通しを説明。献金は日本に納めるため、韓国に持ち込まれることはないとした。
インタビューの終盤、引責辞任を考えたことがないか問われると「もちろんあります」と即答。「全然固執する意思はない。役員会で辞めてくれと言われれば、明日にでも辞める」としつつ、「会長が辞めれば片付く問題ではない。教団改革を推進していけなければならない」と語った。
▽「まずは被害に向き合うべきだ」と識者
【有識者の見方】全体を通して、塚田准教授は「田中会長の発言には強い『被害者』意識がにじんでいるが、発端は教団側が引き起こしてきた問題だ」と批判する。教団は、「改革」をアピールする前に、過去の被害の救済や回復にきちんと向き合うべきだと指摘した。
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