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10年前に撮った成人式の写真を眺めながら、ひとりごと

自部屋に飾り続けている一枚の特別な写真

自部屋に飾り続けている一枚の写真がある。10年前に成人式を迎えた際の集合写真だ。当時は成人式になんのありがたみも感じられず、直前まで参加を拒んでいた。当日朝は鉛のように重たい身体にムチすら打てない状況で、とにかく美容院へ搬送されるかのごとくたどり着いた。着物の柄も最後まで気に食わなかった。その後は駆け足で成人式へむかい旧友らと写真撮影や談笑を交わし、ほどなくして釜石市民文化会館(今はなき当時の会場)のクッション性高い席に着座した。式の記憶はほとんどない。唯一、同じ高校だった友人が「俺は日本一のなんとか、世界のなんとかになります」とマイク片手に勢いよく語り会場が沸いたことは鮮明に覚えている。その後は写真館へ運ばれ(当日、たまたま予定が空いていたと後日聞いた)撮影し、お着物から洋服に着替えて同級会へ急いだ。

この同級生集合写真は2013年の上京前に友人から頂いた。それ以来、目に入りやすい位置に置いている。それにしても、釜石東中同窓生が二度と集まれなくなる日がくるのはあまりに早かった。この写真をじっと見つめると、あっち(この世ではないところ)にいったとき、同級生やあの時(3月のあの時間)すれ違ったひと、突然会えなくなった人たちから声をかけられるような気になるのだ。すると、もうひと踏ん張りしようかとなる。「突然時間が止まったあの子やあい人たちに申し訳なくならねぇのが?いいのがそれで?」と、自分に問うてしまう。もちろんそれだけを頼りに過ごしているわけではないのだが、自分にとっては一枚の写真が特別な存在になったことには変わりない。

失って初めてわかるありがたさ

残念ながら、写真館でべっぴんに撮っていただいた(ヘアメイクも素晴らしく仕上げていただいた)奇跡の写真は2ヶ月後の2011年3月11日にお別れすることになる。お着物も。失って初めてわかるかりがたさ、とはよくいったものだがとりわけあの時の写真は記憶があるなかで『記念写真』として最高のアルバムだった。あれほど文句をこぼした薄紫の親戚から借りた着物もたまらなく美しく感じられたがもう二度と袖を通すことはできない。当時の様々な環境に、感謝してもしきれません。

成人の日を前に、30才の私が思うこと

明日は成人の日。全国、県内でも中止や延期のほか、オンライン形式となってしまった地域はあげるときりがない。

これらを受けて本人らはどんな気持ちなのだろうか・・・と想像しても、正直わからない。ごめんなさい。とんでもなく泣きたい人もいれば、内心落ち着いた人もいるだろう。

成人式から10年経ち30歳になった。当時はみえなかったであろう景色が頭に浮かぶ。それを綴ってみたい。

それは、晴れ姿を待ち望んでいた親御さんの肩を落とす姿だったり、この日のために仲間たちと事前に幾度も話し合いを重ね準備をしてきた門出を迎える本人たちだったりする。

同じくして、自分の仕事柄もあるだろうけれども美容師理容師さん、着物屋さん、写真館さん同窓会の予約が入っていた飲食店さんや行政の方がどれほど複雑な気持ちなのかというところまでも想像してしまう。

成人式が執り行われないことによる経済損失準備を重ねてきた人たちの心のショックはどれほどかとおもうと筆舌に難い。

今のご時世にならなければわからなかったことだが、10年経ち、当たり前のように成人式参加したものの、ハレの日を迎えられる事や迎えられないことをじっくりと考えてしまった。

誰かに手を差し伸べる難しさ

困っている人の母数が増えるほど、全員に"等しく"手を差し伸べることの可能性へは遠ざかる。問題の本質も見えにくくなる。誰かを傷つけないように行動することが難しくなる。しかし、自分で何ができるかを考えることはやめたくない。かといって、自分ができることはたかがしてれている。そもそも「おいお前、今やるべきことは他にあっぺだら」と私の心がボヤいている。そうだったわ。

もどかしい気持ちもあるが、私は自宅でひっそりと心の中で新成人たちを祝いながら、内省する時間としたいと思う。(がんばれ年度末)(がんばろう年度末)

最後に

少しでも早い終息を願い、最前線で働く方々と、窮地になりながらも働き続ける方々、いつも力を与えてくれる写真とそれらを贈ってくれた友人らへ、あらためて心からの感謝を。

門出の日を迎えた方々のこれから歩む日々が、素晴らしいものとなりますように。

最後までお読みいただきありがとうございました。

そういえば、これはひとりごとでした

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土橋 詩歩/どばしほ
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