『ATTENTION SPAN -デジタル時代の「集中力」の科学-』を読んで
「現代において集中力は最も重要な資産である」
スマホやSNSの普及により、我々はひとつのことに集中し続けるのが難しい時代になった。
実際に15年以上にわたって我々の集中持続時間は年々減少しているというデータがあり、現在はパソコンの画面を見ている平均的な集中持続時間はわずか44秒に過ぎないことがわかっている。こんな社会でどうすれば集中力を高めることができるのか、それについて集中力研究の第一人者であるグロリア・マーク氏が解説したのが本著である。
私達は1日の中で発揮できる集中力に限りがある
集中力は1人1人異なる大きさのタンクの中に資源として蓄えていて、寝ると回復し、1日の中で使用できる量に限りがある。このタンクが切れると頭がうまく働かなくなり、理解力が低下して凡ミスが発生しやすくなる。
この集中力を浪費してしまうNG行動がある。それは「集中を向ける対象を次々と切り替えること」である。
特に筆者は仕事中にメールやチャットをチェックする行為を非常に問題視している。
筆者が32人を対象に行なった実験では、仕事を中断する原因の1位がメールやチャットをチェックする行為であり、1日平均77回もチェックを行っていることが明らかになった。
限りある集中力を浪費しないためにこういった行為を避ける必要がある。
集中力がピークなときに大事な仕事を行う
1日の中で集中力のピークは11時頃と15時頃に来る。
一週間の中ではピークは月曜日に来る。
これらの事実は、休憩の後、しばらくすると集中を発揮できる時間が来るということを表している。
11時は、睡眠をとった後しばらくしてお腹が少し空いてきたくらいの時間だし、15時はお昼休憩して少し経ったタイミングである。
月曜日は土日の休憩のあとである。
このように、人間は休憩の後に一番集中力を発揮できる時間が来る。
マルチタスクではなくシングルタスクで仕事をこなす
私達の脳はもともとマルチタスクに向いていないどころか、ひとつのことにしか集中力を向けることができないようになっている。
マルチタスクができていると思っている人は高速で集中する対象を切り替えているだけであり、これは集中力を浪費するNG行動である。そんな人はひとつのことに集中することができれば、より生産性をUPできること間違いない。
しかし散歩や歯磨きなど何も考える必要がないことの最中であれば考え事などしても問題ない。むしろ散歩中は良いアイデアが浮かびやすいという実験結果もある。
キリの良いところで作業を中断する
キリの良いところで作業を中断することは非常に集中力の節約になる。キリのいいところで作業をやめれば、そのことを気に掛ける必要がなくなるため、一旦頭からそのことを切り離すことができる。一方キリの悪いところで作業を中断すると、頭は無意識にそのことを思い浮かべてしまうため、集中力のタンクが浪費されてしまう。
Q.どうしても作業の途中で中断しなくてはならないときはどうすればいいか?
A.次に自分が手を付けるときになにをすればいいかざっくりとメモを残しておく!
そうすることで自分の頭から中断する作業を切り離すことができる。今日から実践してみよう。
集中力が切れてきたら、休憩を取って集中力を回復しよう
集中力は睡眠などによって回復することができる。
そのときのコツは完全に頭の中からしなくてはいけない仕事の内容を忘れること。そのために先ほど説明したようにキリの良いところで作業を中断することが重要になってくる。
また、頭の集中力が切れたとき、体の体力は残っていることが多い。なので、頭を空っぽにして運動に熱中するのも集中力を回復する方法として有効である。
しかも運動は前頭葉機能を向上する唯一のメソッドである。ぜひ生活に取り入れてみよう。
短時間で集中力を回復する方法としては、散歩することや自然に触れること、頭を使わないゲームや動画を見ることが紹介されている。自分に合う頭を使わないリラックス方法を見つけよう。
毎日仕事を始めるときに1日の目標を明確にする
たったこれだけのシンプルなことで人間は自分の目標を意識するようになり、いつもより生産性が上がったという実験結果がある。ただし、効果はこれだけだと持続しない。人間というのはすぐに目標を忘れてしまう生き物であり、実験でも生産性が上がったのは目標を明確にしてから1時間の間だけであったとのことだ。そこで、1日の目標を付箋に書いて貼るなどして、何度も目標を思い出すことができるようにする必要がある。
Macにはスティッキーズという便利なアプリがあるのでおすすめである。
おわりに
ここまで、集中力を高める方法について説明してきた。
現代社会では、人々の注意を引き付けるために多くの企業がお金をかけ、優秀なプログラムを用意して工夫を凝らしている。つまり、人々の注意を引き付けることがお金になる時代である。
その中で我々が高い集中力で自分の仕事に取り組むことの価値は年々上がっている。
何に自分のお金をかけるかを考えるように、何に自分の集中力を使うのか慎重に考えるべきというのが、本書を読んだ感想である。