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不況期の営業戦略〜問題解決型営業から「啓発型営業」への転換〜

不況期においては、従来の「問題解決型営業」だけでは不十分であり、「啓発型営業」への転換が求められます。啓発型営業は、顧客が気づいていない問題に焦点を当て、その課題に対する新たな視点を提供するアプローチです。まず顧客の潜在的な課題を探り、問題を明確化するための論点を設定します。そして、責任者に直接アプローチし、データや調査結果で自分たちの主張を裏付けます。さらに、営業組織全体がこの手法に順応できるよう、適切な教育とトレーニングが必要です。このような戦略で、厳しい経済状況下でも効果的な営業活動が実現できます。


1. 不況期に求められる即効性のある営業手法

景気が後退し、企業の予算が縮小する不況期において、営業活動の方向性は大きく見直さなければなりません。単なる売り込みや製品提案では、顧客の関心を引くことは難しく、従来の「問題解決型営業」だけでは十分な効果を期待するのは難しい時期に突入します。このような経済環境では、即効性のある営業手法が求められます。問題解決型営業は、あくまで顧客の課題に対して製品やサービスでアプローチする手法ですが、経済的に厳しい状況では、顧客の意識や価値観そのものに変化をもたらす営業アプローチが重要になってきます。それが「啓発型営業」です。


2. ソリューション営業と啓発型営業の違い

ソリューション営業は、顧客の既存の問題に焦点を当て、その解決策を提供する手法です。問題解決型として非常に有効ではありますが、問題自体が見えにくくなっている不況期には、そのアプローチが限界を迎えることがあります。顧客は「今すぐ解決しなければならない問題」よりも「今後どうなるべきか」という長期的な視点を求めがちです。

一方で、啓発型営業は、顧客が「気づいていない問題」や「解決すべき課題」に光を当て、顧客の思考を刺激し、顧客が自ら変革に気づくように仕向けます。この手法では、顧客の視点や価値観に大きな変化を促すことを目的とします。そのため、単に製品やサービスを提案するのではなく、顧客に「新しい気づき」を与えることが本質となります。


3. なぜソリューション営業では足りないのか

不況期において、従来のソリューション営業が足りなくなる理由は、顧客自身のニーズが変化しているためです。従来の営業では、顧客の明確な課題を解決するというアプローチが主流でした。しかし、経済の不確実性が増す中で、顧客は自社の短期的な問題解決よりも、長期的に持続可能な成長を見据えたアドバイスを求めるようになっています。そのため、単なる問題解決型営業は、顧客の関心を引くことができない可能性が高くなります。

加えて、不況期の顧客は資源や時間が限られているため、目の前の問題を解決するだけでなく、将来にわたって価値を生み出す方法を提示されることにより、大きな魅力を感じるのです。そのためには、啓発型営業が不可欠です。


4. 啓発型営業の実践ステップ

啓発型営業を成功させるためには、次のステップを踏むことが重要です。

1. カギを握るテーマを探り出す

啓発型営業の第一歩は、顧客がまだ認識していないが、解決するべき課題を見つけることです。顧客が気づいていない問題を指摘するためには、業界の動向や競争環境、市場の変化などを深く理解し、今後起こりうるリスクや潜在的な機会を顧客に示す必要があります。これには、徹底した市場調査やトレンド分析が求められます。

2. 顧客の目を開かせる論点を設定する

問題が顧客にとってどれほど重要であるかを認識させるために、感覚的に理解できる論点を設定します。この論点は、顧客が現在直面しているビジネスの核心に触れるものであることが重要です。顧客にとって、問題が「今、解決しなければならない事柄」であると感じさせるための洞察を提供します。

3. 顧客企業の責任ある人物に論点をぶつける

顧客企業の上層部、または意思決定権を持つ人物に直接論点を提起します。この段階では、単なる営業担当者が提案するのではなく、経営層と対等に議論できる立場で問題を共有し、価値を感じてもらえるようにします。


5. 現状調査で自分たちの主張を裏づける

啓発型営業では、データや調査結果をもとに自分たちの主張を裏付けることが重要です。顧客が認識していない課題を指摘する際、単に理論や予測を述べるだけではなく、信頼性の高いデータや事例を使って、問題の深刻さを示さなければなりません。このプロセスで、顧客が自らの意思でその課題を解決すべきだと認識するように仕向けます。


6. 提案する相手を慎重に選ぶ

啓発型営業では、適切な人物にアプローチすることが成功のカギとなります。企業の決定権を持つ役職にいる人々、またはその課題に深い関心を持っている人々に焦点を当てる必要があります。相手が理解しやすいように、彼らの視点で問題を説明し、どのように自社がその課題を解決できるかを明確に示します。


7. 営業組織は新しい手法に順応できるか

啓発型営業を実践するためには、営業組織全体がこの新しい手法に順応できるかどうかがポイントです。営業チームがこの新しいアプローチを理解し、実行できるようになるためには、適切なトレーニングやナレッジシェアリングが欠かせません。営業リーダーは、チームに啓発型営業の価値と実践方法を徹底的に教育し、実践的な成功事例を共有していくことが重要です。


まとめ

不況期における営業戦略は、従来の問題解決型営業から「啓発型営業」への転換が必要です。顧客の潜在的な課題を引き出し、未来を見据えた解決策を提案することで、信頼関係を構築し、成長の機会をつかむことができます。このアプローチを実践することで、厳しい経済環境下でも持続可能な営業活動を実現することができるでしょう。

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廣石雄大/京都在住の経営者
興味を持っていただいてとても嬉しいです!現代社会やビジネスの現場で日々奮闘されている皆さまの思考が整理され心が少しでも前向きになれるような発信をしていきたいと思っています。応援よろしくお願いします!