読書感想文を書くのに必要なもの(798文字)
人生は往々にして予想のつかないものである。読書感想文の書き方的な発言を随所で見かける時期が来たわけだが、「読書感想文の呪い」を解くべく、自ら読書感想文を書くことになるとは。
さて、題材に選んだ小説は伊坂幸太郎・著「オーデュボンの祈り」である。なんてことはない。「読書感想文と言えば紙の本だな」と見た自分の本棚にあった本が、つい最近趣味で始めた楽器の教本とバンドスコアを除くと、これと「PSYCHO-PASS(深見真・著)」しかなかったのだ(電子書籍派のため)。さらに言うと、この本は親から処分を頼まれた小説数冊の内、唯一、状態が悪く買取に出せなかった本だった。
まあ、「読書感想文を書くために特に関心のあるわけでもない本を読む」という行為も読書感想文らしくていいのではないだろうか。
作中にある主人公の亡き祖母の「お前は逃げるよ。」という発言にはドキッとした。読書感想文を書くべく本を読んでいたからだろうか、真っ先に思い浮かんだ逃げたことは「読書感想文」だった(あらすじを書いて怒られて以降書かなくなった)。なお、逃げたことに対する反省の気持ちは微塵もない。
通読した感想をいうと、特に何も、という感じである。もっと正確に言うならば、「どういう感想を持てばよいのかわからなかった」。結末もわかりづらかった。
そういえば、かつても同じことを感じ、読書感想文が書けず苦しんでいたことを思い出した。しかしかつての自分とは違う。この余白のない読書感想文を見れば明らかだ。惰性とはいえ、歳を食った分、自分語りのネタは増えた。ということは、読書感想文を書くのに必要なのは、惰性でも年月を生きることなのでは、と思わざるを得ない。そして、勢いで執筆できるWordなどの文字入力ツールの恩恵も無視できないだろう。
何はともあれ、読書感想文、俺はもうお前なんて怖くないのだ。
あばよ、読書感想文の呪い。あばよ、オーデュボンの祈り。