モアナ2のマタンギがアラフォー女に刺さりまくった話
今更ながら「モアナと伝説の海2(モアナ2)」を見に行ってきました。
また見にいきたいです。
しかしネットを見ると、世間の反応はイマイチで・・・
「ストーリーが単調」
「子どもが前作の方が良かったと」
「モアナの前回からの成長があまり見られない」
わかります。モアナ2は、子供向けの映画でもなく、モアナの成長物語でも、ファミリードラマでもありませんでした。
社会人ドラマです(あくまでも私の感想です)。
アラフォー女は痛いほど共感できる社会人ドラマです。
は?って思われる方が99%くらいだと思いますので、解説します。
前作「モアナと伝説の海(モアナ1)」では、勇気と正義感に溢れる可愛いモアナが、好奇心と若さを力に未知の世界に飛び込んで行き、全人類に応援されながら成功を収めるという話でした。
そうです。あの頃(モアナ1)のモアナはピチピチの新入社員
失敗しても大丈夫だよ!成長してるよ!
君はみんなのヒーロー!周りの人間は全員君の味方だよ!
周りから聞こえる声は、励ましと褒め言葉ばかり。突き進めば困っても海とかマウイが助けてくれてなんとかなりました。
さて時は経ち、今作「モアナ2」では、モアナはもはや新入社員ではなく、責任のあるタウタイ(チームリーダー)となりました。周りを見渡してみれば、上司もロールモデルもいなくて、励ましてくれるのは両親だけ。
そして、プロジェクトを遂行するチームメンバーは
・スキルは高いが勝手に計画を変更するマイペース女子(ロト)
・人当たりはいいが推し活にエネルギーを注ぎ込む男子(モニ)
・知識・経験は豊富だが年下の言うこと聞く気ゼロのおじさん(ケレ)
そして、出張(出航)前に引き留めようとする可愛い子供(シメア、妹)。
でも、私がここで投げ出してはいけないわ!私がやらなきゃ誰がやるの?
と、プロジェクト計画も中途半端、フィジビリティも怪しいけど、とりあえず行っちゃえーーー!!!と出発してしまうモアナ(心配)。
持ち前のポジティブマインドと粘り強さで社内のイザコザ(カカモラ)を納めつつ、大きなプロジェクト(巨大な貝)に立ち向かおうとするモアナ。しかし上手くいかず、モアナは負のスパイラル(洞窟)に陥ります。
チームリーダーとして最重要案件(モトゥフェトゥ)に向かうどころか、脇道に逸れてスランプに陥り、自分さえも救うことができなくなってしまったモアナ。
そこに現れたのが、ライバル大企業(ナロ)に仕えるバリキャリ先輩女性(?)マタンギです。
弊社のスター社員(マウイ)をバッサリと切り捨てた彼女は、モアナに対しても酷い仕打ちをするかと思いきや、まさかの「先輩女性」としての的確なアドバイスをしてくれます。
モアナにマタンギが歌いかける「迷え!(Get Lost)」の歌詞、日本語歌詞も素敵なのですが、オリジナルの英語の歌詞がこれまた素晴らしい。
モアナ2のサウンドトラックを担当したのはディズニー初の全員女性のチームです。「迷え!(Get Lost)」は彼女たちの情熱と願いを込めた「迷える女性の背中を押す歌」になっています。
迷え!ってすごいアドバイスですよね。でもこれは、アラフォー女には分かりみがあったりして。
女性は若い時は周りにチヤホヤされながらぐんぐん登って行くことができるのですが、いずれその先の梯子が外され、辿るべき道が目の前から無くなる(迷いながら次の道を探さなくてはいけない)時が来るんです。
そして、マタンギがアラフォー女のしんどさをガチ表現したのがここ。
刺さります、刺さります。もうマウイの釣り針のレベルではなく刺さります。
マタンギはマウイをやっつけられるほどの実力があり、若い頃はモアナのようにガムシャラに頑張って実績を積み重ねてきた女性だと思うのです。
でも今は不本意な状況から身動きができず、モアナに上司(ネロ)をやっつけて、とか言ってますけど、歌の中では自分と同じ道をモアナが辿らないようにって励ましてくれてるんです(泣)。
・・・泣けます。
マタンギ様を「モアナと伝説の海2」の影の主役、いや「師匠」と呼ばせてください!
「私みたいになっちゃだめ」って自虐的になりながらも、あなたにはチャンスがあるんだよ、周りや前例のことなんか気にしないで、迷いながら自分の道を自分で見つけなさい!ってかっこよすぎます、師匠!
なんとか危機を脱し、部下たち(ロト、モニ、ケレ)も互いを助け合うようになり、臨時職員(カカモラ)も馴染み、チームの結束力も強まりつつありましたが、モアナはプロジェクトの正念場で絶対絶命のピンチに陥ります。
もうだめだと思ったその時、マタンギに言われた「必ず別の道がある!(There's always another way)」の言葉を胸に、モアナは覚悟を決めて海に飛び込みます。
海底まで潜ってモトゥフェトゥの呪いを解いたのはモアナでしたが、一番美味しいところ(皆の見ているまえで島釣り上げる)を持っていったのはやっぱりスター社員(マウイ)。でも今回は、彼女がリーダーとしてプロジェクト(モトゥフェトゥを甦らせる)を成功に導いたのです。
マタンギ師匠万歳!!!
思い出しました。人生のあらゆる場所で、あらゆる場面で、数えきれない先輩女性の方々が励ましやアドバイスをくれて、それが自分を支えてきてくれてきたことを。私にも、マタンギ師匠がいたんです。
「これをやってれば上手く行く」のない女性の人生。その中で迷いながら進んでいる私を「こうしなさい」とは言わずに背中を押してくれた先輩方は、心の中で「迷え」って言ってくれていたのかも。
女性が活躍できる社会に必要なものって?
女性の社長を増やすこと?男がもっと家事育児すること?
でもそれって色々な軋轢も生んでしまうよね。
マタンギ師匠のような先輩女性が、恐れて前に進めない後輩女性を掬い上げて、引っ張って、後押ししてくれること。これが当たり前になれば、本当に女性が活躍し続けられる社会が作れるんじゃないかな、って思いました。
無事モトゥフェトゥの島は復活し、マタンギはこれでパワハラ上司(ナロ)から解放されたのかと思いきや、最後のクレジットで登場した時に、彼女はナロの部下のままでした。ナロから自由になるためにモアナを助けたんじゃなかったんでしょうか(泣)?
若い頃は絶大なサポートをしてくれた上司の即戦力として頑張ってきたのに、徐々に束縛するようになりしまいにはパワハラ化しつつある・・・。
その状況を変えられない自分に耐えながら働き続けるマタンギに共感しか感じなかった私はここで映画館で1人号泣しました(周りの方すみません)。
この「めんどくさいアラフォー女が悩める若い女子をサポートし成功に導くストーリー」をディズニー映画に織り込んじゃったの誰なんだろ、と思って調べてみたら、脚本家はジャレッド・ブッシュ(Jared Bush)とダナ・ルドゥ・ミラー(Dana Ledoux Miller)という方でした。
ジャレッド氏は「ズートピア」で学歴や出生などのガチガチの偏見問題を動物の世界で表現した天才的な方です。ダナ氏はポリネシア系移民としてアメリカで苦労してキャリアを積んできた方らしいですが、こういうことを言ってます。
女性って頑張ってキャリアを積んでいくと孤独になって、男性とか他の女性と繋がらなくてもいいやってなりがちなんですが、コミュニティーとして「女性が女性を導く」スタイルで成功を目指す視点が大事なんだなって改めて感じました。無力のアラフォー女の私にも何かできることがあるのかも。
次作(モアナ3?)はモアナとマタンギのストーリーになりそうで今から楽しみです。
その頃には今回「面白くなかった」なんて言ってた若い子たちがモアナ2を見直してマタンギに共感しちゃうんだろうなー、なんてね。