シリーズA投資|Quollio:データインテリジェンスの推進
DNX Ventures(以下、DNX)は、株式会社Quollio Technologies(以下、Quollio)の総額約7.5億円のシリーズAラウンドに、リード投資家として追加出資させていただきました。
本ラウンドは、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ(プレシリーズAラウンドをリード)、Incubate Fund(シードラウンドをリード)との共同出資となります。DNXも含め、Quollioにこれまで伴走してきた既存投資家が大きく支持した点で特徴的なラウンドとなりました。
本稿では、本ラウンドに至るQuollioの歩みを少しばかり振り返ってみたいと思います。(Quollioが提供しているサービスや、メタデータとは?などについては、同社プレスリリースや、DNXの過去のNoteをご覧ください。)
シード期で大事にすべきこと
前回ラウンドのクローズから間もなく、来るべきシリーズAの姿について松元さんと議論しました。Quollioが挑むエンタープライズ企業のデータのペインは、経営課題としても顧客の組織的にも複雑であり、登る山が高いだけでなく、クネクネした道になる予感がありました。この山を登り切るには、長く勝たないといけません。短期的に背伸びして、シリーズAの瞬間だけ良いシェイプにするために、見かけだけの顧客数やMRRを積むとしたら、本末転倒です。目標とする一定の数字は置きつつも、意識としては数字の多寡に拘らず、数字の中身や質、得られた検証の深さを重視する(DNXは評価する)趣旨の目線合わせをしました。
顧客にとって何者になるのか
エンタープライズ顧客の大切なデータに貢献するために、気の利いたプロダクトさえあれば利用してくれるほど甘くはありません。技術的には既に多くのグローバルのSaaS企業が様々なモダンなデータアプリケーションを提供しているにも関わらず、日本のエンタープライズ企業のデータ活用を困難にしている因子や背景は何か。顧客によって事情は様々ですが、統合データ基盤を企画設計から活用刷新に至るどのようなフェーズの顧客のどのチームにどのようなアプローチをとるべきか、Quollioの仮説は日々洗練されていきました。Quollioのチームの卓越した知見と地道な活動量と相まって、シード期における優良な顧客群のフィードバックの量と質の価値を示してくれました。その過程を通じて、顧客にとって、ただのVendorでなくTrusted AdvisorかつBusiness Partnerとしてより大きな存在になったように思います。
顧客と向き合うチームのありかた
シード投資時のQuollioは、国際色が豊かで(今でも豊かですが)若く優秀なタレントの揃った十分に素晴らしいチームでした。メタデータの知見とデータオペレーションに秀でたエンジニア、セールス、コンサルタントが揃っており、この雰囲気のままチームを拡大しても非常に楽しみな印象でした。そして、さらに豊富な業界知見と経験を持つシニアメンバーが各機能のキーロールとして続々とジョインしました。エンタープライズビジネスを成功に導く上で考慮すべき事は、顧客のビジネスモデルはもちろん、データフロー、データ基盤の成熟度やリテラシー、組織のデザインやパワーバランス、予算規模やサイクル、など挙げればキリがありません。人材の多様性がさらに立体的に多方に厚みを増す事で、取り得る施策の手数や細部の予見が強化され、Quollioらしいチームの成熟を見せました。
シリーズAの現在地
Quollioは、約1年前まではメタデータを管理するデータカタログ「Quollio Data Catalog」を提供する会社でしたが、現在ではデータカタログは重要な1機能と位置づけられ、メタデータを基点にした広範なデータインテリジェンスソリューションである「Quollio Data Intelligence Cloud」を提供する会社に変貌しました。エンタープライズ企業の決して期間の短くないデータプロジェクトを通じてQuollioのデリバリー経験値も積み上がっており、同時にそれ以上に顧客パイプラインが増えてきています。ビジネスの重く大きな車輪が回り始めた今、顧客のバーニングペインに対して、Quollioのデリバリーを再現し、スケーラブルに加速させるタイミングが来たと考えています。
私たちがアントレプレナーに求めるもの
シリーズAにおける投資家の期待値は各VCの投資方針や戦略によって異なります。DNXは「DNX Values」と「アントレプレナーに求めるもの」を定義して、Webサイトに公開しています。DNXは、シリーズAでリード投資したアントレプレナーに対して、「真の伴走者」として良い時だけでなく困難な時こそいつまでも支えていきます。だからこそ、DNXはシリーズAの投資判断を重視しており、シード投資以上に起業家には「アントレプレナーに求めるもの」との合致を期待します。
松元さんは特に「本気で、日本をアップデートするひと。」の迫力を見せてくれました。日々の顧客開発プロセスから、チーム組成、投資家選定に至るまで、常に顧客を主語に置き、顧客のためにQuollioを強くするには、どう振る舞い、どう考え、どう判断すべきか、を自問し続けていることが、あらゆる言葉や行動の断片から感じられました。経営者として、あるべきガバナンス構造をご自身で深く考え、決断されたことも、今後の起業家の模範になることと思います。
松元さんコメント
多くの企業が持つデータの価値を、Quollioが輝かせることが出来るように、DNXも支援を続けて参ります。
(文・中野智裕)