祭りってのは
晩方、外を歩いていたら商店街の夏祭りに遭遇し、なつかしさについ誘われました。
いかにもお祭りを感じさせる笛と太鼓のお囃子がスピーカーから流れています。
夏祭りが麻布十番祭りのような巨大人混みイベントになって久しいですが、こんな昔ながらのローカルなお祭りも残っているんですね。
商店街通りを家族連れや若者グループや浴衣姿の男女がまばらに歩いています。地元の人たちなのでしょう。
「御神酒」と書かれた寄合所には、はっぴと足袋のお祭り装束の衆がいて、行き交う人々に目を細めています。
近くに小さな神社がありました。
屋台もいくつか出ていました。
この程度の人出ならストレスなく歩けますね。
金魚すくいって今でもあるんですね。
「金魚いらないひと 2回あそべます」
持ち帰っても困る人いるんだろうなあ。
射的もなつかしい・・・
お客さんがいないところがますますせつない。
お面屋さんもあったなあ。
品揃えがシブいですね。
地元代表のキッズでしょうか。
お祭りには演歌とかのほうがよくないか?
屋台の売り子さんはいかにもカタギでない感じがいい。
手ぬぐいを頭に巻いたコワそうなお兄さんとか。
ケバいお化粧と刺青の入った鉄火な姐さんとか。
コンビニでバイトしてそうな女子では雰囲気が出ないわけです。
祭りには祭りの型があるように、屋台には屋台の型があるものです。
そんな日本の伝統を確認してから、小体な居酒屋に入りました。
カウンターに腰掛けます。
隣には先客がいました。祭りのはっぴを着た3人組です。
一瞥して、70代男性、60代女性、40代男性とみました。
この3人、「祭りとは何か」という祭り談義をしているようでした。
70代男性がアツい祭り語りを披露しています。
「祭りってのは遊びなんだよ。大人が本気になって遊ばなきゃならねえ」
「そうなんだよねぇ」と 60代女性が合いの手を入れます。
すると 40代男性が「今のハロウィンみたいなものすかね?」と発言。
「バカ言っちゃいけねえ。ありゃあ子供の遊びだ。祭りはな、大人の遊びなんだよ。大人が本気で遊ぶんだ。それを見た子供たちにいつかあんなふうに遊びたいって思わせなきゃならねえんだよ」
「今の子供たちがそう思ってくれるといいけどねぇ」と 60代女性。
「祭りってのはお返しなんだよ。祭りでさんざん楽しませてもらった人間はいつかそれを返さなきゃならねえ。やめたらいけねえんだ、祭りってのは」
「おっちゃんが生きてるうちはやめられないっすね」と 40代男性。
「祭りってのは生きざまなんだよ。むかしは三田と芝の連中がケンカばかりでよ。でも祭りのときだけは酒をのんだものよ。わかるかえ?それが生きてるってことでさ」
「男衆にとっては生きがいみたいなものかもねぇ」と 60代女性。
「祭りってのは女なんだよ。惚れたら地獄よ。それこそ命がけよ。祭りで身上つぶすなら本望だね」
「そこまでハマる祭りって何なんすかね?」と 40代男性。
「祭りってのは遊びなんだよ。大人が本気になって遊ばなきゃならねえ」