社員エンゲージメント調査に笑う
先月、当社の全社員(約 6万人)を対象に “Employee Engagement Survey” が実施されました。
この調査は、会社の経営、組織風土、社員への処遇などに関する質問項目に5段階(1: そう思わない ~ 5: そう思う)で回答させるものです。
質問項目の一部を抜粋します。
Vision
当社はクリアなヴィジョンを持っている
Leadership
私は当社の Ex-Com(最高幹部)を信任している
Consumer Focus
当社はコンシューマーに感動を提供している
Rewarding People
私は自分の仕事に対してフェアな報酬を受けている
Empowerment
私は自分の仕事に関する意思決定を任されている
Equal Opportunity
すべての社員は平等な成功機会を与えられている
Well Informed
社員は経営に関して十分な情報を周知されている
Career
当社には魅力的なキャリアの機会がある
Glint という LinkedIn 傘下の企業が開発したプログラムのようです。
このテの調査は、他の企業でも定期的に実施されているものでしょう。
「エンゲージメント」とは、社員の会社に対する帰属意識、忠誠心、結束、もっと平たく言えば、当社で働くことの幸福度みたいなものでしょうか。
こんなアホらしい “施策” にカネとヒトと時間を使ってんじゃねーよ!
とキレるほど、私もコドモではありません。
今このタイミングでその調査を実施した理由も想像できます。
COVID にともなう出張禁止や在宅勤務によって、社員の “つながってる感” が著しく失われていることを、経営が危惧しているのでしょう。
「なんとかせねば!」とジタバタしている様子が伝わってきます。
こんな “施策” を打つことが逆効果だとは考えない、憐れな人たちなのでしょうか。
回答は「完全に匿名、かつ confidential」ということが強調されてますが、「必ず回答せよ」と脅迫めいたメッセージもついています。
「くだらねぇ」とわかっている社員は、時間を節約するため、質問を読まず全項目に「3: どちらとも言えない」と回答するかもしれません。
全社員がそうしたら、さすがに会社もこの調査をやめるかな。
そんなわけで、この調査のことは忘れていたくらいなのですが、先週とんでもないメールが来ましてね。
それは、全マネジャー職宛てのメールで、
「あなたの部下の回答(平均スコア)が以下のリンクから見られます」と。
おいおい。
Confidential じゃなかったのかよ。
これだけでもじゅうぶん目を疑う所業でしたが。
さらに・・・
「スコアを上げるために何をすべきか、チーム内で議論し、行動計画を策定してください」
はあ??
何言ってんの?
狂っちゃった?
うちの会社。
質問項目をよく読んでいただきたい。
これ全部トップマネジメントの課題でしょ。
「当社はクリアなヴィジョンを持っている」
⇒ そう思わない
じゃあどうしたらいいでしょうか?
ってアホ!それ Ex-Com が考えることだよ!
トップマネジメントが考えるべきことを、ミドルマネジメントに押しつける気ですか?
こんな調査に回答させるだけでも、社員の時間とモチベーションのロスなのに、調査の結果を見てオマエたちで何とかせよってか?
スコアは、経営の最高機関である Ex-Com に対する評価以外の何物でもない。それを真摯に受け止めるべきなのは Ex-Comだろーに。
この施策を主導しているのは People & Culture(👈人事部の今どきの呼称)です。
今までもずーっと人事部要らないと思ってきたけど、今ほど「消えてくれ」と思ったことはない。
私が今 20代や 30代だったら、こんな会社とっとと辞めます。
40代だったら、真剣に悩みます。
最近 50になったので、あと 5年ほど、せいぜい会社の痴呆ぶりを笑わせていただくことにしよう。
部下たちを守ることだけに全力を注ぐ。
チーム内で議論?
するか阿呆。
こんなお遊びにかまけているから、スコア、すなわち Ex-Com に対する評価が落ちるんですよ。
私の部下はね、会社のヴィジョンがどうのこうのより、目の前にいる取引先と価格交渉することのが大事なんだよ。
Ex-Com のお偉方や、事業を知らない人事部員が考えているより、実務知識もノウハウも問題解決能力も高いんです。
彼ら彼女らは、エンゲージメントのスコアを上げることなんかより、取引先との交渉がうまくいったときに達成感を感じるんだ。
くだらない調査に使うカネがあるなら、真に会社に貢献している彼らの給料上げてくれ。