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日本の観光のチャンス!世界的に旅行者を減らそうとする動き。オーバーツーリズムの解決策2

こんにちは。株式会社Hospitality Bridgeの常井大輝です。
観光を通して日本を元気に。というビジョンの元2023年11月に観光コンサルティングの事業を創業しました。宿泊施設の新規開業、運営、経営、セールスやマーケティングなどのご相談をお待ちしております。
学校の講師、自治体やDMOの相談も乗っておりますのでお気軽にご連絡ください。

さて、今回は世界のいくつかの地域では旅行者を減らそうという動きが出てきています。
旅行をするなら金を払えという強い風潮がようやくヨーロッパなどでも見受けられるようになりました。
日本はいつになるのでしょうか。
観光税とオーバーツーリズムについて今回も記載していきます。

観光税3倍!観光への障壁?オーバーツーリズムの解決策の一つ

2024年9月のニュースです。ニュージーランドでは、同年10月より観光税を約3倍まで引き上げることを決定し施行されることも発表されました。
2019年より現在約3,150円の観光税でしたが、従分ではないとされ、今回約9,000円まで引き上げられます。

目的

ニュージーランド政府は”ニュージーランドを訪れる観光客に公共サービスと質の高い体験を提供するため”とし増税しました。

100NZドルはどれくらいかというと消費額の3%にも満たないとのこと。
減少にさほど影響はないと予想している。

反対派

一方、ニュージーランドの観光産業協会は、料金の値上げは観光客の減少につながると見ています。短期的に見れば減る可能性は十分あります。
ニュージーランド政府は最近、観光ビザの費用も値上げ。地方空港の利用料の値上げも提案されています。ますます旅行客が減ることが予想されますが、果たして経済にどれほど影響を与えるのでしょうか。

国へのインパクト〜キャパシティ編〜

まず、観光客数を把握します。
Trading Economicsが発表しているデータによると、図1のような観光客数推移となっております。
とても面白い余談ですが、ニュージーランドの繁忙期は日本の冬ということです。
南半球なので、この時期は暖かいのでしょう。10月〜12月が春、1月~3月が夏気候のようです。

年間の人数というと、3,213,000人(2023年7月ー2024年6月)となります。
日本と比べると1/10ほどです。

図1: ニュージーランドの10年間の月間観光客数
New Zealand tourist arrivals. (n.d.). https://tradingeconomics.com/new-zealand/tourist-arrivals

人口は5.1million(5,000,000人)。日本は125million(1.2億人)なので、約1/20ほどになります。
国土面積は268,000㎢、日本は378,000㎢なので、約3/4ほどでしょうか。
対人口での観光客数の割合を考えると、ニュージーランドが0.64名、日本が0.20名と自国民一人あたりの受け入れ人数ではニュージーランドの方が負担が大きいです。
面積で考えると、ニュージーランド11.6、日本0.15と1㎢あたりの観光客数は11名、6.6名とニュージーランドの方が混雑しています。

この辺りはよく日本やヨーロッパでオーバーツーリズムを測る時に使う指標かと思いますが、観光収入で見てみましょう。

図2はニュージーランドの観光収入のグラフです。
四半期ごとにまとまっておりますが、2023年の観光収入は、12,930,000,000 NZD (1,136,941,365,000円)。日本は約5兆円ですので5倍の額を稼いでいます。
待ってください。日本とニュージーランドで観光客数に違いがありましたか?
1/10です。
日本は面積や人口ではニュージーランドほどオーバーツーリズムではないと言えてしまいますが、収入面ではニュージーランドよりオーバーツーリズムと言えます。つまり観光客に安く搾取されている国と言い換えることができるはずです。

図2:ニュージーランドの観光収入(四半期ごと)
New Zealand tourist arrivals. (n.d.). https://tradingeconomics.com/new-zealand/tourist-arrivals

日本も人数キャパシティはニュージーランドより余裕がありますし、価格に関しても余裕がありますので、このセクターの成長する余地は容易に見出せます。

観光税増やしていきましょう。地元の人のため。
どの程度にすれば良いのか記載します。

国へのインパクト〜観光税のKGI〜

2019年ニュージーランドは観光税を導入し、35NZDを課税することになりました。0からの35NZDですので、当時も観光客数が減るという議論はあったことでしょう。
どれくらい減ったのか。気になりませんか?

図3は10年間の観光客数推移のグラフとなります。
2019年の施行以降観光客数の推移に変化はありません。
落ち込んでいるのは、いうまでもなくコロナパンデミックの影響です。

図3:ニュージーランド10年間の月間観光客数の推移
New Zealand tourist arrivals. (n.d.). https://tradingeconomics.com/new-zealand/tourist-arrivals

とはいえ今回は100NZD。35NZDなら構わないけど、100NZDだと高くない?と思うひとも多くいるはずです。
こればかりは、やってみなければわからないのですが、ある程度の指標を作ってみます。

2023年の観光客数は約2,956,000名(2023年1月ー2023年12月)。
観光税は35NZDでしたので、103,460,000NZD (約93億円)でした。
2024年、回復と旅行需要の世界的増加の影響は2023年10%-20%程度ではないでしょうか。すると2024年は3,200,000名〜3,400,000名程度と予測できます。(ざっくり計算ですし、いろいろな要因は省いて考えてますので全く違ったらすみません)
そのうち10月以降の繁忙期が全体の40%ほど(1,200,000~1,500,000名)を占めているかと思います。
観光税の増加をしなかった場合
3,200,000~3,500,000✖️35NZD=112,000,000NZD (約1兆円)

観光税をあげても需要が変化しない場合、
 100(NZD)✖️1,200,000+35(NZD)✖️2,000,000=120,000,000(NZD)+70,000,000 (NZD)=190,000,000NZD (約1.7兆円)となります。
増税による2024年の効果は78,000,000NZD (約70億円)になります。
2025年も同等人数が来るとすると、320,000,000NZD (約2.8兆円)となります。
観光税をあげて、観光客数が繁忙期の需要が20%減った場合
100NZD✖️1,200,000✖️0.8+70,000,000NZD=166,000,000NZD (約1.5兆円)
観光税をあげて、観光客数が繁忙期の需要が50%減った場合
100NZD✖️1,200,000✖️0.5+70,000,000NZD=130,000,000NZD (約1.2兆円)
まだ観光税を増加しなかった時より若干稼いでいます。
しかし50%減ると下記のようなマイナスインパクトも発生し、経済効果はマイナスになるのではないでしょうか。(ここでは試算はしませんが)

2025年度、需要が半分になった場合(最悪のケース想定)
1,600,000名✖️100NZD=160,000,000NZD (1.4兆円)

需要が半分になっても税収は約40%増していますので、行政は問題ないかと。
需要が50%になると問題が出てくるのは民間ビジネスの人たちです。

繁忙期観光客が50%減るとどうなるでしょうか。
ポジティブなインパクト予想
混雑が減り、住民や観光客の満足度が上がる。
自然環境、住民の生活環境の改善、維持ができる。
など色々な意見があると思います。
ネガティブなインパクト予想
必要なホテル部屋数が変わり、倒産するホテルが出る。
雇用が減る
レストランやお土産やさんが倒産する
関連会社(リネンや食品会社など)の収入が減る。リストラが増える?
などの声も上がります。

ただしこれは需要が50%下がった時の話です。
100NZDになったから需要が50%下がることは考えられるのでしょうか。。。また一時的な下降があったとしても、それを盛り返すだけの施策と使用用途が明確になっていれば最悪そこまで下がっても凌げるのではないでしょうか。

ここでは、NZにどれだけの観光事業者があるか調査しなければわかりませんので、ざっくりな話になります。

施設単位(民間ビジネス)への経済インパクト

需要がしばらく変わらない場合、当たり前ですが、施設としてはありがたいです。
この場合は、PRや観光インフラが増築され、さらなる需要増が期待できると同時に、さらに観光税を引き上げなくてはオーバーツーリズム再燃です。

需要が変わる(下降する)場合
供給過多になり、起こりうることはいくつかあります。
・価格競争による価格の下落
・倒産
・競争の激化

ポジティブに考えると、雑な事業やコモディティ化された一般的な事業は競争力がなく倒産していきます。より面白い施設や洗練された施設が生き残り、他は淘汰されていくでしょう。

民間ビジネスが反対するのは需要が減ると、倒産するリスクが高まるからです。しかし、観光税を100NZDにしたからと言って観光客が半分しか来なくなることはないと思います。(確率の計算をしなければなんとも言えませんが。。。そこまで減ると思いますか?)

観光客一人あたりの消費額から考える需要の減少

ドイツが 6,100NZ ドルと最も多く、次に、UK が 4,800NZ ドル、米国が 4,700NZ ドル、中国が 4,600NZ ドルとなっており、日本は 3,300NZ ドルとなってい る。豪州は 2,000NZ ドル

Ishii, Y. (2021). ニュージーランドの観光に関する一考察 ―新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響―. A Study on Tourism in New Zealand ―The New Zealand Tourism Industry through the COVID-19 Pandemic― .

どの国の人がどの程度減ってしまうかわかりませんが100NZDが影響を及ぼすのは、日本からの旅行者、オーストラリアからの旅行者なのではないでしょうか。それは、消費額に対する観光税の割合が高くなるからです。
ドイツやイギリス、米国、中国からの旅行者は全体のほんの数%しか占めないので、気にしない可能性が高いのではないでしょうか。
10,000円を持っている子供が100円の駄菓子を簡単に買ってしまうのと、1,000円を持っている子供は100円の駄菓子を買うのに迷ってしまう心理と同じです。

本当は、ここから需要予測をしっかり行い、その需要予測に則って戦略、戦術の構築と策定をしていき、いくつかのシナリオを準備しておき対応していけるといいのですが、そこまではかなり時間と労力がかかりますので、興味のある自治体様からご依頼があった場合、そこに適したものを提案させていただきます。

観光税の目的

観光税の目的は”税収を増やす”だけではありません。
記事にもありますが、オーバーツーリズムの抑制。この役割も担います。

未来の観光税(妄想の世界が実現したらいいことが起こりそう)

世界のどこも行っていないのですが、観光税収はシーズンごとに変化を与えることができれば、繁忙期などの需要の波の幅を縮めることもできるはずです。企業の休みの期間などもありますが、国としてそのようなことができるととても効果的で且つ、観光旅行者、民間企業、地域住民にとって良い影響を与えることができると思います。

IT化している今の時代ですし、ホテルではレベニューマネジメントとして導入しているので、そのようなコントロールはシステム的に不可能ではないです。ただし、導入を決定するのは簡単ではないのでしょう。

ただし、そのシーズン毎において税収コントロールを可能にするのは、定率制の宿泊税です。宿泊費が高い繁忙期は税率も高く、安い閑散期は税率も低くなります。
少なくとも、閑散期に行きたくなる人は増えてきます。

本当は、繁忙期、閑散期に合わせて、率や額も変わるとより効果的ですね。
繁忙期は10%(もしくは定額制で10,000円)、閑散期は3%(定額制で3,000円)などにすると、需要の波は縮まり、分散もできるようになるかもしれません。

観光税の目的

振り返ると、観光税導入の目的は、
・税収を増やし、観光客インフラの充実を図りより良いサービスを提供し地域の価値やブランド力を高める。
・オーバーツーリズムの抑制
・文化や観光資源の保全
などになります。目的は地域毎に変わると思います。課題解決のための手段とお考えください。

まとめ

大切なこと

  1. 観光税の目的と用途を明確にします

  2. 観光税導入時の地域へのインパクトを試算し、継続的に着地実績と予想を把握し、マイナスの経済効果を産まないように体制を構築します

  3. 事業者からの理解と協力体制を構築します

  4. 住民の理解も必要となります

  5. 観光客の増減の把握しながら変更するときは素早い対応が取れるようにします

  6. 財源を特別勘定(エスクロー)とし、その財源はDMOなどの活動資金とし観光振興目的で利用します。

  7. 観光税レベニュー担保に地方債の発行なども考えられます。

  8. 独立したDMOを設立します。

  9. 定率制がベスト。高付加価値を目指す地域であれば尚更こちらの方が良いです。

など他にもあるかと思いますが、観光税の導入に関して大切なことをまとめました。

観光税の使用用途例

  1. 自然保護や観光施設設備投資への財源(低金利、借入優遇措置)などに使えます。

  2. プロモーションの費用

  3. 新規事業誘致活動への投資

  4. 観光インフラの整備

  5. ゴミの回収や収集の整備

  6. 文化関連、お祭り、大会、イベントなどの開催費用

  7. 地元住民への還元(閑散期におけるレストラン券の配布や、温泉利用料減額、交通インフラの利用料減額、駐車場無料など)

  8. 地方債の償還、返済

  9. DMO経営、運営費用

使用用途は自由であり、地域によって色々考えられますが、例としていくつかあげております。この使用用途は一部米国オーランドDMOで定められているものを抜粋しております。そのほかアメリカ生活で体験した部分を記載しております。私も大学の私の恩師から学んでいることなので、実際に進める場合は可能であれば視察、訪問に行くことをお勧めします。

ご興味がございましたらオンラインや実際に伺いお話しする機会を持てると幸いです。

観光を通して日本を元気に
株式会社Hospitality Bridge
代表取締役
常井 大輝



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