知的財産のプロに聞く、ハードウェアスタートアップが気をつけるべきこと。
DMM.make AKIBAでは会員(Drop-in会員を除く)が設計・開発、事業計画、知的財産など各領域におけるプロフェッショナルに無料で相談ができる「メイカーズ相談会」を提供しています。
今回はコミュニティマネージャーの浅田が、メイカーズ相談会にご協力いただいている特許法人 白坂の創業者で弁理士の白坂 一さんにスタートアップの知的財産についてお話を伺いました。
白坂 一(しらさか・はじめ)さん
特許法人 白坂 / 創業弁理士
株式会社AI Samurai / 代表取締役社長
▼特許法人 白坂▼
知的財産とは中小企業を守るためにある。
ーー白坂さん、よろしくお願いします!まずは特許法人 白坂について教えてください。
白坂さん「 2011年に白坂国際特許事務所(現 特許業務法 白坂)を創業しました。それまでは富士フイルムの知的財産の部署で働いていましたが、東日本大震災をきっかけにスタートアップを支援したいと考えるようになり、特許事務所を設立しました。
また、マザーズ上場企業の関連会社の社長となりまして、その上場企業がナスダック上場を行い、そのときにビジネスのやり方について勉強させていただきました。
現在は類似文献評価システム「AI Samurai」を提供するスタートアップ 株式会社AI Samuraiで代表取締役社長を務めています。
スタートアップを経営しながら弁理士をしていることで知的財産だけでなく経営や資金調達のサポートまで行うことが出来ます。DMM.make AKIBAで活動するスタートアップも数社支援していますよ。
クライアントは大企業も増えていますが、スタートアップも多いです。スタートアップの方が人生相談みたいなことが多くてやりがいがありますね。」
ーースタートアップを経営しているからこそ理解し合えることも多そうですね!ここで知的財産について改めて教えてください。
白坂さん「 知的財産とは『知的創造活動によって生み出されたものを、創作した人の財産として保護するための制度』です。
つまり、発明した技術やデザイン、ブランドなどを守る制度のこと。
技術的な発明を保護する特許権、発明ほどではない考案を保護する実用新案権、物や画像のデザインを保護する意匠権、商品やサービスを区別するネーミングやマークを保護する商標権などが含まれます。
独占的な権利を得る、つまり排他する性質を持っています。これらの権利を得ることでビジネスを有利にすることが出来ます。制度的には中小企業を守るためにあるんですよ。」
スタートアップと知的財産。
ーー数多くのスタートアップを支援してきた白坂さんですが、どのような相談が多いのでしょうか?
白坂さん「 どのように出願したら良いのかなど、初歩的な相談から受けることが多いです。
知的財産権は"先に出したもんがち"なので、思いついた時が出し時です。相談をいただいて"1ヶ月遅かった"なんてこともあるので早くご相談いただくのが良いと思います。
特に商標は会社のブランドに関わるのでビジネス上重要になります。ネーミングは人に真似されやすいのでなおさら早く申請する必要があります。
スタートアップからは資金調達や経営面での相談もよく受けていますよ。」
ーースタートアップ特有の事情もありますか?
白坂さん「 慣れていないスタートアップは資金調達後にコストコントロールに失敗して資金をショートしてしまうことがよくあります。
私自身が資金調達も経験しているので、スタートアップから知的財産の相談を受けた時はなるべくコストを掛けないようにアドバイスします。
スタートアップの皆さんはコストコントロールやスピードというスタートアップ特有の事情も組み込んでアドバイスできる方に相談すると良いと思います。
大企業であれば法務の体制も強固ですが、スタートアップだと企業側の見極める能力が低い場合が多いです。誰に相談するかは慎重に選んだ方が良いです。
それから、SNSなどで先に情報を出してしまうスタートアップをよく拝見しますが、出願するまでの情報公開は控えるようにしましょう。」
ーー最近ではオープンイノベーションの動きも盛んですが気をつけるべきことはありますか?
白坂さん「 大企業と組む前に出願しておくことが大事です。大企業側に技術を吸い取られて見捨てられる、なんてこともよくあります。
オープンイノベーションでは双方向に人材が流動しやすいですが、知的財産は最後まで会社に残ります。自社の技術を守ることを優先しましょう。」
ハードウェアと知的財産。
ーーDMM.make AKIBAで活動するスタートアップの多くがハードウェアを開発していますが、ハードウェアスタートアップが気をつけるべきことはありますか?
白坂さん「 ここ数年でIoT(Internet of Things)やAIを活用したハードウェアが多く開発されるようになったことで、ハード的な技術やデザインだけでなくソフト面にも気をつける必要が出てきました。
最近では、意匠権に関わる意匠法が改正されたことで、画面の意匠権について保護範囲が拡充されるようになりました。
例えばスマートフォンと接続するようなIoT家電の場合、家電に使用される技術や家電そのものの見た目だけでなく、スマートフォンの操作画面のデザインも意匠権として申請することができるということです。
最近ではスマートフォンアプリの画面上のボタンのデザインなんかも申請されているんですよ。
スタートアップの場合は特にコストコントロールが大事なので、出願する際には技術的な側面とブランド的な側面のバランスを考慮した配分でコストをかけていく意識が大切です。」
ーープロダクトをローンチした後も何を保護していくか気をつける必要があるということですね。
白坂さん「 そうですね。特許庁も世の中の変化に合わせて改正を繰り返しています。
余裕があれば月1回程度は弁理士と相談していった方が良いです。スタートアップは特に新規開発に集中していて知的財産の申請を忘れがちなので気をつけましょう。」
ーー会員の方から弁理士の方に正しく技術を理解してもらえず、コミュニケーションに苦労したという話を聞いたことがあります。
白坂さん「 スタートアップの場合によく発生する問題です。
大企業であれば出願数も多いので似たような出願がすでに存在することが多々ありますが、スタートアップは新しい技術や概念であることが多いと思います。
なので、弁理士側もスタートアップをサポートするときの方が勉強しなければならないことが多い傾向にあります。
ハードウェアに限らないですが、新しいテクノロジーへの理解があって根気よく伴走してくれる弁理士に相談することが大切です。」
知的財産を通してイノベーションが起こる瞬間を見たい。
ーー知的財産について学べる機会はそう多くないですし、しっかりサポートしていただける弁理士の方と出会うことが大切ですね。
白坂さん「 はい。私は今までにないような事業に挑戦している会社を応援したいですね。知的財産のサポートを通してイノベーションが起こる瞬間を見てみたいと思っています。
ソフトウェア以上にハードウェアでも今後革新的な技術が生まれていき、世界を変えていくと思っています。その点でDMM.make AKIBAで活動するスタートアップには大いに期待しています。」
ーー白坂さん、ありがとうございました!
さいごに。
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