
雨ときどき曇り そろそろ台風
目が覚めるとたくさんの雨が降り注ぐ音にほっと胸を撫で下ろした。野営をしていたら今頃ずぶぬれだっただろう。ただでさえ汗で匂いを放ちはじめているのに、今濡れたら人前には出れない。
あぁ、愛車は大丈夫だろうか。まだ台風が来たわけではないが意外と風もある。ロードバイクはママチャリよりも軽いから心配だ。今日は午後に雨が止む予報なので輪行袋に入れて宿に持ち込ませてもらおう。
朝はパンにソフトマーガリンとお菓子を食べて空腹を満たした。毎日自転車を漕いでた生活から一変して何もしない生活に。普段は見ないテレビをつけてみる。
多くの番組は日本ボクシング連盟の件を取り上げている。なんだかお祭りみたいだ。見れば見るほど好景気の時代にのし上がった人間の質を疑ってしまう。番組を見ているとやりどころのない怒りのような気持ちが湧いてきてしまうのでテレビを消して眠りについた。
つぎに目が覚めたとき雨は止んでいた。愛車を避難させるチャンスだ。コインランドリーを確認しながら愛車のもとへ。雨がまた降りはじめた。
輪行袋へ収納し宿へ持って行くとちょうどオーナーが玄関へ出てきた。台風なので自転車を持ち込ませてくださいとお願いするとちょっと待ってと置ける場所を探してくれた。
とても可愛らしいお爺さんで自転車を担いでるわたしたちを見て持ちたくなったのかわたしの愛車を担ぎはじめた。お爺さんはなにかを納得したらしい。そのまま歩きはじめてしまった。軽いとはいえ14キロはある自転車を担ぎながら置く場所を探してくれた。
愛犬のマルくんのおうちの隣に空いているスペースがあったのでそこへ置かせて頂いた。お爺さんはなにかレースに参加するのかと聞いてきた。だから自転車で日本を旅していると言うと少し驚いた様子だった。
自転車に帆をつけて進むのがいいんじゃないか。なるほど。そんなユーモラスなことを発想できる人だからこの高原に似つかわしくない温泉宿をつくることができたのだなと妙に納得してしまった。
温泉に浸かり久しぶりに忙しくないゆったりとした時を過ごした。ロビーへ行くとオーナーの伊藤さんがいたので話しかけてみることにした。心が落ち着くと普段は億劫なことでもできるようになるみたいだ。
伊藤さんは発明家で実業家。おそらくけっこうなお金持ちなのだろう。宿には多くの石や奇木が飾られている。すべて伊藤さんの趣味だ。熱心にお話を聞いていると2階の凄い部屋に案内してもらえることになった。いまは忙しいので19:30になったらロビーへ来るようにと言われた。
19:30、時間通りにロビーへ降りた。カウンターに伊藤さんがいたのでまずは洗剤を購入させてもらった。小分けの紙の小袋に入れられた粉洗剤はひとつ50円だった。
2階へ行く階段にはチェーンがかかっていた。案内されるとそこはピラミッドの中で真ん中には大きな奇木と水晶が置かれていた。ピラミッドが凸レンズの役目をしていて宇宙エネルギーを真ん中の大きな水晶に溜めるのだそうだ。
ここは瞑想室と呼ばれる場所で、灯りを消すと天井にある電球が光り自作のプラネタリウムが広がる。音楽がかかり用意されている枕のようなものに座ったり寝たりし、掌を水晶へと向け瞑想するのだそう。
手作りのその空間はいくらか胡散臭さがあるもののわたしにとっては気持ちの良い空間だった。伊藤さんのお話はおもしろく、主張は強いのだが押し付けることはしない。そういう考え方もおろしろいだろう?などと提案してくれる。
伊藤さんはわたしたちのことを気に入ってくれたらしくここへ案内したのだという。あなたたち若い夫婦への僕からのプレゼントだと。形の無いプレゼントは持って帰る手間もないからいいだろう?と無邪気に笑ってくれた。
#日本一周 #自転車 #都道府県制覇 #チャリダー #ロードバイク #自己分析 #自己理解 #人生哲学 #旅 #旅人 #悩み #日記