Source Principle(ソース原理)に基づいた書籍(Work with Source)著者来日記念特別セミナーに参加してきました
2022年8月11日@東京・8月19日@京都で行われた「ソース原理著者来日記念特別セミナー」に参加してきました。
『Work With Source』の日本語訳出版に向けて開かれた学習コミュニティに参加しており、そこで本セミナーのことを知りました。
※2022年8月28日追記:日本語版書籍の情報がリリースされました
翻訳前の原稿は読んでいたものの、原稿を読むだけではいまいち腑に落ちないこと、理解しきれないところがありました。また、コミュニティの参加者同士で話すこともあったのですが、お互いに理解が浅いままの議論や、類似の概念との違いがわからない部分もあったりして、著者に直接触れることでソース原理の感覚を身体を通してつかみたいと考え、参加しました。
実際に参加してみたことでぼくに起こったインパクトは以下の3つです。
①著者から直接話や体験談を聞くことで、ドキュメントに書かれていることの背景や、ソース原理が大切にしている前提が理解できた
②ソース原理と似たような概念との区別をクリアになってきた
③その結果として、自分の人生の中でソース原理を活用できそうな感覚が高まった
ソース原理とは何か?
おそらくソース原理について初めて触れるという方もいると思うので、簡単にソース原理を紹介します。
ソース原理とは「あらゆる活動はたった1人のソース(源)から起こる」というコンセプトのことです。
「1人」と言い切っているのがソース原理のポイントの一つです。例えば、共同創業した場合は、ソース原理の観点からは「共同創業の場合、必ず最初に声を掛けた1人がいるはずで、その声を掛けた人こそがソースである」と捉えます。
ソース原理はいきなり生まれたわけではなく、その誕生には以下のようなプロセスがあります。
①お金とお金に関する信念についての対話(マネーワーク)
②創造的に生きる人の原理とは?の探求
③ソース原理に結実
人と組織の関係を考えるうえではお金がテーマになることが多く、ソース原理を生み出したPeter Koenigは、まずお金に関する取り組みからスタートさせていったそうです。
詳しくはWork with Sourceの翻訳を手掛けている令三社のWEBサイトに書いてあるので、興味のある方はチェックしてみてください。
ソース原理は個人レベルでも活用できますが、もともとは「ビッグアイディアを組織で実現するために示唆を与えるもの」として生み出されたそうです。
ソースに特定の役割があるわけではありませんが、以下のような存在と定義されています。
この3つをぼくの主観も入りますが、紹介してみます。
「①事の起こり(イニシアティブ)をつくる存在」とは、最初の一歩をリスクをとって踏み出す、という意味合い(最初の一歩から生み出された活動を「イニシアティブ」と言います)
イニシアティブはお金を起点にスタートしないことが重要で、情熱的なアイディアが起点→そのアイディアに自分自身をまず投資する→そうしているうちにリソースが集まる→結果によってはお金がもたらされるかもしれない、という順番が大切だそうです。
「②未来のための次の一歩を明らかにできる存在」は次にこんな展開をするんじゃないか?などの予感や気配に耳を澄ます、という意味合いです。これは次の一歩を決めるとは必ずしもイコールではありません。予感や気配に耳を澄ませつつも決定は別の人が行うこともあり得ます。
「③クリエイティブフィールドをホールドする存在」は2つの意味合いがあり、一つはソースに沿って場(フィールド)を形成する、もう一つは場(フィールド)の境界線を明確にする、です。つまり、ソースは他のメンバーがそのフィールドから外れることをイニシアティブでやりたいとなった場合には、NOを突き付けることもあります。
ソース原理はPeter Koenigという方が2010年ぐらいから提唱し始めたとのことですが、Peter Koenigは本や文字などでの発表はしておらず、ワークショップを通じて伝えているそうです。そのせいもあってか、Peter Koenig本人ではなく、Peter Koenigから学んだ人たちが本を出しています。
そのうちの1冊が「Work with Source」(10月ごろ日本語版が出版予定)であり、本書の著者である起業家・コンサルタントであるTom Nixonが今回来日したという流れです。
著者来日セミナーの概要
セミナーは2時間で、以下のような内容がTom自身のエピソードもふんだんに盛り込まれ紹介されました。
①ソース原理の概要の紹介
②Tomがどんなプロセスでソース原理に出会ったのか?
③ソース原理に出会ってから、なぜ今までソース原理を探求してきたのか?
直接、著者から話を聞く体験を通じて、何よりTomの人生における体験がソース原理を伝える原動力になっていること、理論先行ではなく、Tomの実体験からソース原理の確からしさを検証してきたことによるソース原理への信頼が深くなっていると感じました。
ちなみに、午前中にオンラインセミナーが行われていており、そちらについては後日公開されるとのことで、公開されたらこちらでも紹介します。
ソース原理の概要はそのオンラインセミナーでカバーできるはずです。
※2022年8月13日追記 動画が公開されました
Tomから話を聞いて、ソース原理を理解する上で大切だと感じたポイント
ソース原理は類似の概念との区別が非常に重要であり、その違いを繊細に感じる(センシング)ことを通じて、ソース原理の理解がより深まります。
「ティール組織」「U理論」「学習する組織」などソース原理に近い概念はいくつかあります。ただ、ソース原理で言わんとしていることはそれらとは微妙に異なる感覚です。どれが正解、どれが間違いではなく、守備範囲が違う感覚です。
これを捉え間違えると(例:U理論におけるソースとソース原理のソースは同じだ)せっかくのソース原理のユニークさが失われるように思います。これが類似の概念との区別が重要だと考える理由です。
以下が、Tomが話していたことの中で、特にソース原理のユニークさ・興味深い観点だとぼくが感じたことです。
①すべての人は生まれながらにして、自分の人生のソースであるという立場を取っている(ソースがある人、ない人という区別はない)
よくソースとか人生の目的というような話をすると「全員が目的を持っているわけではないですよね」という反応されることがあります。
この点について他の概念で明確に述べているものはあまりないと認識しているのですが、ソース原理では明確に「すべての人は生まれながらに自分の人生のソースである」と言っています。
人は人生のどこかでソースに繋がって生きている瞬間があり、例えば「自分がソースとしてやったことは何か?どうしてそれを始動させたのか?」といった問いを用いて、その瞬間に気づくことができるとのことです。
もちろん「生まれながらにして人生のソースである」は一つの観点に過ぎず、絶対的なものではないのですが、明確な立場を取っている点はソース原理を理解する上で重要なポイントと感じています。
②ソース=役割ではない
ここも誤認しがちなポイントで、例えば社長=ソースではないのです。社長以外にも会社の中にソースはいても不思議ではありません。創業社長はほとんど社長がソースだと思いますが、大企業の社長は必ずしもソースではないこともあるのではないでしょうか。
ここでの大切なポイントは「ソース=役割」ではない、です。
例えば社長であれば、明日からあなたが社長です、ということができます。人と役割が区別されているからです。
しかし、ソースは明日からあなたがこの会社のソースですというわけにはいきません。アサインしたからソースになるのではなく、肩書、役職とは違う概念なのです。
ぼくの理解では、ソースは目には見えないSpiritのような感覚であり、言語でやり取りするというよりは、体験を通じて感じ取るもの(センシング)のようなニュアンスです。
なお、ソースの継承には「儀式」が必要だそうです。この「儀式」は単に形式的なものではなく、ソースの感覚を伝承するプロセスを経たものになります。
儀式的なことをしている組織はすでにたくさんあるとは思いますが、実際には形式的なものになっていて、役割や肩書では社長になっても、ソースが伝承されていないケースも多いと思っています。
③ソースがすべてを決めるわけではない(ソース原理はソース原理主義ではない)
ソース=リーダーであり、ソースがあらゆることを決める、と思われがちですが、ソースは①事の起こり(イニシアティブ)をつくる、②未来のための次の一歩を明らかにできる存在ではあるものの、具体的な活動についてすべて関与するわけではないです。
具体的な活動に関わるのはサブソースです。なので、ソースの意見に対してサブソースの意見が妥当であり、それが採用されるケースも大いにあり得ます。
むしろソース原理の中では中心となるソース(グローバルソース)は、具体的なことや細かいことにはあまり関与し過ぎず、①事の起こりと②未来への第一歩を感じとる③クリエイティブフィールドのホールド、にフォーカスした方がいいと言われています。
ソースがすべてに関わることはサブソースである人が、その人のソースに繋がって活動することの妨げにもなるからです。
④ソース原理は「組織は存在しない」(組織は幻想)という立場を取っている
人は複数人で活動をスタートすると、組織を作りたがります。
しかしソース原理の観点からは「組織」は存在しないと考えます。
あくまで個人のソースがベースにあり、「組織」も個人のソースが源になって創られると考えるからです。Tom自身も「組織」という言葉は意図的に使っていないそうです。
ソース原理では、組織にフォーカスするのではなく、ぼくたちが組織と呼んでいるものの奥にある、クリエイティブフィールドと呼ぶ、場に存在する創造性のエネルギーがいかに流れるかにフォーカスします。
組織は存在しないという捉え方は組織変革や組織開発に関わる人にとってはある意味ショッキングなものかもしれません。
ただ、個人的な感覚からもソース原理の考え方には共感できるところがあります。あくまで組織は人の創り出した概念・観念であり、本当に実在するかといったら、少しあやしい感覚がします。
ただし、この点についてはぼくの理解もまだ不十分な感覚があり、これから探求を深めていきたいと思っています。
⑤ソース原理を体現するにはアウターゲームとインナーゲームの両方に取り組むことが大切
Tomはソース原理を体現するには、アウターゲーム(世界に向けた創造)とインナーゲーム(セルフディスカバリー 自己発見)の両方が必要だと言います。アウターゲームだけでインナーゲームがおろそかだと、どうしてもシャドーやメンタルモデルの影響を受けやすくなるからです。
シャドーやメンタルモデルの中でも特にお金に対する捉え方の影響が大きいとのことで、ソース原理では「マネーワーク」としてお金に関する取り組みが重要なものとして位置づけられています。
マネーワークについては書籍にワークのやり方も詳しく紹介されているそうで、日本で体験できる場もこれからできるそうです。
⑥ソース原理は証明された理論(セオリー)ではなく、物語・コンセプト(観点)である
ソース原理は何か学術的に証明されたものではありません。よって、ソース原理は正しいのか?という問いかけはあまり有益ではありません。
正しいか否かよりも、ソース原理の観点から捉えると、何が言えそうか?どんなアクションが考えられそうか?や、物事を前に進める際に取り入れられることはないか?などの観点チェックとして活用するのが、有効だと考えています。
そしてPeter KoenigもTom Nixonもソース原理を盲信しないでほしいと言っています。
ソース原理を証明しようとする働きはおそらく意味があまりなく、それよりも、ソース原理をふまえた上で、自分がどの立場を選択するか?次第なのだと理解しています。
ソース原理ってこんな風に活かせそう
最後にソース原理をこんな風に活かせそうというアイディアをいくつか書いておきます。
①自分に活かす
これは最もベーシックな使い方でしょう。
自分そのもののソースを探求することがまず第一ですが、個人的に面白いと思うのは、自分が参加している活動におけるソース(サブソース)を定義していくことです。
組織にいると、つい営業とか、開発などの役割や、マネジャーなどの肩書で考えてしまいがちです。そこに対して、自分は何のソースなのか?と問いかけることによって、組織ともう一段深いつながりが得られるのではないでしょうか?
これは必ずしも先進的な組織でなくとも取り組めるワークにできると思います。
個人のソースを探求する具体的な方法論の詳細は、日本語訳を待つとともに、すでにソースを探求するツールや手法は世の中にたくさんあり、それらを活用するでもよいと思っています。
②パートナーシップに活かす
これは僕のアイディアなのですが、パートナーシップにもソース原理は活かせるのでは?と思っています。
つい日常生活を送っていると、夫は●●をする役割、妻は●●をする役割となりがちです。そこに、ソースを持ち込んでみると、また違った感覚が訪れるのではないかと思います。
ちなみに、セミナーから帰ってきたのち、妻にソース原理の話とソース原理がパートナーシップにも活かせるかもねと話をしたところ、おおむね理解&共感してもらえました。
我が家の場合、ソースは妻であり、ぼくは2人の場の土を耕す存在であり、妻はその土に種をまく存在だね、などの話をしました。この捉え方をすると、夫と妻の役割から解放される感覚になりました。
会社よりもパートナーシップなど、感情や感覚を大切にする関係性の方がソース原理は応用しやすいのかもしれません。
③組織において活かす
致し方なく「組織」という表現を使いますが、もちろんソース原理は組織における応用でもパワフルなインパクトがあると考えています。
特にソース原理は組織に対してラディカルな視点を取っているので、組織のあり方をアップデートしていく上では多いに参考になると思います。
例えばソース原理の中では「責任は渡すことはできない。引き受けてもらうことができるだけだ」と言われています。これは本質を突いていると感じています。
また、組織変革の際、特に事業承継の際や会社の大きな方向性を見出す際に、活用できそうです。
事業承継にうまくいかないケースは、表向きにはいろいろあるでしょうが、本質的にはソースの継承に失敗していることが多いと感じています。
京都のセミナーでも、スピーカーのお2人は経営を譲る、譲り受ける経験があったのですが、エピソードなどを話していく中で「もしかしたらソースの継承はされていないのかもしれないね」という結論になりました。こういったセミナーに登壇されるスピーカーの方は、組織のあり方をとても大切にされていらっしゃると思います。それでも「ソースの継承はされていない」のであれば、やはりソースの継承はコツがいりそうな気がします。
一方で、いわゆる日本の老舗と呼ばれる、1000年~数百年続いている組織は、ソースの継承に成功していて、なぜ継承が成功しやすいかというと、いわゆる秘伝の味、独自の製法など、概念レベルのソースだけでなく、体験やより身体的に感じることのできる感覚として伝承されているからでは?との仮説を持っています。
組織における実践では、いま関わっているプロジェクトでソース原理が活用できそうなものがあるので、実際に試してみて、そのシェアができるようになるといいなと思っています。
少し長くなりましたが、「ソース原理著者来日記念特別セミナー」からの気づきをまとめてみました。
もちろんここに書かれていること以外にもソース原理をつかむ上で大切なことはいくつもあると思いますし、まだまだソース原理のビギナーなので、何か参考になるものがあればぜひ教えてください。