1ドル180円になっても・・・【対談】
今回はただの宣伝ですが、昨日、日経ビジネスオンラインさんの方から『きみのお金は誰のため』(東洋経済新報社)が大ヒットされ、各所で活躍されている田内学さんと対談させて頂きました。全3回の対談は非常に色濃いものになりましたが、下記対談の冒頭にもあるように、目先の値動きから森羅万象を語ろうとする向きについて田内さんも疑義を感じておられるように思いました。最初の方で田内さんが仰っている「『市場の予想屋』を育てるのではなく、現状の問題を認識して、どのように未来を変えていくかを考えることが重要」という一節はまさにその通りで、直ぐには役に立たなくても確実に問題を抱えている論点というのは金融市場に沢山あります。米雇用統計やFRBの「次の一手」で動く値幅は非常に大きく耳目を引くのは理解できますが、私は日本国として直面している国際収支構造の変容の方が遥かに大事な問題と思いますし、この点を叩き台とした神田前財務官の勉強会は素晴らしい議論が沢山あったと思っています:
日々のメンバーシップでも述べていることでありますが、今日や明日の値動きを知りたい方は「サクッと分かります」というコンテンツに張り付いていれば良い話であす(それが悪いわけではなく、目的と手段で言えばそうだ、という話です)。そうではなく、もっと「時代のトレンド」を考えたい方は相応に統計を読んだり、活字を呼んだりしなければならないと思います。「お手軽なモノにはその程度の価値しかない」というのはどの世界でも普遍の真理だとは感じます。
タイトルの「1ドル180円になっても・・・」は、対談第1回目のヘッドラインから拝借したものですが、新NISA継続にあたって「国際分散投資が動き出したのだから制度に水を差すようなことを言うな」という(主に学者先生方にありがちな)論調へのアンチテーゼでもあります。
新NISAというシステム自体、私も非常に優れたものであり、投資意欲を喚起するという意味では立派な政策だとは思います。同時に、これが円安の一因となり、その円安がある程度日本経済に悪さをしているという説がある中で、これを全く見ようとせず「国際分散投資の結果」と切り捨てるのは私は安易だとも思います。普通の人はそれでいいと思いますが、学者や為政者の立場においてはそれでは不十分に感じます。
極端な話、2024年になってオルカン一点張りで投資を始めた層が国際分散投資のメリットを理解してそのような投資をしているのでしょうか。そういった方ももちろんいらっしゃるでしょう。しかし、そうではない方も沢山いると思います。オルカンは今年の金融業界の流行語と言っても差し支えないものであり、「皆がやっているからやっている」という思いから一気呵成にリアルマネーが動いているという危うさもあると思います(この点はnoteで「家計の円売り」の危うさとして何度も述べてきました)。オルカンが駄目だと言っているのではなく、「個人として最適な行動でも日本経済全体にとって最適な行動とは限らない」という合成の誤謬の観点から、新NISAの在り方を考えたりするのも学者や為政者に期待されている役割の1つだとは思います。そもそもオルカンの6割はドル建て資産なのですが、それが最適配分なのかどうかも議論は合って良いと思います(筆者はこの点不勉強でまだよくわかりませんが)。
メンバーシップも初めて半年が立ちました。沢山の方が集まって、色々なお知恵を出してくれる、Labo(実験場)になりつつあるように感じています。今後、新しいことも色々検討しているところではありますが、地道に「腐らない議論」を続けることをコアとしていく方針は不変です。引き続き何卒宜しくお願いいたします。