見出し画像

需給ギャップとは何か~利上げに向けて~

マイナス需給ギャップの考え方
円金利の上昇とこれに連れた円高が話題です。国内債券市場では長期金利の指標となる新発 10 年物国債利回りが 約15年ぶりとなる1.40%台に到達しています:

円安インフレに呼応するように日銀が利上げを割り当てるとの観測は日増しに強まっていますし、これを応援するかのような高官講演も目立ちます:

日銀の「次の一手」は所詮為替で決まってしまう部分が多くなっていると私自身は感じますが、今回はもう少し達観した議論をしたいと思います。

先月の利上げ以降、下記のように需給ギャップに争点を当てた記事が増えています。気になっている方は多そうなので今回はこれを掘り下げておきたいと思います。実際、今後の政策運営においてはかなりクリティカルな論点になるでしょう:

マイナスギャップは利上げしない理由になるのか?
1月24日に行われた0.25%から0.50%への利上げに対しては、実質賃金が低迷やマイナスの需給ギャップ(供給>需要)を理由に反対する論陣があるようです。

確かに、需給ギャップは政府の掲げるデフレ脱却の4条件(①消費者物価指数、②GDPデフレーター、③単位労働コスト(ULC)、④需給ギャップ)の1つであるため、その不調を理由に引き締め的な政策運営をけん制するのは分からなくはありません(そもそも現状をデフレと呼ぶことについて疑問はありますが・・・)。

今や①・②・③はプラスに転じているため、④が余計にクローズアップされやすい面もあるでしょう。特に、②と③は同時に押し上げられてますから、もはやこれだけでホームメードインフレはかなり確証が増す状況です。もっとも、ULCよりUP(企業収益)、すなわち労働者よりも企業の取り分が大きい状況は不変であり、これはこれでデフレ的な示唆もありますが、この話は長くなるので今回は脇に置きます。今日は図表だけ置いておきます:

ここから先は

2,858字 / 5画像

マスタープラン

¥1,000 / 月
初月無料
このメンバーシップの詳細

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?