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書評「日本経済の死角――収奪的システムを解き明かす」(著:河野龍太郎)
さて、今回は初の書評となります。他の材料と比較した軽重もございますので、書評は毎月展開できるとは限りませんが、本書は早めに読んで頂いた方が良さそうなので、善は急げで取り上げさせて頂こうと思います。なお、先般お知らせの通りですが、書評はTBS「CROSS DIG Economic Labo」と連携しつつ、マスタープランとして公開させて頂く仕切りになります。
2月18日配信のエコラボではゲストとしてBNPパリバ証券の河野龍太郎さんをお招きし、新刊「日本経済の死角 ――収奪的システムを解き明かす」の内容を解説頂きました。文字通り、日本のセルサイドエコノミストの頂点に君臨し続ける河野さんのお話をしっかり、聞くことができて、個人的にもとても勉強になる有意義な回でした:
生産性犯人説の罠
番組では折角なのでご本人の口からご紹介頂きましたが、やはり本書の見どころは第1章「生産性が上がっても賃金が上がらない理由」だと思います。過去、以下のnoteで筆者は「そもそもマクロの統計上、日本が生産性で劣後しているという証拠はない」と述べ、実質賃金上昇を駆動したいのであればあくまで分配の問題に着目すべきと述べました。:
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動画内や書中でも河野さんも殆ど全く同じ話をしていらっしゃいました。日本の企業部門が如何に欧米対比で分配に消極的であったのかを定量的に示しています。例えば、過去四半世紀、米国は50%の生産性上昇に対し25%の実質賃金上昇がありました。ドイツは25%の生産性上昇に対し15%の実質賃金上昇、フランスは20%の生産性上昇に対し30%弱の実質賃金上昇でした。日本は30%の生産性上昇に対し実質賃金上昇はゼロです。
その背景をどう読み解くべきでしょうか?河野さんのご見解は明快です。以下見て参りましょう。
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