教材無償化へ向かうオンライン受験対策ビジネスの方向性
米国の大学入試では、個別の大学が入学試験をすることは少なく、年に6~7回実施される全米標準テストの「SAT(Scholastic Assessment Test)と「ACT(American College Test)」の成績が使われる。そのためハイスクール11年生(高校2年生)の頃から、どちらかの試験を受け始めて、複数回の挑戦でスコアを伸ばしていくことが、実質的な受験勉強になっている。
そもそも、米国で標準テストが普及している背景には、受験生の経済格差によるハンディを是正する目的があった。国土が広い米国では、個々の大学が入試を行うと、遠方の生徒は高額の交通費を負担しなくてはならず、富裕層の子が有利になってしまう。そこで、全国各地で受験可能な標準テストが採用されるようになったのだ。
しかし、SATは1回あたり47.50ドル、ACTは50.50ドルドルの受験料がかかり、各生徒は大学の願書提出までに複数回の受験をするため、全体では年間10億ドルを超す市場になっている。さらに受験対策の教育サービスまでを含めると、その数倍の市場規模があり、経済的に豊かな家庭の子供ほど、エリート大学へ入学率が高いという、教育格差は是正されていない。
一方、受験生の学習スタイルが、リアル(教室と紙テキスト)からオンライへと移行することで、米国の受験対策市場にも変化が訪れている。ネット上には、SAT・ACT対策の授業動画や電子テキストが無料で多数公開されるようになり、有料課金すること難しくなってきているのだ。
米国では、投資家の出資を受けてオンライン上で受験対策を行うスタートアップ企業(EdTech)が2010年頃から多数登場したが、オンライン学習塾のように、授業動画の視聴をサブスクリプション型で課金する方式では、事業を拡大していくことが難しいことに気付き、ビジネスモデルの軌道修正をするようになっている。
そこで、EdTechの新たな事業方針としては、大きく二つの方向性が考えられている。