【感想】青のフラッグ - 不正解かもしれない不安と戦うすべての人へ
友達に「きっと好きだと思うよ」と薦められて、ジャンプ+で青のフラッグを読んだ。1日で一気に読んでしまいました!なるべくネタバレなしで簡単に感想を綴ります。
(1度なら全話無料で見れるので読んでいない方はぜひこの機会に!)
高校を舞台として恋愛、スクールカースト、ジェンダー(同性愛)を切り口として自分のありかたや選択について問う物語。
ジェンダー的なお話でいうと僕自身、小学生の頃は男の子が好きで、中学生時代は腐女子の先輩にBLの英才教育をされたり、同性愛の友達にカミングアウトを受けたりしてきた背景があるので多様な恋愛観があたりまえに身近にあり、それ故に社会とのギャップを感じる場面を多くすごしてきた。
そんな今までのもやもやする気持ち、言いたかったことがたくさん込められている作品だった。この作品がジャンプ+というアプリで広く受け入れられて人気上位を獲得している事実にとても希望を感じる。次世代の価値観はきっとカラフルになるんだろうな。
SNSの当たり障りがない正論マウントの取り合いや叩き合い嫌だなーとか、なんで自分で考えないんだろう?とか、もっとナチュラルにジェンダーのお話が受け容れられたらいいのになーとか、そういう気持ちに応えてくれた。
価値観が多様化して、不確実で、正解がない時代の中できっとみんな「正解探し」をしているんだと思う。いや、正解探しというよりは自分が不正解なんじゃないか?という不安に潰されないために「自分が不正解じゃない理由探し」をしているのかもしれない。
そんな現代の僕たちが抱える不安を丁寧に、繊細に描いて、「自分の選択を信じれば大丈夫。」とぽんっと背中を押してくれるようなやさしいお話。
各話ごとの続きが気になってしまう引きの良さや、それぞれの登場人物の葛藤がしっかり描かれているのもよかった。
主人公の太一はさえないんだけどいいやつで、可愛らしくて、なんか見ててとても癒やされる。太一の繊細さと優しさに何度も泣きそうになった。
あと個人的にケンスケをしっかり描いていたのが良かったなーって思う。ケンスケは本能的で感情的に反応をするいわゆるステレオタイプの象徴みたいなキャラ。世の中の大多数はきっとケンスケなんだよね。だけど本人も悪気があるわけではなくて自分に正直に生きているだけでむしろ素直でいいやつ。ケンスケをしっかり描くことで差別=悪と一概にスポイルするのも違うよね。ってメッセージになっている。
大事なのは何が善で何が悪って決めることじゃなくて、理解し合うこととか、自分の思いをしっかりとぶつけ合う大切さであること、いや大切とか重要とかそういう道徳的なお話じゃなくて、何よりしっかりと向き合って伝えあって選択することによってこそ得られる喜びや幸せがこの作品の中にはしっかりある。そこが良いんだよね。
綺麗事では人は動かない。これはだめなんだってメッセージじゃ人は変わらない。「自分もこんな風になりたい」って気持ちにきっと人は動かされる。
最後の終わり方もめちゃくちゃよかった。賛否両論がある終わり方だけどこの終わり方だからこそ読者は自分のもっている先入観とかこうなるべきという自分の固定観念に改めて気づかされる。
ヨーキーとかモブキャラたちを含めていい味を出しているのも良かったな。モブが魅力的な作品に外れはない!
文句なしの名作でした!映画化とかアニメ化をしてもっともっと社会に広がっていってほしいなあ。そんな願いをこめたくなる作品でした。