連載⑨ 『Fiona AppleのSpotifyでの意外な奮闘?』
前回はMMMさんが、Pitchforkのレビューと絡めてFiona Appleのアルバムを紹介してくれました。記事を通して彼女がどのようなキャリアを積み、どのような点が評価されているのかがよく分かりました!またMMMさんの個人的な考察も興味深かったです。
今回の記事で「しりとり」するテーマは再びFiona Appleです。前回の記事では音楽的な側面に触れられていましたが、今回私はデータ的な側面で興味深い点を見つけたので、それを紹介していこうと思います。
Fiona Appleの今回のアルバムで驚いた点、といえば私もやはりPitchforkの10点満点なのですが、もう一つ驚いたことがありました。それはSpotifyにアルバム収録曲がリリース日(4/17)に6つランクインしたことです。(ランキングは200位まで)
アルバム曲の大量エントリーは、シングルとは違い追加でプロモーションされる訳ではないので、次第に脱落し圏外に素早く落ちてしまいますが、アルバムという単位で再生された=そのアーティスト自体への注目度は高い、という意味では意義深いデータだと私は考えています。
昨今のストリーミングではアルバム単位で曲が再生されること自体は珍しいことではなく、今年Spotifyデイリーランキングに同時に5曲以上を送り込んだアルバムは41枚にもわたります。アルバムのリリース日にピークを迎える曲も多く、実はストリーミングではアルバムはある種「花形の形態」と見ることもできます。USでデイリー再生の最多記録(Drakeの“Nonstop”)もアルバムのリリース日に記録されています。
その中でFiona Appleが驚きだった点は複数に及びます。まずはこれまでトップ200入りの経歴が無く、ヒットの予兆が見られなかった点です。
例えば同じオルタナティブ系統のアーティストで、今年アルバム単位で人気を得たTame Impalaには、ヒットの予兆がありました。特に追加プロモーションが無いながらも昨年半ばから"The Less I Know the Better"がランキング入りし始めたのです。TikTok含む水面下での注目度向上が作用し、リリース当初よりも高いランキングに入ったのです。このようにシングルが注目された結果、新譜への注目度も非常に高くなったということです。
ただFiona Appleはトップ200入り歴が無く、このような予兆は見られなかったのです。
そして女性アーティストがこのようにアルバム単位で人気を得るのもやや珍しいです。5曲以上がランク入りした41枚のうち女性のアルバムは7枚でした。(Selena Gomez, Halsey, Jhené Aiko, Dua Lipa, Fiona Apple, Kehlani, Lady Gaga) ←このようなアーティストの並びにFiona Appleが入るとこの記録の珍しさが伺えます。
ただこの男女比はリリースのペースも関係するのと思います。(例えばYoungBoy Never Broke Againはこの期間に2つアルバムをリリースした)
他にも非メインストリームのアーティストという点、そして久々のリリースだったという点、比較的リスナー層が若いとされるSpotifyで奮闘したことなど、この成績を「意外」と感じる点は非常に多岐にわたります。
☆その他USのSpotifyで意外な奮闘を見せたアルバム
・The Strokes = 7/9曲がランク入り (4/10)※Fiona Appleと同様に、これまでのランク入り歴無し
・Run the Jewels = 全曲登場 (6/4)
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