【映画噺】フェイブルマンズ The Fablemans 3月3日公開
2023年3月3日から公開の映画、「フェイブルマンズ」の完成披露試写会へ行ってきました。見終わった時に拍手が起こり、「夜通し語れるわ!」と興奮気味に感想を語り合う方もいらしたほど。第80回ゴールデングローブ賞では主要5部門にノミネート、作品賞と監督賞を受賞しました。スティーブン・スピルバーグ監督渾身の自伝的作品、是非とも!とおすすめしたい1本です。
まずは予告編をどうぞ。
STORY
ゴールデングローブ賞の会見でのスピーチについて。
※公開前日となりましたので、感想以降公開しました!
GG賞の会見で、「監督を目指す若きフィルムメーカーに伝えたいことは?」と記者に聞かれたスピルバーグ監督、「アイデアが浮かんだら、それを全部言葉で説明しようとしなくても、今はスマホに便利なアプリがあって、すぐそれを録画したりもできるよね。そのことを考えたら興奮して寝食も忘れちゃうくらい夢中になるような、そんな物語やアイデアを仲間に直接でもカメラに向かってでも言わずにはいられないような、そんな衝動をちゃんと行動にうつすんだ。少なくとも私はそのやり方でやってきたし、今の若い人にだって共感してもらえるんじゃないかな。」と話しています。(無責任意訳なので、ニュアンス違ったらご指摘くださいませ。最後ちょっと付け加えた部分はあえて訳していません。)
スピルバーグ監督が「比喩ではなく記憶」とまでいうこの作品、2005年に「ミュンヘン」を撮影中にトニー・クシュナーがぶつけた質問がはじまりなんだそう。
「いつ映画監督になろうと決めたのですか?」
この問いに「秘密を教えよう。」と語り始めた監督でしたが、この時の話がフェイブルマンズの核となったと振り返っています。
その後トニー・クシュナーとは「リンカーン」も制作、「ウエスト・サイド・ストーリー」の完成後にいよいよ「フェイブルマンズを撮りたい。」と思ったそう。
それにはパンデミックも大きく影響がありました。皆が将来に不安を覚える中、「絶対にやり遂げたいことは何か。」を考え抜いたからだと言います。
感想
両親が離婚に至る決断を下す中で、思春期のサミー少年は大きく傷ついたり、信じてきたものが揺らいだりするんですが、会見でも監督ご自身が話しているように「ゆるし」もこの作品において欠かせないテーマ。自分が他者に対してどうゆるす気持ちになれたのか、また、両親もお互いにどう許し合い、前に進むことができたのかなど、そんな視点も意識するといいかなと思いました。
ただ、サミー少年=スピルバーグ青年、本当に許しているのかな?って思ったところもありました。身の回りのことをどこかまるでドラマのように客観的に見ているような、そんなところもあって。彼なりの折り合いの付け方だったのかもしれません。自分ごとにしてしまうとどうしても頭で心で全てを理解したくなる。でも、人の心ってわがままで予想不可能なもの。真意はどうであれ、言葉にして許しを伝えることで、相手が安堵し、それからの関係性に影響を及ぼすこともありますよね。
人生は編集したり、カットしたり、思い通りには到底いかないけど、でも、自分の作品であれば自由にできる。そうやってできた作品が人の心を動かし記憶に刻まれ、感動を与え、人生すら変えるのかもしれない。そこにもう随分若い時から気づいていたとは、根っからの監督気質なのかもしれません。
インスタにも先に書きましたが、5分ごとにクライマックスがあるんか!というくらいにいい言葉、響く言葉がたくさん出てきてきます。Judd Hirsch演じるUncle Borisのセリフは特にザクザクと刺さりましたね。作品を見ていると、主人公のサミー少年に、人生の先輩方が「あなたの進もうとする道は茨の道だ。」というようなことを言いながらもけして可能性をつむのではなくて、覚悟を持って進むんだぞと背中を押すんですよね。ボリス叔父さんだけじゃなくて、サミー少年に関わるいろんな人がそうやって目線を合わせて関わってくれる。その様子がなんともあたたかく感じられて、ところどころ涙してしまいました。
是非劇場でどうぞ。おすすめです。
公式サイト
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作品情報・クレジット
『フェイブルマンズ』
2023年3月3日(金)全国公開
© Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.
配給:東宝東和
監督・脚本:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:トニー・クシュナー
音楽:ジョン・ウィリアムズ
衣装:マーク・ブリッジス
美術:リック・カーター
編集:マイケル・カーン、サラ・ブロシャー
撮影:ヤヌス・カミンスキー
原題:The Fabelmans 配給:東宝東和 上映時間:151分
#映画フェイブルマンズ