鬼火:マイクル・コナリー:人間は弱いのです
「鬼火」(88,89/2021年)
ボッシュとバラードの名コンビに、例のリンカーン弁護士まで参戦。超豪華キャストでお送りするポリス・サスペンス。今回はリーガルはちょい弱め。
約30年前の未解決ドラッグ系殺人事件。
まさに今夜、路上で発生したホームレス焼死事件。
巷で話題の裁判所判事暗殺事件。
この3ラインが同時進行していく、予想通り、サプライズ、何でもありです。もちろん、最後は1点に収束していくことは当然理解していますが、そんなこと忘れて、各事件の急展開にグイグイ引っ張られていきます。そして、気が付けば全てが同じ方向を差しているというエクスタシー。コナリー、今回も楽しい読書をありがとう。
3つの事件それぞれに警察官の理性では割り切れない、情緒的な問題が絡みつきます。縄張り争い、プライド、汚職、女性蔑視、マイノリティ差別…正義の味方である警察官も所詮は人間です。この負の側面も今まで同様にしっかり描かれています。結論、聖人はいません。でも人は聖人の登場をいつも待っています。人は愚かな生き物、間違いない。
今回、興味深かったのは裁判所判事暗殺事件の成り行きかと。逮捕された被告の無罪(正確には有罪ではないことを)証明したリンカーン弁護士。それを受けて、警察は再捜査をしませんでした。なぜならば、最初に逮捕したことが間違っていることを認めたくないから。裁判では無罪、でも警察的には「有罪」なので、真犯人は彼、つまり再捜査は無意味ということ。この考え方、分かる、すごくよく分かる。自分でも、この思考パターンで動いていること、多々あるかもしれない。ああ、なんて人間は弱い生き物なのでしょうか。
それにしても、バラード、優秀過ぎませんか!こんなスーパー警察官、見たこと無い。流石にここまでくるとヤバいです。次回作では、ドドーンと凹みそうな予感、しませんか?
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