風神の手:道尾秀介:キタ、道尾クオリティ
「風神の手」(17/2021年)
最初はスローペースで始まるのですが、いつの間にか完全に物語に飲み込まれています、完全に道尾ペース。まさに道尾クオリティ炸裂です。
女子高校生の甘く切ない恋を描いた『心中花』、想像以上に残酷な結末が道尾クオリティ。
小学生の大冒険がスリリングに展開する『口笛鳥』、でっかち君のキャラ設定の意外性が間違いなく道尾クオリティ。
死を覚悟した女社長が過去の過ちを懺悔する『無常風』、この振り上げた拳の落としどころが非常に微妙な雰囲気が道尾クオリティ。
そしてラスト、三作品に関わる人たちが一堂に集う不思議な場面を淡々と綴った『待宵月』、大団円で〆ない余韻がまさに道尾クオリティ。
とある町での4つの物語で構成されています。それらの物語は、人間の意志とか思いとかを超越した「風神の手」によって翻弄される人たちの物語なんだけど、それが決して不幸ではない。最高の幸福を享受できたわけじゃないけど、それはその瞬間の哀しみ、痛みであって、時が過ぎて、振り返った時に、再度、その不幸をどう思うのか。
実は途轍もなく深い、これが道尾クオリティ。
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