見出し画像

ブロードキャスト:湊かなえ:湊の「悪意」は

「ブロードキャスト」(30/2021年)

ちょっと驚きました。これは書いてもネタバレにならないと思うので書いてしまいますが、ストレートな青春小説です!いつもの湊じゃないので、逆に覚悟して読んでください(笑)

中学時代は長距離走選手だった主人公が、高校進学時、交通事故により陸上部への入部を諦め、ふとしたきっかけから放送部で活動することになった、というお話。

運動部と文化部、それぞれのアルアル系エピソードの楽しいです。自分は中学高校と(自称)運動部系文化部の「オリエンテーリング部」というレアな組織に所属していたので、それぞれの醍醐味を堪能せずに学生生活を終えてしまったので、本作品、眩しかった!

本作品で放送部と言う謎につつまれた集団が白日にさらされました。放送じゃなくて「番組制作部」なんですね。本質は、コンテンツを作る部活だったとは、演劇部に近いとは知りませんでした。

あと、運動部と文化部のカタルシスの違いの描き方は白眉。ここでの経験が人生を左右するといっても過言では無いかもしれません。成功のパターンや失敗の乗り越え方、更には人間関係の処理方法を実地で学ぶためには、部活動って重要ですね。

あと、本作品が最も「反湊」的なのは、悪いオトナが存在しないことかと思います。でもこれ、多分、意図的にやっていると思いますが、ボトルネックだと思われた大人が、実は裏の裏まで考えた結果の行動だったり、ちゃんと自分の弱さを自覚して謝罪したり。そこ、はっきり言って、ファンタジーです。現実ではありえない。

それを敢えて書いている湊かなえ、只者ではありません。逆の逆で、湊の「悪意」がココに存在するのかもしれません。一歩間違えれば、不幸が待っているし、その不幸を自らコントロールすることはほぼ不可能であるというリアルの過酷さ…ちょっと深読みしすぎかな。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?