ボーイミーツガールの極端なもの:山崎ナオコーラ:慎重な軽薄さ
「ボーイミーツガールの極端なもの」(4/2021年)
初ナオコーラ、楽しめました。この作品しか読んでいないのですが、実は人間がよく発露してしまう慎重な軽薄さをさりげなく切り出しているのが心地よかったです。
本作品、様々な人間関係を描いた連作集です。各話のタイトルがイカしてます。最初は、老女(というのはちょっと失礼ですが)、その姪、その姪の義理の娘、三世代の女性のそれぞれのお話からスタートです。そのタイトルが「処女のおばあさん」「野球選手の妻になりたい」「誰にでもかんむりがある」です。ちょっとだけフックがある適度な言葉にワクワクしてしまいます。一話づつ、三人それぞれにドラマが展開していくのですが、その背景に三人の生活がチラチラ、少しだけ見えてくる、そのバランスが実に今っぽくて腑に落ちました。
その後も素敵なタイトルの話が続きます。それぞれがノンビリとリンクしています。中でも引きこもりの兄の話、タイトルが秀逸です。「恋人は松田聖子」。この作品が2015年に書かれていて、登場人物も高校生、そこに「松田聖子」というパワーワードが刺さります。
人は時に軽い方向に流れていきます。選択の時、やっぱ重い方は選びたくないですから。でも、その選択は決して適当に、楽をしたいから、手抜きでしているのではなく、その時、その人なりの慎重な思いがあるんですよ。
ナオコーラ、今後、注意です。また好きな作家が増えてしまいました。