いけない:道尾秀介:紙の本ならではの素晴らしい読書体験、しかしPR文に異議あり。
「いけない」(109/2022年)
最後の写真にたどり着く。そこから二周目がスタート、頁をめくって前に戻り読み返す、そして更に気になる部分が出て来て、前に後ろに、真相の糸口を探して文字を、文章を見直す。ちょっと前かな、いやもっと前かも。少し前の読書の記憶をたどりながら、紙という物質を触りながら、読書を楽しむ。
4つの連作集。各章、最後に一枚の写真(画像)があって、それで締め。以下がPR文章だけど、僕はちょっと納得がいかない。
ここ最近の「ドンデン返し」至上主義にノルために、このような文章になっているのはマーケティング的には理解出来ますが、この作品の本質、この新しい道尾ワールドを説明しているとは言い難いです。
このスタイルは一種の発明だと思います。文章で書けない、書いてしまうと面白くなくなってしまう部分を画像で説明する。画像ならではの余韻というか、読者に委ねるために生じるタイムラグ。
はっきりいって「ひっくり返りません」から。これをひっくり返ると言うのは無理があると思います。最後のピースがハマるというか、衝撃的な気付きの提示というか。
たしかにミステリ初心者の方には「ひっくり返る」でも妥当かもしれません。ただ僕のようにミステリ他読者にとっては、これをひっくり返ると言ってしまっては、その他の素晴らしいドンデン返し作品に対して失礼な感じがしてしまうのです。
難しいところですが、僕ならば、いっそのこと「ドンデン返しの先を行く新たな衝撃。ミステリの次世代スタイル、爆誕」とかにしてしまうかも。
で、道尾クオリティ炸裂の素晴らしい作品です。このダークな感じ、流石です。
いや、読後すぐはダークな感じなのですが、時間が経つにつれ、ダークなんかじゃなく漆黒の闇であることが判明していく…凄いです、この仕掛けは。画像に気を取られていると足元すくわれます、最高。