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おもいでエマノン:梶尾真治:いま、そこにいるエマノン
「おもいでエマノン」(75/2021年)
想像以上にハードなSFでした。主人公、エマノンは30億年ほどの生命の歩んできた歴史を全て記憶している人です。正確には「人」じゃないですね、生き物とでも呼ぶべきでしょうか。今は人型をしていますが、3億年後は人型じゃないでしょうから。
でも、生き物でもないかもしれないです。エマノンが子どもを産むと、母であるエマノンから出産前の記憶は全て失われて、新しく生まれ子供に全て引き継がれる、そして子供が新エマノンとなる。エマノンは遺伝子なのでしょうか。命が生まれた時からずっと変わらないDNAなのか、未だ発見されていない命の根源に関わる何かなのか。
そう考えると、この話、荒唐無稽ではないんですよね。まだ今の人類の文明、科学、力では解明できていないだけで、今、まさに、エマノンはこの地球の、もしかしたら宇宙のどこかにいるんです、きっと。
そのエマノンの切ないラブストーリー、盛り上がります。相手の人生はエマノンにとっては一瞬の短さ。でも、時間の長短で価値が決まるわけではない。短編8作品の中で一番「エモい」のは、やっぱり「おもいでエマノン」かな。最初の衝撃を受け止めて、余韻でその後、妄想しながら色々と楽しめます。読書の醍醐味、存分に。
そもそもビックバンの正体が不明な時点で、全て不明なわけですから。全て後付けであり、もし本当にビックバンは神様が仕掛けたことが判明したら、今までの科学的解釈は全てまやかしになる可能性がある以上、このエマノンだって存在しても良いのです。
いや、楽しい読書でした。